もう一人の主人公(廃ゲーマー)登場!!
蒼河遥です。
第8話を読んでいただき、ありがとうございます。
アルフレッドはヒルダとの別れを決意し、新たな旅へと踏み出します。
そして今回、物語は大きく視点を変えます。
もう一人の重要人物――村上悠馬の物語が、ここから始まります。
「師匠、今まで黙っててゴメンな。
オレ、他の武器屋で自分の苗字を名乗ったら、どこも雇ってくれなかったんだ。
だから・・・」
店に戻ったオレと師匠は、テーブルを挟んで向かい合い、しばらく2人で話をする。
いつもは大きくドンと構え、多少のことでは動揺する素振りも見せない師匠が、
流石にオレの出自を知って、少々驚いているようだった。
「オレ、この街から出て行くよ」
そう・・・
ヴァン・ハールト家の誰かが、オレの命を狙ってきた。
黒服の男達は、その話しぶりから、明らかにオレを消すつもりだったんだ。
そうなるとオレが、いつまでもこの街に留まるのは、明らかにリスクが高い。
って言うか、この店にも迷惑が掛かってしまう可能性があるんだ。
「分かったよ、アル。
ただ、今晩だけは、ウチに泊まっていきな。
もう外は暗い。出発は明日にするんだ」
「ありがとう、師匠」
ということで、オレはこの夜、師匠の家に留まり、
明日の朝一番に街を出ることに決めた。
そして、その晩の夕飯はいつもより豪勢だった。
師匠がオレを送り出すために・・・
と、腕によりをかけて作ってくれたんだ。
オレは、そんな師匠の愛情こもった料理を、ありがたく頂くことにした。
そして翌朝・・・
「アル、またいつか、この街に戻ってきたら、是非ウチに顔を出してくれ」
「あぁ勿論だぜ、師匠!1ヶ月半、本当に世話になったな」
この人のお陰で、オレは鍛冶の技術を学び、良い武器を作れるまでになった。
しかも別れ際、給料の残りということで、ズシリと重い革袋まで渡してくれる。
本当にこの人にはお世話になったんだよなぁ。
なので、そのお礼といっては何だけど、
オレは、今まで自分で作った武器の中で、
最高傑作といえる剣を大量に複製することにした。
更には師匠が作った、師匠お気に入りの一本も大量に複製して渡していったんだ。
これを売れば、このお店にそれなりの収入が入ってくるはず。
そう思いながら・・・
「じゃあ師匠、またな!」
「あぁ、絶対にまた遊びに来いよ!」
店を出たオレは、見送ってくれる師匠に手を振りながら、裏通りを歩き始めていく。
そして、十字路を曲がる直前、オレは師匠の方に向き直り、一礼していったんだ。
【視点変更】 村上 悠馬(むらかみ ゆうま 20歳 男性)
「よし!今度は両脚のアーティファクト装備をゲットしたぞっ!」
"おぉ、アルフレッド、すげぇな~!"
"流石、最高の廃ゲーマー!"
"そのアーティファクト、オレにも見せてくれよ"
俺の名前は村上悠馬!
今日、20歳の誕生日を迎えた大学生だ。
オレ、大学進学と共に、田舎から東京に出て来て、はや2年・・・
古くて安いアパートを借りての気楽な一人暮らしをしている。
そしてこの日は、俺の20歳の誕生日。
それを記念して、同じパーティーのみんなが、
超最難関のダンジョンの最下層にあると言われている、
アーティファクトの装備一式の獲得を手伝ってくれていた。
そう、オレは今、人気オンラインゲーム "ゼーラント・クロニクル"に、どハマり中!
