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第四話 二番目と三番目の仲間

「おい、マタロウ、次の花丸はこの辺じゃないのか」

「うむ、そうだな、サルウ」

 サルウというのはお兄さんの名前である。勘のいい読者なら、どうせ桃太郎の真似だから猿=サルウなんだろ、とでも思っていることだろう。その通りだ。ちなみに残り二名の仲間の名は、雉=キジコ、犬=イヌタの予定である。


「おっ、あのお姉さん、そうなんじゃないか」

 サルウが指差すベンチには、ヘッドフォンで何かを聴いている妙齢のお姉さんが座っている。

 マタロウはお姉さんのヘッドフォンを乱暴に外すと、さっそく声を掛けた。

「キジコよ。お初に御目に掛かる。私は勇者マタロウ。大杉大魔王討伐の旅の途中だ。君も私の仲間となり、共に大魔王を倒そうではないか」

 どうしてマタロウが初対面のキジコの名前を知っていたのかと言うと、八行前に書かれているからである。深いことは考えずにお話を楽しんでいただきたい。

「はい?」

 お姉さんはヘッドフォンをマタロウから奪い返すと、胡散臭そうにマタロウを眺めた。

「何よ、確かにそんな話は聞いていたけど、あんた、前々話と比べて思いっ切りキャラが変わってるじゃないのよ」

「魔太郎からマタロウになることで、私のキャラも変わったのだ」

「自分の呼び方も僕から私になっているし」

「新国王イノッセの呼び方とかぶるから、読者が混乱しないように、敢えて僕と言っていたのだ。本来、私は私と言うのだ」

「あっそう。まっ、細かいことはいいわ。別に仲間になるのはいいけれど、その前にあんたの力量を見せてもらおうかしら」

 お姉さんはヘッドフォンを頭に装着すると、新品のMPプレイヤーを取り出した。その液晶画面に表示された曲名を見てマタロウの顔色が変わった。

「そ、それはたった数秒で聴くものを失神させるという、伝説のロックバンドKEN&HOROROケンもホロロの大ヒット曲『雉も鳴かずば撃たれまい』……」

「ふっ、この曲を知っているとは、さすが勇者ね、いくわよ!」

 お姉さんはMPプレイヤーをマタロウに向けると、音量マックスにしてプレイボタンを押した。

 危うし、マタロウ! 

