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第9章「疑念」

第9章「疑念」


年月が流れた。

時間はゆっくりと、まるで川のように流れていった――しかし容赦なく。


かつてアンドレイと共に森の小道を歩いていたラナは、

今では自分の顔に刻まれた最初のしわや、髪に混じる銀の筋、そして動きにわずかに宿る疲れを感じるようになっていた。


歩みは少し遅くなり、動作はより慎重になった。

彼女は、人として自然に老いていった。


一方で、アンドレイは何一つ変わらなかった。

その外見は一日たりとも変化せず、目に老いは宿らず、しわも現れず、体つきも変わらない。

カイラであろうと、クリスタであろうと、アレクサンドルであろうと、

すべての姿は若さと力、そして鮮やかさを保っていた。


周囲から見ればそれは「祝福」のように見えた。

だが彼にとっては、それは耐えがたい不安の源となっていた。


彼は家の中、暖炉の前に座り、古い本を丁寧にめくるラナを見つめながら、思考に引き裂かれていた。


(俺は……人間と呼べるのか?

持っているものはすべて――仮面、姿、能力だけだ……

中身は昔のままなのに、時間だけが進み、俺は老いない。

人は老いる。愛も、記憶も、痛みも――それが自然だ。

だが俺は……変わらない)


疑念はやがて不安へと変わっていった。

ラナがふと彼を見つめる時間が、ほんの少し長くなるたびに、

彼の胸は締めつけられた。


彼女は彼を理解していた。

だが――本当に、彼のすべてを理解できるのだろうか。


(老いない俺が……姿を変えられる俺が……

命を救える一方で、その在り方すら歪められる俺が……

悪魔じゃないと、言い切れるのか?

それとも……俺はもう、人間ではないのか?)


その思いは次第に強く、しつこく彼を追い詰めていった。

今まで気にも留めなかった自分の一面が、次々と目につくようになった。


年月が経つごとに、その疑念は積み重なり、

ラナと共にある日々の喜びを、少しずつ削っていった。


愛は人間の感情だと理解していながらも、

永遠の若さと能力を持つ自分が、すでにその枠の外にいるのではないかという思いを捨てきれなかった。


ラナは自然に老いていく。

だが自分は変わらない。

まるで時間という川から弾き出された存在のように。


そして年を重ねるごとに、「自分は何者なのか」という問いは、ますます大きくなっていった。


アンドレイはあらゆる手段を試した。

わずかな希望でも見つけようと、

古代の儀式、強力なアーティファクト、魔道具、薬――

すべてを。


だが、すべては無駄だった。


この世界には、時間の流れを止め、

ラナを彼と同じように老いさせない力は存在しなかった。


「どんな魔法も……どんなアーティファクトも……何もない……」

彼は窓辺に座り、ゆっくりと変わっていく外の景色を見ながら、静かに呟いた。


思考は昼も夜も彼を離れなかった。

ラナを見るたびに、その美しさと自然さを感じると同時に、

二人がすでに異なる時間の中で生きていることを痛感した。


心の奥では、距離が生まれていた。

自分は永遠で、彼女は有限――その現実が。


そして、その日が訪れた。


長い年月を共に過ごし、彼の支えであり、心であり、魂であったラナは――

静かに眠りにつき、二度と目を覚ますことはなかった。


アンドレイはベッドの傍に立ち、

時間に少しずつ奪われながらもなお美しさを残すその顔を見つめていた。


その瞳には絶望が満ちていたが、涙はなかった。

涙では、とても足りなかったからだ。


彼はその場に膝をつき、そっと彼女の手に触れた。

まるで温もりが戻ることを願うかのように。


だが現実は冷酷だった。

彼女を呼び戻すことはできない。

時間を止めることもできない。


空虚が、彼の内側すべてを満たした。

永遠の若さは、もはや祝福ではなく――呪いだった。


姿を変え、魔法を操り、空間すら支配できても、

それは何の意味も持たなかった。


彼の人生を本物にしていたもの――

人間らしさ、温もり、愛――

そのすべてが、失われていた。


「俺は……」

アンドレイは息を詰まらせた。

「すべてを失った……本物だったものが、消えた……

お前と……永遠ですら、共にいられない……」


彼はゆっくりと立ち上がった。

体のすべてが、その動きを拒むかのように重かった。


部屋を見渡す。

どこを見ても、彼女がいた。

笑顔、優しさ、信頼に満ちた眼差し。


だがそれはもう、記憶の中にしか存在しない。

そして記憶は――石のように冷たく、決して命の代わりにはならない。


「戦いも……危険も……ダンジョンも……全部乗り越えてきた……」

彼はかすれた声で呟いた。

「でも……愛する人の死だけは……一番つらい……」


そのとき初めて、彼は理解した。

永遠とは祝福ではない――試練なのだと。


魂の強さを問う試練。

愛した世界がすべて消え去った後でも、歩き続けられるかを問う試練。


星空の下に座りながら、

彼は初めて、喪失の深さを受け入れた。


そして、ゆっくりと理解した。


自分はもう――独りなのだと。


完全に。


愛は消え、

それと共に、自分自身の一部もまた消えてしまったのだと。

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