第16話 ちょっと待てーーーーい!!!
朝起きてストレージにあるアンパン魚をコンロに入れる。
アンパン魚は中身があんこで皮がパン。そのままだがあんこが内臓と思うと初めのうちは少し抵抗があったがすぐ慣れた。
この世界は抵抗するだけ時間の無駄だ。
だからアンパンだと思うことにした。
今日は旅立ちの日、この世界に来てついに自分の意志で動くことを決めた日だ。
「さぁ行くぞ。無限の海原へ向け。わが覇道を止めれるものなど誰もいないのだぁ!!!!」
静かな世界に波の音が響く。
こんな事言ってもオールで漕いでいくから大変なんだけどね。
イカダの後ろに腰を下ろしオールを作成する。
よく考えたら、これイカダの上に家まで作って......オールなんかで進むのかな?
俺のその予感はこの世界においては何の意味も持たない。
この世界はめちゃくちゃだ。
だからこんなオールでも当たり前のように......
進むに決まっている。
意外にもオールは水につけると勝手に、自分の意思があるかのように動き出した。
どっかのアニメの魔法のホウキのようにスイスイと水を掻く。
一応手を放してみて勝手に動くか試してみたが、手を離した途端ただのオールになり動きを止めた。
まぁそうだよね。
しかしこんなスピードでどこに行くかも決まってないのに大丈夫なのかな?
そう考えながらもできることは漕ぐことのみ。
俺は何も考えることなくオールの動きに俺が合わせるように無心で船を進めた。
太陽が真上を差し、昼が来たのだと世界が伝える。
あれから何時間ほど漕いだのかわからないが景色は全く変わっておらず、実は進んでいないんじゃないかと思うほど優雅にイカダの旅は続く。
「面白くない。」
普通エリアが変われば景色も大いに変わってしかるべき。
それがなんだ。
移動し始めて数時間。
ゲームだったらもうクレームを入れてるところだ。
はぁ、もういい。愚痴を言っても始まらない。
飯にでもするか。
あれだけ嬉しい時間だったはずのごはんタイム。
今でもうれしいがこの先の事を考えると憂鬱にもなる。
俺はストレージから今日は何を食べようかと魚の名前をスクロールしていく。
しゃもじ魚
サケ
アジ
アンパン魚
サメの肉
サメ吉
、
、
、
サメの肉かぁ~。
ちょっと気になるけどうまいのかなぁ?
ふかひれとかはよく聞くけど肉を食べるのってあんまり聞かないしな。
うーん。どうしようかなぁ~。
贅沢な悩みに頭を使っていて気づかなかったけど......
「あれ? なんか今変なのが......」
しゃもじ魚
サケ
アジ
アンパン魚
サメの肉
サメ吉
、
、
、
「サメ吉......忘れてた。こんなの手に入れてたわ。」
なぞのアイテム。
普通の好奇心ある若者ならばそれが何か気になって仕方ないだろう。
だが俺はこの世界に絶望していた。
どうせ大したことはないと。
一応何があるかわからないからストレージのサメ吉の文字を見つめる。
すぐに説明文が現れ俺はそれを恐る恐る読む。
サメ吉
サメ界期待のニューホープ。
口が悪いが根はいい奴だぞ。
.......
......はぁ?
なんだこれ? 食べ物じゃないのか?
なんか生きてるっぽい説明文だけど......
えぇ......使いたくない。
ロクな事にならなそう。
このまま置いておくのが吉だろうな。
......と分かっていても使ってしまうのがゲーマーの悪い所なんだよな。
さっきは好奇心ないなんて言ってごめんなさい。
忘れてただけですごい気になってます。
よし。謝罪会見も終わったし使ってみるか。
またサメが出てきたら怖いから端の方で使おう。
まぁ出てきてもまた倒せばいいからいいんだけど。
俺はストレージからサメ吉を選択。
”サメ吉を使用しますか?”
YES NO
生唾をゴクリと飲んでYESを選択する。
すると......
”サメ吉が仲間になりました”
”バトルフィールドへのタイマーがスタートします”
「仲間? バトルフィールド? ちょっと待て! なんだこれ?」
ワタワタと慌ててしまう。
視界の右上に0:59:42とタイマーが減っていっている。
「1時間後? なんだこれ? 整理させろよ。」
ドタバタしてる俺だったが、新な時、突然海から――
ザバァーーン!!!!!
と勢い良く水しぶきを上げ何か巨大な何かが飛び出してきた。
俺はそれを見て転げながらイカダの真ん中へ逃走していく。
その姿は俺のよく知っている、青黒いシャープなフォルム。
鋭利なナイフのような歯、筋肉質な背びれ。
こいつはまさか――
「サメだ!!!!!!」
俺は慌ててストレージから水中銃を取り出しサメに向けて構える。
引き金を引こうとしたその時――
「ごっきげんよーーーーうってちょ待て待て待て!!!! あっこらバカヤロウ!!!!」
えっ?
周囲を見回すが誰もいない。
「こらこらこらぁー!!!! 俺っちだよしゃべってるのはよ!!! いきなり撃とうとするやつがあるかってんだ!!!」
うそ、まさか.....
「サメがしゃべってる。」
水族館のショーの時にイルカがよくやる立ち泳ぎのような格好で、そのサメは海面から上半身? を海面から出し胸ヒレを人間の手のように器用に使いながら身振り手振りでしゃべっていた。
「お前が召喚してお前が殺してたら世話ねぇーな。なんだよまったく、しかたねぇな。んじゃもう一回初めからいくからよく見とけよ。いつもはこんなサービスしねぇーんだからよ。いくぞ......。」
サメはちょこちょこと器用に立ち泳ぎをしながら俺に背中を向ける。
クルンと振り返りさっきの謎のあいさつの続きをしたいのだろう。
にわかには信じられない光景に、俺はまた水中銃をサメに向けて構えた。
「よいしょよいしょ......そんじゃ改めて......ごっきげんよーーーうってコラァーーー!!!! 何銃向けてんだこの野郎!!!!!」
うん。世も末だ。
それだけは確信した。




