2 スカーレット8歳
彼とはじめてお会いしたのは8歳のとあるパーティーのことだった。結婚については、親同士の話し合いで決まったとか。この貴族界ではこのケースは珍しくもなんともない。
むしろ、私は王太子殿下の婚約者という立場に選ばれ、光栄な立場であった。
「いいか、スカーレット。ファリアルレイン殿下にくれぐれも恥じぬような素行はするのではないぞ。」
「わかりました。」
父上の言葉をとくと胸に刻む。
パーティー会場へ到着すると、すぐに殿下がどの方なのかが一目で分かった。美しい容姿にオーラをただ寄らせている少年。
(おそらく、この方だよね?)
深呼吸をし、父上から離れ、私は婚約者の元へ向かった。
「お初にお目にかかります、ファリアルレイン殿下。私はスカーレット・ガーフテリア・アルルインと申します。」
「父から聞いているぞ!僕の婚約者、だそうだな?まずは光栄に思うがよい!」
彼は容姿からは到底思えないほどのナルシストだった。一見、穏やかそうな性格に見えるも、口から放たれる言葉に少し残念な気がする。
「殿下のご婚約者となって、私はすごく光栄でございますわ。」
「ははっ!貴様、よく分かっているではないか!特別に僕が今飲んでいて気に入った飲み物をお前にもわけてやろうではないか。」
彼はそう言いながら、ワイングラスを私に渡してきた。驚きのあまり思わずあたふたしてしまう。
「殿下いけません!これは、ワインと言って、我が国では15歳以上の者しか飲んではならないのです!」
「そんなもの、僕が出席するパーティーなんかに置く必要がないだろう?だいいち、僕はこの飲み物を飲んで死んでなどいない。」
「あのですね、殿下。15歳未満のものが飲んだら死ぬというものではなくてですね。その…。」
「なら問題がないであろう!まったく、無駄なことに僕を突き合わせるな!時間の無駄だ。」
「あぁ!殿下!」
(馬鹿なの?この人は。)
私の忠告を無視して目の前でワインを飲む殿下を見て、内心で心底そう思ってしまった。はじめて人をこんなにも馬鹿と思った日だったと思う。自分でもびっくりするぐらいだった。




