ホウイチ
ブーッ、ブーッ。
スマホがポケットの中で震える。取り出して、要件を見る。……はぁ、また一大事か。どうやら地球に衛星が突っ込んで来るらしい。これはもう何度目だ? 研究費稼ぎの左官をやっている場合じゃないのか? かと言って、研究費を稼がないとこちらも生活がままならない。
「どれ、ひとまず計算してみますか!」
俺は車から出ると、大きなカンバスに向かう。カンバスと言うか、黒板というか……。目の前にあるのはでかい家の壁。今はこの家の壁を塗り直している途中だ。
さっそくペンキで数式を書き始める。ええと、ここはアーチャードの摩耗法則だな。すらすらと式を書き上げ、計算する。摩擦係数は2。高度300kmから落下するならーーおよそ800分。ポイント・ネモに落ちるらしいが、大気圏では燃え尽きないな、これ。
俺は上着を腰に結ぶと、ひとまず車の中に戻った。
「くっそ、こんなおもしれー計算があるかよ。ポイント・ネモに絶対落下させないと、地上にクレーターができるぞ」
「どーするんすか? 教授」
一緒に左官の作業をしていた助教が運転席に座る。俺はダッシュボードに足を乗せて腕を頭の上で組む。
「ここから11時の方向だ」
「それって、自衛隊基地ですよね?」
「ああ、いよいよ使わないとまずいからな」
「マジすか」
助教がぐっとハンドルを握る。
「レールガンの出番だ。仕留めてやるよ、俺がな」




