第3章 思いがけない再会
第3章 思いがけない再会
朝は穏やかだった。
アンドレイとドレイクは暖炉のそばに座っていた。炎は静かにぱちぱちと音を立て、柔らかな光を壁に投げかけ、どこか久しぶりの安らぎを生み出している。
二人はそれぞれ自分の時間を過ごしていた――アンドレイの手には本、ドレイクの手にも同じく本があった。
沈黙は重くない。むしろ……心地よかった。
だが不意に、アンドレイは本を閉じた。
「街へ行く必要がある」
ドレイクは静かに視線を向ける。
「買い出しですか?」
「ああ。備蓄を補充する」
「承知しました」
アンドレイは一瞬考えた。
どの姿で行くか……
暗殺者カイラはすでにこの街に現れたことがある。しかも、以前に悪魔との戦闘にも関わっているが、その時は誰も正体をはっきりとは把握していなかった。
なら問題はないはずだ。
「カイラの姿で行く」
彼は落ち着いた声で言った。
街はいつも通りの喧騒で彼らを迎えた。
市場、店、商人――すべてが活気に満ちている。
アンドレイとドレイクは人混みの中を自然に進みながら、必要なものを買い集めていった。食料、備品、家で使う細々としたもの。
カイラは自信を持って歩いていたが、余計な注目を集めることはない。
誰も気づかない。
すべては順調だった。
買い物を終え、二人は帰路についた。
そのとき――
「カイラ!」
鋭く、予想外の声が響いた。
アンドレイが振り向く間もなく、次の瞬間には強く抱きしめられていた。
彼は一瞬、動きを止める。
「……ラナ?」
目の前にいたのは、あのアサシンの少女だった。
「やっぱり間違いじゃなかった!」
彼女は一歩引いたが、まだ肩を掴んだままだった。
「二か月前、この街にいたのは本当にあなただったんだね!」
アンドレイは思わず微笑んだ。
「久しぶりだな、ラナ。ああ……少しだけ滞在していた」
彼は軽く首を傾げる。
「それで、お前はここで何をしている?」
ラナは軽く笑ったが、その目には一瞬だけ真剣な影がよぎった。
「アサシンギルドを抜けたの」
アンドレイはわずかに驚く。
「そうか……」
「今は冒険者よ」
彼女は続けた。
「あなたと同じ」
一瞬、間が生まれた。
だが気まずさはなかった。
会話は途切れたが、アンドレイの思考はすでに別の方向へ向かっていた。
休息も悪くはない……だが、いずれ退屈になる。
彼はラナを見た。
「仲間は見つけたのか?」
ラナは首を振る。
「いいえ。一人よ……あなたと同じ」
そして少し表情を明るくした。
「でも、何もしてなかったわけじゃない。あなたの助言のおかげで、治癒魔法は第七階位まで上げたの」
アンドレイは軽く眉を上げる。
「もう第七か。悪くない」
ラナは誇らしげに微笑んだ。
「それだけじゃないわ。支援用に闇魔法も学び始めたの」
彼女は一歩近づき、何か大事なことを打ち明けるように言った。
「影を作る魔法があるの、知ってる? それを使えば、昼間でも……光の下でも影跳躍ができるのよ」
その声には純粋な誇りが込められていた。
アンドレイはもちろん知っていた。
だが彼はただ頷いた。
「いいな、ラナ。本当に成長している」
一瞬、彼女は黙り込んだ……その一言は、どんな称賛よりも彼女にとって意味があったようだった。
アンドレイは少し微笑み、ふと口にした。
「うちに来るか?」
ラナは固まる。
「……あなたたちの?」
その時になって初めて、彼女は隣に立つドレイクに気づいた。
じっと彼を見て、それから再びアンドレイを見ると、わずかに頬を染めた。
「もしかして……あなたの夫?」
アンドレイ(カイラ)は一瞬止まり……そして小さく笑った。
「違う」
彼はドレイクを指し示す。
「私の執事だ」
ドレイクは落ち着いて一礼した。
「はじめまして」
ラナは目に見えて緊張を解いたが、わずかな赤みは残っていた。
「そっか……」
アンドレイは街の出口の方へ向き直る。
「行くぞ」
ラナは一瞬立ち止まったが、すぐに頷き、彼の隣に並んで歩き出した。