廃ゲーマーと言われるほど熱中していて、同じ鯖内でも有名な存在だったんだ。
この夏休み期間中は、殆どずっと、このゲーム内に居ると言って良い。
そんな俺のハンドルネームは"アルフレッド"
昔プレイしたゲームに出て来た、お気に入りの登場人物の名前から拝借したものだった。
それにしても、このオンラインゲーム "ゼーラント・クロニクル"は、
マジで素晴らしい出来の作品だった。
美しく広大な世界観・・・
そして、非常に繊細なバランスの上に成り立っているゲームシステム。
俺はこのシステムの仕組みを、長い時間かけて解析し、
誰よりも詳しい廃プレイヤーとして名を馳せるまでになっていた。
ただ、そんな俺でも、今日の超最難関ダンジョンの最下層攻略はかなり厳しい。
最初は何度も戦闘不能になり、再チャレンジを繰り返していった。
そんな甲斐もあって、開始から2時間後に、
無事、1つ面の両手装備のアーティファクトを入手出来たんだ。
その後も徐々に、アーティファクト装備を入手していき、
あと残りは、胴装備1つだけとなっていた。
たった半日で、ここまでアーティファクト装備を集められたのは、
このゲーム、苦楽を共にしてきた、パーティーメンバーのお陰でもあったんだ。
今度は、俺が彼らの誕生日に、
彼らの希望する武器や防具などの取得を手伝っていきたい・・・
心の底からそう思っていたんだ。
"俺ちょっと、近くのコンビニへ昼飯買いに行ってくるわ"
"おお、いてら~!"
"いてら~"
"はよ、戻って来いよ~"
俺はチャットにそう書き残して、コンビニへ買い出しに向かうことにした。
実は今日、朝から何も食ってなかったんだよな。
流石にそろそろ何か食わねぇ~と、腹減って死んじゃいそうだったんだ。
安アパートの玄関を飛び出し、階段を降りていく。
そして外に出て、ふと空を見上げると・・・
"ゴロゴロゴロ・・・"
「ヤバイ、思ったより天気が悪いな・・・」
今の季節は夏・・・
そんな季節の午後は、天候の移り変わりも早い。
暗い空、黒い雲、そして雷の音・・・
早くしないと、荒れて来そうな雰囲気だった。
俺は傘を持って、小走りで数百メートル先にあるコンビニへ向かっていった。
ピカッ!
"ドドォォーーーンッ!"
「ヤベッ、こええーーーっ!」
もうちょっとでコンビニという所で、近くに落雷が・・・
物凄い轟音と振動・・・
俺の心臓は止まりそうな位バクバクだった。
早くコンビニの中に入らないと・・・
雨もポツポツと振り出し始め、直ぐにザーザー降りになるのは目に見えている。
「くそっ、もうちょっと早い時間に買い物しとけばよかった」
ゲームに夢中になり、天候なんか全く気にしてなかったオレ。
こんなタイミングで外に出てしまったことを、今になって後悔していたんだ。
「よし、もうすぐだ!」
目的地のコンビニが見えて来て、オレは更に早足になる。
もう既に、雨はザーザー降り。
俺は傘を差しながら、狭い視界の中、足元のアスファルトだけを見つめながら先を急いだ。
ピカッ!
"ズドドドドーーーーーンッ!"
その衝撃は突然だった!
俺がコンビニの駐車場に差し掛かった瞬間・・・
「ぐわぁぁーーーーーーっ!」
激しい稲光と、周囲に轟く猛烈な落雷音!
そして、駐車場のアスファルトの上へ倒れてしまう・・・
一瞬の衝撃で意識を失った俺。
「だっ、大丈夫かぁっ!」
「て、店員さん、急いで救急車をっ!若い男性が雷に撃たれたぁっ!」
「わっ、分かりましたっ!」
そう・・・
俺は運悪く、雷の直撃を食らってしまったらしい。
こんな不運ってあるんだろうか・・・
日本で、1年間に落雷被害を受ける人って10~20人程度。
宝くじの1等よりも、当たる確率は低いんじゃないか?
知らんけど・・・
そしてその後、オレは、コンビニの店員によって呼ばれた救急車に乗せられて、
病院に向かったそうだ。
第9話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回から、もう一人の主人公・村上悠馬の物語が始まりました。
ゲームを極限までやり込んだ「廃ゲーマー」の悠馬。
彼は一体、どんな運命を辿ることになるのか……。
そして最後に待っていた、まさかの落雷。
次回、悠馬の運命が大きく動き始めます。
引き続きお楽しみください!




