第17話 サメサメワールド
サメ吉と名乗るそのサメは立ち泳ぎで手びれの部分まで海面に出しながら俺に話しかけてくる。
ずっと一匹で何か話しているが有益な話は何一つない。
「ひっさしぶりに召喚されたと思ったらおめぇーみてぇーなおこちゃまだとはな。カッカッカ。世も末だぜ。」
こっちのセリフだ。
サメ吉は以前まで襲ってきていたサメとはずいぶん違った。
顔はあの無機質な雰囲気ではなく、もっとアニメで出てくるような目はくりくりっとしていて口はわざとらしいぐらい歯がギザギザしていて、あとさっきまでかぶってなかったテンガロンハットをかぶっていた。
「で? 俺っちを召喚したんだからバトルフィールドがあるんだろ? 敵はどんな奴だ? 戦力は?」
勝手に話を進めていくやつだ。
「あのさ。俺あんまりこの現状が理解できてないんだけどさ。サメ吉さんだっけ?」
「サメ吉でいいぜ。」
どっちでもいいわ。
「んじゃサメ吉......キミ、サメだよね?」
「カッカッカ。俺が可愛いチワワにでも見えるってのかい? そいつはいい目をしてるね旦那。」
いちいちめんどくせぇ。
「あんまり詳しい事を俺っちに聞いたってなんにもわからないぜ。なんせサメだからよ。カッカッカ。」
なんで言葉を話せるのか聞きたかっただけなんだけど......
「わかったよ。それじゃあ、バトルフェールドってなんだ? この右端に出てるタイマーと何か関係あんの?」
「タイマー? そういや今までのご主人もいつ呼ばれるかとかわかってる様子だったな。まぁそんな事どうだっていいんだよ。要は大砲ドカァーンっとやって相手の船を破壊すればお前の勝ちだ。」
こいつに聞いたのが間違いだ。
サメに聞くなんてどうかしてるのか俺。
「タイマーがゼロになったら誰かと戦わないといけないって事か?」
「カッカッカ。お気楽なこった。そんな生易しいもんじゃないと思うぜ。それによ、誰かとは限らないぜ。何か......って事もあるっって頭には入れときな。」
誰かと戦う? 殺しあうのか? 船を壊わすと勝ちってことは壊されると負けって事だ。殺しあうって事じゃないらしい。でも壊された後はどうなる? 死ぬのか?
説明とかないのかよ。せっかくこの世界にも慣れ始めたってのに。
時間は残り15分を切っていた。
「ちくしょう。こんなイカダでどうやって戦えっていうんだよ。ふざけやがって。」
「こりゃひどいイカダだね。まぁ獲物が小さいと相手も大砲当てづらいから悪くないと思うぜ。」
「はぁ? 相手って大砲持ってる奴とかいるのか?」
「さぁな。それはあんたの方が知ってるはずだぜ。相手の戦力はなにかしらで確認できるはずだろ?」
そうなのか? てかそもそもバトルフィールドなんて厨二病な言葉さっき初めて聞いたんだぞ。わかるわけないだろ。
俺はぶつくさ考えながらタイマーが減っていくところを見つめていた。
すると――
ブゥン
突然新しいウインドウが入れの目の前に出現した。
そんな事だろうと思ったよ。
説明書がとことんないんだと再認識してしまった。
「で、どうすりゃ生き残れる?」
「あぁ? なんだ、結構冷静じゃねぇか。まずは合格ってところか?」
「サメ吉、あんたは味方か?」
「それは旦那次第だ。ひとまず俺の使い方の一部を伝えておくぜ。」
「使い方?」
「そう、俺っちの特技だ。ちょっと見てな。」
そう言うとサメ吉はおもむろにイカダの端の部分にかぶりつく。
「おいおい、そんなのいやって程見て来たよ。他なんかないのか?」
イカダを割る事しかできないあのサメと同じような性能なら心底役に立たない。
これは外れを引いてしまったと思い落胆仕掛ける、が。
サメ吉はバシャバシャと水しぶきを上げイカダに噛みつきながら泳いでいる。
その影響でイカダも動き始め徐々にスピードを上げていく。
「どうでぃ? 俺っちすげぇだろ? 感動したかい?」
オールではとても出せないスピード、頬を切る風、景色が流れて見える。
「おぉすげぇ!! なんだよ、お前すごいじゃないか!」
スピードだけではない。右へ左へ細かい方向転換もできる。
「どうだい!? 俺っちの力は!」
俺はとんでもないエンジンを手に入れたのかもしれない。
誰かの船を破壊する。
でも破壊された方がどうなるのかわからない。
でもこちらもイカダを壊されるわけにはいかない。
ならば答えが出るまで逃げ続けるしかないだろう。
そのためのエンジンになれる仲間を手に入れた。
誰がこんな世界のルールに従って人殺しなんてやるかよバカヤロウ。
俺は世界に悪態をつきながらタイマーが0になるのを待った。
そしてついにその時、瞬きした瞬間に外は夜になっっていた。
海の雰囲気が違う。匂いなのか、色なのか?
俺のいた海じゃない。
「始まるぜ。旦那。」
サメ吉の声とともに俺の目の前にウインドが現れた。
”ようこそ。バトルフィールドへ”
「呼んだのはそっちじゃないかよ。」
まだ死ねない。
生き残る。
俺は月明かりが反射する海の真ん中で来るべき相手を探すのだった。




