6話 奇襲!神獣が町に襲ってきた
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八雲ヶ原惨殺事件の一件から二ヶ月が過ぎた。
ガルド帝国は高天原に押され、高天原では志願兵が増え続けている。一方、高天原はベルン共和国へ協力を求めているものの、ベルン側はいまだ態度を決めていない。
高天原では民衆の不満は達して日々兵力は増していき、ガルド帝国と均衡を保つところまであと一歩というところであった。
そして、そのどちらにも居場所がないのがアタシたちだった。
八雲ヶ原虐殺の汚名を着せられ、今も賞金首のままなのだから。
「では、ザルドを私たちの拠点として使わせてもらいたい。もちろんタダとは言わない。何かあれば、私たちもザルドに力を貸す」
「ガッハッハ! 上等だ! だったら今日からザルドとお前らは仲間だ。寝床も食い物も好きに使え!」
こうしてネネネさんが無事バルガスさんと正式に契約を交わした。
ザルドとの不可侵協定を結び、町を活動拠点として使わせてもらえることになった。
さらに食料や物資の補給支援、周辺地域の情報提供、必要に応じた相互防衛にも協力してもらえる。
その代わり、アタシたちもザルドが他国や賊に襲われた場合には防衛に加わり、町の運営にも可能な範囲で力を貸す。
(なんか急に、賞金首から一勢力みたいになってきたわね……死ぬ前に見たボコボコ生まれた、なんとか党のような諸派みたい……)
「アヤ、新しいスキルができたみたい」
「凄いじゃないミル、どんなの覚えたの?」
「ええっと――【詐欺る】だ!」
ミルはニコニコしながらアタシへ得意気に見上げてそう言った。
「……えっ?」
「これは、アヤを見てきて――」
「絶対にそんなこと言わないで!怒られるわ!」
「えー」
その後アタシはミルの覚えた【詐欺る】の名前を【欺く】へ変更した。
どうやら【欺く】は、相手の認識をズラすスキルらしい。目の前にアタシがいても、敵には少し違う場所にいるように見えるため、しばらく攻撃が当たりにくくなるという……
(ダメだ……なぜミルは犯罪スレスレのスキルばかり覚えるのよ……)
ミルのスキル
【縮小】
【逃がす】
【盗む】
【欺く】(※アタシが改名。元・【詐欺る】)
そして正式な名前ではないが、バルガスさんが言っていた【ネネネ自由団】とザルドでは呼ばれる事が多くなった。
その中にはギソンも入っている。
「俺は十二の頃から親方の護衛をしてたんだ」
「十二歳?バルガスさん児童虐待じゃないのよ!」
「児童虐待って……」
あんな大きな斧を振り回すからてっきりウォリアータイプなのかと思ったらネネネさん曰く、ギソンさんは攻撃よりも前線維持に秀でた【ヴァンガード】タイプらしい。
それも、高天原の兵士だったなら上位の【グランドガード】に数えられるほどだという。
(空がやっていたゲームみたいな用語ばかりでよく分からないんだけど……)
要するに――ものすごく硬い壁役。
それだけは分かった。
因みに初戦からそれはネネネさんもチャトランさんも瞬時にわかったらしい。
そんな事が二ヶ月の間にいくつも決まり、わりと平和に暮らしていた。
「この前ルーノがね?急にもよおしたーーとか言っててね?」
「そりゃあビックリするよね。きっと大きそうだもんね」
こんなことをマチさんと話しながら【魔獣園】で談笑していると見張り台から叫び声が聞こえた。
「空からなにかくるぞ!」
「凄いスピードだ」
「うっ、うわー」
【逃がす】
ズガ――ンッ――
その未確認飛行物体は見張り台を大破させアタシたちの前に落ちてきた。
「なに、今の?」
「マチさん離れて」
アタシの横にはミルのスキルで逃がした見張り台にいた二人が転がっている。
物凄い砂埃の中から現れたのは、双角の生えた小さなおばあさんだった。
「おや、殺すつもりで突っ込んだんじゃがね?どうやら外したようだ……スキルか」
「アヤ――」
音に気づいたのか、チャトランさんは叫び、おばあさんに向かっていった。
「こりゃ猫獣人さん、大したことないねえ」
