〜 5 宝石職人 〜
宝石職人のベルベリーがブラウン邸を訪れたのは、正午の鐘の鳴る直前だった。
「ブラウン様、ご無沙汰しております。今日はラドニス様のところにペンダントの納品に参りました」
小柄でがっしりとした体躯を持つベルベリーが、丁寧に挨拶の言葉を述べた。いつになく、機嫌が良いようだ。私は右手を差し出した。
「久しぶり、よく参られた。後でフィムの方にも立ち寄ってくれ。話があるそうだ」
「ブラウン夫人も、お変わりございませんか」
「相変わらずだよ。今日は、サファイアがどうとか言っていたな」
「分かりました。後でお伺いします」
ベルベリーと話していると、ラドニスが応接の間にやってきた。
「丁度良かった、ラドニス。宝石職人のベルベリーさんだ」
「こんにちは」
「ご注文の品になります」
ベルベリーは木箱を取り出して、開けて見せた。
「素晴らしいですね。限りなく美しい」
ラドニスが驚嘆の声をあげる。
「自信作でございます」ベルベリーが誇らし気に述べた。
「ブラウン先生、どうですか?」
ラドニスが早速身につけて私に見せてくれた。昼の日ざしがダイヤに乱反射する。なかなかの逸品だった。素養のあるものならば、そこに光の精霊の存在を感じ取っただろう。美しさと力強さを秘めたペンダントだった。
「よく似合うよ、ラドニス」
「先生、有難う」
「では、私はこれにて。お代はご実家の方へ取りに伺います」
ベルベリーは丁寧にそう告げると、会釈をして部屋を出た。




