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コロの冒険  作者: parupuntist


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第三章 流れの先

 砂浜の端が見えなくなってからも、犬の身体は下流へ流され続けた。頭はすでに水面へ出ている。口が開き、鼻の穴から水が落ちる。前脚と後ろ脚を激しく動かし、水面をかく。さっきまでいた岸は、もう上流の向こうにある。細かな石と土の塊が水へ落ち、そのたびに小さな波が広がった。犬は下流へ流されながら、近くの岸へ身体を向けた。


 流れが急に強くなった。犬の身体が横へ押され、頭が水の中へ沈む。前脚が水をかく。後ろ脚も動く。すぐに犬の頭が水面へ出た。口が大きく開き、鼻から水が落ちる。犬は岸へ身体を向けたまま、前脚を動かし続けた。岸ではまだ土が崩れている。細かな石と土の塊が水へ落ち、そのたびに小さな波が広がった。


 前脚が水をかく。


 身体が少しずつ岸へ寄る。砂浜が近づいてくる。鼻先が水面から離れるほど浅くなった。犬が前脚を下へ伸ばす。足先が砂に触れた。もう一度、前脚を伸ばす。届かない。身体が流れに押され、砂浜の端を横切っていく。犬の頭が岸の上を追うように動く。前脚を速く動かす。砂が指の間を抜けていく。あと少しというところで、岸の形が変わった。


 砂浜が終わる。


 そこから先は、丸い石が重なった斜面になっていた。犬の前脚が、一つ目の石に触れる。


 爪が石の表面を引っかいた。


 水の中で後ろ脚が動く。身体が少し持ち上がる。犬が石の上へ胸を出す。前脚の肘が石へ乗る。そのまま身体を引き上げようとする。爪が滑った。犬の胸が石から落ちる。水しぶきが上がる。頭だけが水面へ出る。犬が首を振った。濡れた耳が左右に振られ、水滴が飛ぶ。犬がもう一度、岸へ向いた。先ほどの石へ近づく。前脚をかける。


 今度は一度で身体を持ち上げることができなかった。前脚の爪が石の表面を擦る。少し上へ動く。後ろ脚が空をかく。犬の腹が水についたまま、身体だけが斜めになる。さらに前脚を伸ばす。その上の石へ届く。爪が石と石の間へ入った。犬の肩が水面から出る。身体が持ち上がる。しかし、後ろ脚が届かない。


 犬の身体がその姿勢のまま止まった。


 石の表面から水が流れている。前脚の爪がゆっくりと滑る。犬の胸が少しずつ下がっていく。後ろ脚が水の中で激しく動く。それでも身体は上がらない。前脚がさらに滑る。


 犬が水へ落ちる。


 今度は岸から離れた。


 身体が下流へ流される。


 犬が横を向く。前脚を動かす。水面に白い泡が小さく浮かぶ。犬は頭を上げたまま進む。少し先に大きな石がある。犬がそちらへ向きを変える。前脚が石へ触れた。石の脇へ身体を寄せる。石の表面に前脚をかける。身体が一瞬止まった。後ろ脚を石へ近づける。片方の後ろ脚が石に触れる。もう片方を上げる。犬の身体が少しだけ持ち上がる。


 しかし、水は石の脇を流れ続けている。腹が石の角へ当たる。


 前脚が滑る。


 身体が横へ回る。


 犬はまた水の中へ落ちた。


 頭が沈む。


 すぐに水面へ出る。


 口が大きく開いている。犬が何度か息をする。舌が少し見える。鼻先が上下する。犬の身体が水面へ浮いたまま、しばらく動きが小さくなる。やがて前脚が再び動き始める。岸のほうへ進む。今度は、先ほどより低い石が並んでいる場所へ身体を寄せる。前脚を伸ばす。爪が石に触れる。身体を引く。一つ下の石へ前脚を移す。後ろ脚を動かす。


 身体が少し上へ移る。犬の胸が石に乗る。さらに上へ進もうとする。そのとき、前脚が別の石へ触れた。


 石が動く。


 小さな石がいくつも転がって水へ落ちる。犬の身体がぐらつく。


 前脚が滑る。


 再び水へ落ちる。


 流れが犬の身体を押す。


 犬は岸へ顔を向けたまま、下流へ運ばれていく。砂はもう見えない。岸は高くなり、石の斜面が続いている。


 犬が岸の上を見る。


 草が生えている。その向こうには空がある。


 犬の耳が動く。


 どこかで鳥の声がする。


 犬が顔を上げる。


 鳥は見えない。


 犬はまた水面へ視線を戻す。口を閉じる。前脚が動く。身体を岸へ寄せる。石が近づく。犬の前脚が、少し平らな石へ触れた。爪が引っかかる。身体を引く。胸が水面より高くなる。もう一度、身体を引く。今度は後ろ脚も石へ触れた。犬の腹が石の上へ乗る。


 犬は身体をさらに引こうとした。後ろ脚が水の中で動く。前脚の爪が石の表面を擦る。肩が少し持ち上がる。


 そのとき、流れが身体の横を強く押した。


 前脚が滑る。


 身体が石からずれる。腹が水面へ戻る。犬はすぐに前脚を動かした。頭を岸へ向けたまま、水をかく。


 石の斜面が横へ流れていく。犬の鼻先が岸を追う。もう少し先に、低い石が続いている。犬はそこへ身体を寄せた。前脚を伸ばす。爪が石に触れる。


 身体が少しだけ持ち上がる。後ろ脚が水をかく。もう一方の前脚を上の石へ伸ばす。爪が届く。身体を引く。


 しかし、流れが足元をさらった。前脚が石の上を滑る。犬の胸が水面へ戻る。後ろ脚が大きく動く。犬はそのまま下流へ運ばれていった。


 岸の石が少しずつ遠ざかる。犬は頭を上げ、前脚を動かし続けた。口が開く。鼻から水が落ちる。


 河は大きく曲がっていた。曲がり角の向こうから、低い音が聞こえてくる。犬の耳が動く。音は水の流れに重なりながら、少しずつ大きくなった。


 犬は流れの先へ顔を向けた。


 白いものが、遠くに見えた。


 水の音が次第に大きくなる。


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