猛スピードで突っ込んでいったチャトランさんをヒョイッと交わし、さらに振り向き飛び込み爪を向けるとスッとそれも交わしたかと思えば、ミゾオチにおばあさんの蹴りが入り、そのまま壊れた見張り台にガシャーンと大きい音を立てて突っ込んでいった。
その瞬間頭上から無数の黒炎がおばあさんに降り注ぐと、おばあさんは黒炎の隙間を縫うように躱した。
ネネネさんは黙って空から見下ろしている。
「ほお、召喚者か、それならこの姿じゃちときついねえ」
(ネネネさんも召喚者……)
小さなおばあさんはそう言うとミルミル若返り、また凄いスピードで飛び上がると持っていた杖で撃し、それをネネネさんは黒龍の杖で防いだ。
「やるじゃないか!召喚者」
若返ったおばあさんは、そう言い笑うと、そのまま二人は降りてきた。
「バルガスのバカじゃこんなことできないって思い見に来てみれば、お前さんたちかい?魔獣を集めて閉じ込めているって奴らは」
「閉じ込めている?見りゃ分かるでしょ?ベヒーモスなんて跨げば出られますわ」
小さなアタシくらいの若さになった鬼は段々とおばあさんに戻ってゆき、魔獣園を見た。
「はあ?」
「おばあさんどこでそんなことを?」
「オスのオルトロスだよ」
『いや……あの……その魔獣?……を集めて、ザルドに閉じ込めて……いや多分絶対……で……』
と、おばあさんは聞いて飛び出したそうだ。
(あんのオルトロス!ハッキリちゃんと説明しないからこんなことになんのよ!)
ことが終わった頃にオルトロスは駆け込んできた。
「アカネさん……話……途中……多分絶対」
◇
アタシたちはオルトロスを交えてアカネと呼ばれる鬼系統の魔獣とザルドにあるお店で話をすることとなった。
どうやらオルトロスがメスのオルトロスを妊娠されて、どうやらザルドに行けば安全に育てられるかもしれないと世間話をしてたら、アカネさんが飛び出したという……
(コイツは魔獣間でもこんなお騒がせ者なのか!)
「アヤ……コイツと契約結ばニャくてよかったニャ……」
「う、うん……」
しかしフジの話もオルトロスの口からしてくれて、弔った女魔獣師であり敵ではないとの紹介も受けた。
「女魔獣師がよく生き残っておるもんじゃい」
アカネさんはお茶を飲みながらそう言うと、真剣な顔になり皆に話始めた。
「もう、戦争に関わる魔獣を増やしたくないだけじゃ、良い子孫を残せるようにはなるだろうが、大抵は人間の盾になったりして死ぬ者がほとんどじゃ」
アカネさんの話では過去に何度か大戦がありその都度、魔獣師たちと大量に契約させられ多くの仲間の魔獣が死んでいったと聞かされた。
「お前さん、魔獣のワシが言うのもなんじゃが、こんな魔獣園作ったり、情が移って弔ったりしているようじゃと、お前さんが死ぬじゃろ」
アタシはフジのことを思い出し、なにも言えずただ俯いていた。
「アヤさんは……多分絶対、僕とも戦争のために契約しなかったし……死んでいった女魔獣師さんのように……多分絶対……」
オルトロスも項垂れ、アタシが涙を堪えていると皆黙ってしまった。その場を変えるようにアカネさんは話題を変えた。
「そういえば、お前さんのタクト、なぜ、それをお前が持っておる」
「ああ、これですか?ゼノムさんって人に卒業の時もらいまして」
「なんじゃと?やつはまだ生きとんのか?」
「ええ、フローラさんという大きな女性と一緒に暮らしています」
「はあ?真の話か?それは?それじゃスエチキンもいるのか?そこに?」
「知っていらっしゃるのですか?フェンリルのスエチキンを」
「ワシは前大戦の時までゼノムと契約していたんじゃ」
「ええ?……でも二人離れて……契約は?」
「アヤ、このアカネって婆さん多分神獣ニャ……」
「神獣?」
「魔獣が行き着く先の一つじゃ。そこまで登れば、魔獣師に生殺与奪を預ける必要もなくなる。契約を続けるかどうかも、こちらで選べるからじゃ」
「それにまた……召喚されるのに女魔獣師で生まれてしまうとはなぁ」
アタシはミルを少し見て頭を撫でた。
「あっ、いえ、そこは気にしないで下さい。それよりも、ミル……フレイヤでも神獣になれるのですか」
「もちろんじゃ、相当な鍛錬は必要じゃが……なぜ聞く?」
「アタシが神獣にしてあげられれば、ダメそうな戦争になった時、先に逃がしてあげれるでしょ?」




