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第三話 最初の仲間

 勇者マタロウは地図を見ながら旅を続け、ようやく最初の花丸地点に到達した。

 いかにもそれっぽいお兄さんが、ベンチに座ってバナナを食べている。さっそくマタロウは声を掛けた。

「お初に御目に掛かる。私は勇者マタロウ。大杉大魔王討伐の旅の途中だ。君も私の仲間となり、共に大魔王を倒そうではないか」

「はあ~」

 お兄さんはバナナを食べてしまうと、胡散臭そうにマタロウを眺めた。

「いや、確かにそんな話は聞いていたけど、お前、前話と比べて思いっ切りキャラが変わってるじゃないか」

「魔太郎からマタロウになることで、私のキャラも変わったのだ」

「自分の呼び方も僕から私になっているし」

「新国王イノッセの呼び方とかぶるから、読者が混乱しないように、敢えて僕と言っていたのだ。本来、私は私と言うのだ」

 初対面のはずなのに、前話のマタロウのキャラや、使用していた人称代名詞を知っているなんて、そりゃおかしいだろうと思う方も多い事だろう。その辺は、このお兄さん、実はこっそり盗聴していたんだとか、ワゴン従僕に教えてもらったんだとか、適当に脳内補完していただきたい。


「まあ、細かいことはいいや。別に仲間になるのはいいが、その前にお前の力量を見せてもらおうか」

 お兄さんは食べていたバナナの皮を投げ捨てると、懐から新品のバナナを取り出した。マタロウの顔色が変わった。

「そ、それはオサル印の最高級台湾バナナ。まさかそんな武器を持っているとは……」

「ふっ、この武器を知っているとは、さすが勇者だな、いくぜ!」

 お兄さんはバナナを両手で握り締めると、マタロウに向かって猛烈な勢いで突進してきた。

 危うし、マタロウ! 

 と思ったその時、お兄さんは豪快に転んでしまった。

「いてて、くそ、誰だよ、こんな所にバナナの皮を捨てたのは……あ、俺か」

 お兄さんはお尻をさすりながら起き上がった。

「やるな、勇者。指一本触れずに俺を倒すとは。しかしそれだけではまだ仲間にはなれねえ。その腰に下げた勇者の銃、その威力を見るまではな」

「よろしい、勇者の銃の実力、見せてやろう」

 マタロウは腰の水鉄砲を抜くと、西部劇のガンマンみたいにカッコよく構えた。

「えい! ババーン! ぴゅ~……」

 ババーン! はマタロウが言った擬音語で、ぴゅ~……は水鉄砲から水が飛び出す擬音語である。面倒なのでどちらもカギ括弧の中に書かせていただいた。


 水鉄砲から弱々しく飛び出す水を見て、お兄さんは吹き出してしまった。

「ぷははは、なんだよそれ。本当に水鉄砲じゃないか。どこが勇者の銃なんだよ。笑わせるなよ。ぶははは」

「おかしいな」

 マタロウは引き金から指を離し、水鉄砲をまじまじと眺めた。すると、胴体右側部分に「必殺技ボタンだよ。ポチッと押してね」と書かれた紙が貼られているのに気がついた。その紙の下にボタンがある。

「ポチッとな」

 何も考えずにマタロウはそのボタンを押した。水鉄砲が光った。

「うおおおお」

 マタロウは感じた。体の奥底から凶悪な力が湧きあがってくる。知らぬ間にマタロウは呪文を唱えていた。

「空間に漂えし魔族花粉よ。わが元に集え、そして我に力を貸せ。魔族花粉よ、集まれ、集まれー!」

 マタロウの声に引き寄せられるように国の全土に撒き散らされた魔族花粉が水鉄砲に集まり出した。そして吸い寄せられるようにその中へと取り込まれていく。

「お、おいおい、待てよ。お前は勇者だろ。それって魔族の技なんじゃないのか。ヤ、ヤバイぜ」

 お兄さんは懐から花粉除けゴーグルを取り出すと、蒼白になっている顔に装着した。その間にも水鉄砲には花粉が集まり続けている。

「ピーピー、花粉収集量マックス。ピーピー、花粉収集量マックス」

 水鉄砲から警告音が聞こえてきた。機が熟したと見たマタロウは叫んだ。

花 粉 飛 散ポーレン・タイフーン! バビューン!」

 マタロウの声と共に、水鉄砲は集めた花粉を辺り一面に撒き散らした。

「ぐわああー。鼻があー、くしゃん、くしゃん、喉があー、ごほ、ごほ」

 お兄さんはそれほど重度の花粉症ではなかったのだが、これだけ大量の花粉を浴びてはひとたまりもない。鼻水とヨダレを垂らしながら、地面の上をのた打ち回った。


「は、私は、いったい何を……」

 我に返ったマタロウは手にした水鉄砲を見詰めた。

「素晴らしい。これぞまさしく勇者の銃」

「いや、どう考えても魔族の銃だろ、それ。くしゃん、くしゃん。って言うか、お前、やっぱりマタロウじゃなくて魔太郎だろ」

「何を言う、私は勇者マタロウだ」

 マタロウはランチボックスからきび団子を取り出すと、地面を転げて苦しんでいるお兄さんに差し出した。

「私の仲間になればこのきび団子をあげるぞ。どうだ、仲間にならぬか」

「だ、誰がそんなヘンテコ銃を使う奴なんかと、へっくしょん、ごほごほ」

「そうか、それは残念だ。しかし、これを聞けば気が変わるんじゃないかな」

 マタロウはきび団子と一緒にランチボックスに入っていた商品説明書を読み上げた。

「毎度、お買い上げありがとうございます。このきび団子は花粉症によって引き起こされる諸症状に有効な成分ばかりを集めて、こねて、丸めて、蒸した滋養強壮抜群のきび団子です。主成分は甜茶、ヨーグルト、ハーブ、青汁、サプリメント、トマトの皮、ポリフェノール、木酢液、シソ、ワサビ、スギ花粉です。これを食べればたちまち花粉症の苦しみから解放されること間違いなしです」

「すみません、仲間になります。きび団子ひとつ下さい。へっくしょん」

 こうしてお兄さんはマタロウの仲間になった。


 大杉大魔王討伐の旅は始まったばかりだ。頑張れマタロウ!


 つづく!

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