第31章 氷の国へ
第31章 氷の国へ
アンドレイはフロストガルドへと近づいていた。冷たい風は次第に弱まっている。
山々は少しずつ開け、北方国家の荒涼とした大地が姿を現し始めていた。
そのとき、彼の意識に馴染みのある声が響いた。
— やっとか……
アンドレイは足を止める。
彼に接続してきたのは、古の氷竜だった。
一気に情報が流れ込んでくる。
報告、観測結果、偵察ルート。
アンドレイは口を挟まず、ただ静かに受け取る。
時折、小さく頷くだけで、それはまるで目の前に相手がいるかのようだった。
やがて通信が薄れていく。
彼はゆっくり息を吐いた。
— 北部の山脈には異常なし……
そう呟く。
状況は明確だった。
西側の山岳地帯は比較的穏やかだ。
標高はおよそ四千メートルほど。
険しい山というよりは、緩やかな丘陵の連なりに近い。
一方、東側は複雑だった。
低い岩山から雲を突くような巨大な峰まで、地形は激しく変化している。
その中に——巨大な峡谷がある。
— そして地下迷宮……
アンドレイは眉をひそめた。
東部にはいくつかの古代ダンジョンが確認されていた。
最北端。
そこにはほとんど何もなかった。
— 何もない……ただ海だけだ。
広大な氷の海。
生命の痕跡はない。
ただ冷たさと風、そして空虚だけが広がっている。
— ありがとう。もう自由にしていい。
彼は静かに通信を切った。
装備を整え直し、背後の山脈を一度だけ振り返る。
そして迷いなく前へ進んだ。
その先には——都市が待っていた。