 と思ったその時、お姉さんが悲鳴を上げた。

「いやあああー。誰よ、ヘッドフォンをあたしの耳に当てたのは。鼓膜が破れるところだったじゃない……って、あたしか」

 お姉さんはヘッドフォンを頭から外すと、マタロウに向き直った。

「やるわね、勇者。指一本触れずに、あたしにこんな辱めを与えるとは。でもそれだけではまだ仲間にはなれないわ。その腰に下げた勇者の銃、その威力を見るまではね」

「よろしい、勇者の銃の実力、見せてやろう」

 マタロウは腰の水鉄砲を抜くと、西部劇のガンマンみたいにカッコよく構え、胴体右側のボタンをポチッと押した。

「うおおおお」

 マタロウは感じた。体の奥底から凶悪な力が湧きあがってくる。知らぬ間にマタロウは呪文を唱えていた。

「空間に漂えし魔族花粉よ。わが元に集え、そして我に力を貸せ。魔族花粉よ、集まれ、集まれー!」

 マタロウの声に引き寄せられるように国の全土に撒き散らされた魔族花粉が水鉄砲に集まり出した。そして吸い寄せられるようにその中へと取り込まれていく。

「ちょ、ちょっと待ってよ。あんた、勇者でしょ。それって魔族の技なんじゃないの。ヤ、ヤバイわ」

 お姉さんは懐から三層鼻マスクを取り出すと、あんまり高くない鼻に装着した。その間にも水鉄砲には花粉が集まり続けている。

「ピーピー、花粉収集量マックス。ピーピー、花粉収集量マックス」

 水鉄砲から警告音が聞こえてきた。と同時にマタロウが叫んだ。

花 粉 飛 散ポーレン・タイフーン! バビューン!」

 マタロウの声と共に、水鉄砲は集めた花粉を辺り一面に撒き散らした。

「いやあー、目があー、かゆい、かゆい、喉があー、ごほ、ごほ」

 お姉さんはそれほど重度の花粉症ではなかったのだが、これだけ大量の花粉を浴びてはひとたまりもない。涙とヨダレを垂らしながら、地面の上をのた打ち回った。


「は、私は、いったい何を……」

 我に返ったマタロウは手にした水鉄砲を見詰めた。

「素晴らしい。これぞまさしく勇者の銃」

「違うわ、どう考えても魔族の銃よ、それ。ぐすん、ぐすん。って言うか、あんた、やっぱりマタロウじゃなくて魔太郎でしょ」

「何を言う、私は勇者マタロウだ」

 マタロウはランチボックスからきび団子を取り出すと、地面を転げて苦しんでいるお姉さんに差し出した。

「私の仲間になればこのきび団子をあげるぞ。どうだ、仲間にならぬか」

「だ、誰がそんなヘンテコ銃を使う奴なんかと、ぐすん、ごほごほ」

「そうか、それは残念だ。しかし、これを聞けば気が変わるんじゃないかな」

 マタロウはきび団子と一緒にランチボックスに入っていた商品説明書を読み上げた。

「毎度、お買い上げありがとうございます。このきび団子は花粉症によって引き起こされる諸症状に有効な成分ばかりを集めて、こねて、丸めて、蒸した滋養強壮抜群のきび団子です。主成分は甜茶、ヨーグルト、ハーブ、青汁、サプリメント、トマトの皮、ポリフェノール、木酢液、シソ、ワサビ、スギ花粉です。これを食べればたちまち花粉症の苦しみから解放されること間違いなしです」

「すみません、仲間になります。きび団子ひとつ下さい。ぐすん」

 こうしてお姉さんはマタロウの仲間になった。


 二人になった仲間と共にマタロウは次の花丸場所を目指す。そんなマタロウにキジコが言う。

「ねえ、あんた。はっきり言ってさっきのあたしのシーン、思いっ切りコピー&ペーストしてたでしょ」

「ふっ、やはりばれていたか」

「ばれていたかじゃないわよ。同じ文章を読まされる読者の身にもなってみなさい。たまったもんじゃないわ。しかも仲間はまだもう一人残っている。二度あることは三度ある、まさか次のシーンも同じ手を使おうって気じゃないでしょうね」

「うむ、そのつもりだ」

「冗談じゃないわよ。そんな読者を軽んじるような真似して、どうなっても知らないからね」

「うむ、それもそうだな。では今後は、同じシーンは『以下略』として済ますことにしよう」


 やがて三人は花丸場所にやって来た。

「おっ、あの男の子、そうなんじゃないか」

 サルウが指差す方を見ると、小学生くらいの男の子がベンチに座って、うまかあ棒を食べている。マタロウはさっそく声を以下略。

 ……

「……お兄ちゃんの実力を見せてもらおうか」

 男の子は食べ終わったうまかあ棒の空き袋を投げ捨てると、懐から新品のうまかあ棒を取り出した。それを見てマタロウの顔色が変わった。

「そ、それはたった一口食べただけであまりの激辛のために失神してしまうという伝説のうまかあ棒、暴君馬場ネロハイパーうまかあ特大棒!」

「へへへ、このうまかあ棒を知っているとは、さすが勇者さんだね、いくよ!」

 男の子はうまかあ棒を両手で握り締めると、マタロウに向かって猛烈な勢いで突進してきた。

 危うし、マタロウ! 

 と思ったその時、男の子はうまかあ棒の空き袋に頭をぶつけてしまった。

「いった~い、もう、誰。こんな所にうまかあ棒の空き袋を捨てたのは……あ、ボクか」

 いや、まあ、犬も歩けば棒に当たるって諺から思いついたネタなんだろうけど、うまかあ棒の空き袋に頭をぶつけるって、どう考えても無理があるでしょ。もうちょっと考えて欲しかったなあ、うん。


 男の子は頭をさすりながら起き上がった。

「やるね、勇者さん。指一本触れずに以下略。

 ……

「……これを食べればたちまち花粉症の苦しみから解放されること間違いなしです」

「すみません、仲間になります。きび団子ひとつ下さい。ぐすん」

 こうして男の子はマタロウの仲間になった。


 遂に三人の仲間を集めたマタロウ。

 大杉大魔王との決戦の日は近い。

 進め、マタロウ!


 つづく!

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