4 スカーレット9歳
殿下と出会ってからの年月が立ち、9歳になった。私は今日、久しぶりに殿下に会いに行くところだった。
「す、スカーレットじゃないか!」
突然、廊下でファリアルレイン殿下にすれ違ったのだ。なにやら、慌てて何処かへ向かうご様子。
(殿下が何処かへ行くなら、私は帰ったほうがいいかな。)
そう思った途端、急に殿下が私の背後へと回った。そして、私の後ろでしゃがり込む。
「スカーレット!いいな?そこを動くな!なんとしても僕を隠せ!」
「か、かしこまり…ました…?」
(なにかに怯えて隠れてるの?)
その途端、廊下の突き当りの先からなにやら眼鏡をかけた女性がこちらに向かって歩いてきていた。なにかをお探しの様子。
「カミラ先生?」
「あぁ!スカーレット様!」
その女性は私に気づくなりすぐさま駆け寄ってくる。後ろに隠れている殿下からは小声で「おい!あいつを近づけさせるな!」と言っているようだ。
(あぁ、なるほど。殿下はカミラ先生から逃げていらっしゃったのね。)
カミラ・グレンラガン。殿下の家庭教師。女の怖いと恐れられる先生であるが、知識が豊富で私はよく質問をさせてもらっている。
私が勉強をする理由は、将来の殿下の妻としてその分の教養をつけなければならないのもそうなのだが、一番は彼のような馬鹿で常識はずれのような人にはなりたくないからである。
「失礼ですがスカーレット様。ファリアルレイン殿下をお見かけしていませんか?」
「どうかされたのです?」
「実は殿下に勉強をやるように言うと、逃げ出してしまい…。まったく、スカーレット様は勉学を常日頃から磨いていらっしゃるというものを。殿下は毎度毎度と逃げ出すは居眠りをするばかりで。」
(なんだか、後ろからものすごい視線がする。…気のせいかな?)
「でしたら中庭をお探ししてはどうでしょうか?そこではよく、殿下は居眠りをしていらっしゃいますよ。」
「ありがとうございます、スカーレット様。そこを探してみます。」
(カミラ先生も大変ね。…さてと。)
私はカミラ先生がこの場から離れたことを確認して、殿下に尋ねた。
「あの、殿下。お戻りください。カミラ先生が困ってしまいますよ。」
「嫌だ。僕は戻らない。」
「なぜです?」
「僕はあいつの授業を受けずとて、テストで点数はとれる。」
私はその言葉を聞き、頭を抱えた。
「でしたら、来月のテスト、殿下なら余裕で100点をとれるのでは?」
「あぁ!僕なら余裕だとも!」
「では殿下。私と来月のカミラ先生のテストを勝負いたしましょう。」
「っは!せいぜいお前は僕に勝つことを努力するんだな!無理だとは思うが!」
殿下は機嫌を取り戻し、どこかへ行ってしまった。離れていく殿下の背中を見ながら、私はふと思う。
(あなたみたいな馬鹿に私が負けると思って?)




