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第21章

第21章


「リザ、よくやったな」とアンドレイは微笑みながら言った。


「ありがとうございます、主様」とリザは静かに答えた。


「まさか君が冒険者たちを治療するとは思わなかった」とアンドレイは驚いたように呟いた。


「主様がいつも負傷者を助けようとしているのを見ていました」とリザは少し微笑んだ。


「だから、私も力になりたいと思ったのです」


アンドレイの顔に温かな笑みが浮かんだ。


「素晴らしい。何かあったらすぐに報告してくれ」


アンドレイは召喚のルーンを取り出した。


空中に柔らかな光が広がり、その中から黒き悪魔の執事の姿が現れた。


年の頃は三十前後。


姿勢は完璧で、視線は冷静。


その身からは静かな力と確かな自信が漂っていた。


「お初にお目にかかります、主様」と彼はわずかに微笑んだ。


「あなたの執事……ドレイクと申します」


彼は丁寧に一礼した。


その何気ない動作の中にも、隠しきれない力が感じられた。


アンドレイは一瞬、彼を見つめた。


ただの従者ではなく、経験豊富で危険な存在だと直感した。


アンドレイは強くルーンを砕いた。


火花が空中に散り、ルーンは粉々に崩れ落ちた。


だが執事は……微動だにしなかった。


「何も起きないな」とアンドレイは呟き、拳を強く握りしめた。


どんな事態にも備えるように。


しかし、悪魔は動かなかった。


「お茶でもいかがでしょうか?」


ドレイクは無表情のまま、淡々と尋ねた。


まるで今起きたことなど、取るに足らない出来事であるかのように。


アンドレイは言葉を失った。


目の前の悪魔の執事は、落ち着き払って立っている。


「お前の刻印は消えた」とアンドレイは言った。


「もう俺に従う義務はないはずだ」


ドレイクは表情を変えず、静かに答えた。


「主様、確かに刻印は消え、私は自由を取り戻しました」


「ですが、あなたへの忠誠は絶対です」


「私は強制ではなく、自らの意思で仕えることを選びます」


彼は顔を上げた。


その瞳には、静かで揺るぎない炎が宿っていた。


その言葉は誓いのように響いた。


単なる約束ではなく、時間と力によって証明された事実として。


ルーンによる制御がなければ、悪魔を呼び戻すことはできない。


英雄は彼を観察することにした。


一つ一つの動きを見逃さず、ドレイクの振る舞いを見極めるために。


「いいだろう」とアンドレイはわずかに微笑んだ。


「リザと歩いた後だし、誰かと一緒に旅するのも悪くない」


ドレイクは静かに頷いた。


その視線は変わらず冷静で、注意深かった。


ドレイクはまさに理想的な執事として、英雄に仕えた。


その所作は正確で、配慮は行き届いていた。


アンドレイはこれまで感じたことのない感覚に気づいた。


温かさと気遣い。


それは彼の人生にはなかったものだった。


悪魔の一つ一つの動きは無駄がなく、すべてが計算されている。


まるでその存在そのものが、奉仕と忠誠の規律に従っているかのようだった。


そしてその瞬間、アンドレイは気づいた。


自分がどれほど単純な存在だったのかを。


日常的な悩みや人間らしい習慣に満ちた自分の人生は、


ドレイクの持つ威厳と規律の前では、どこか素朴にすら感じられた。


彼は思いもしなかった。


こんな悪魔が、ただ従うだけでなく、


ここまで繊細な気配りを見せるとは。


まるで、一つ一つの瞬間を大切にする人間のように。


普通の人間の世界と、悪魔の執事の世界。


その交差点で、不思議な調和が生まれていた。


そしてアンドレイは理解した。


自分の隣にいるのは、


力だけでなく、洗練された忠誠でさえも示すことのできる存在なのだと。

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