第20章
第20章
朝、アンドレイは西へ向かった。彼の相棒である「風の支配者」に乗って。
軽い風が髪を揺らし、視線は遠くの地平線へと向けられていた。空と地面の境界が溶け合うように見える。
やがて彼は巨大な川にたどり着いた。朝日を受けて水面がきらめいている。美しい川岸で足を止め、簡単な食事の準備をした。
食べ始めたその瞬間、意識にリザの声が静かに届いた。
— 主よ…あなたの言う通りです。あれは彼です。
その朝も、アンドレイの指示を受けた一行は影の探索を続けていた。事前の情報のおかげで、彼らは群れに不用意に突っ込むことなく、慎重に敵を探し出していた。
一歩一歩が計算され、すべての動きに意味があった。突然の襲撃は致命的になり得ると理解していたからだ。
木々が静かに軋み、薄い霧が地面を這うように広がる中、彼らは音を殺して進んでいく。まるで森に溶け込むように。
やがて彼らは小さな野営地で昼食を取っていた。焚き火が静かに燃え、緊張が一瞬だけ緩んでいた。
そのとき、背の高い戦士が一人、森へと離れた。
十数分後——彼は戻ってきた。
だが、その後ろには五十体ほどの影の軍勢が続いていた。中にはペガサスに乗った騎兵もいる。
— 馬鹿者!とヒロインが叫ぶ。
一行は即座に撤退を開始した。目指すは村だった。
しかしその途中、一人の仲間が転倒する。
背の高い戦士は振り返らず、そのまま走り去った。
ヒロインは見捨てることができず、倒れた仲間の元へ戻る。
結果、三人だけが五十体の影と対峙することになった。
息も絶え絶えの戦いの末、彼らは何とか全ての影を討伐する。治癒魔法が必死に展開され、傷が塞がれていく。
そこへ——背の高い戦士が戻ってきた。
— 生きてたのか?なら十分だな…
彼は低く笑い、歪んだ笑い声を響かせた。
— これからは、もっと楽しませてもらうぞ。
空気が一瞬で冷たくなる。
— 私たちは…負けない…ヒロインが震える声で言った。
そのとき、リザがテレパシーで静かに伝えた。
— 主よ…あなたの言う通りです。あれは彼です。悪魔です。
— 行動しろ。
アンドレイの命令は短かった。
リザは人間の姿のまま剣を構えていたが、その動きはすでに竜の力を宿していた。
悪魔は長い戦斧を振るい、圧倒的な力で攻撃してくる。しかしリザはすべてを容易く回避した。
彼女の剣は風のように滑らかに動き、正確に急所だけを狙う。
一撃一撃は致命的で、戦斧の攻撃は彼女に届かない。
やがてリザは武器を弾き飛ばし、反撃の一撃で悪魔を吹き飛ばした。
火花が散り、金属音が響くが、彼女の動きは一切乱れない。
そして次の瞬間——竜の力を乗せた一撃が放たれ、悪魔は地に倒れた。
戦いは終わった。
冒険者たちはその場に崩れ落ち、何が起きたのか理解できないまま呆然としていた。
リザは静かに彼らの元へ歩み寄る。
両手を掲げると、赤い光が広がり、治癒の魔法が全員を包み込んだ。傷が塞がれ、体力が回復していく。
冒険者たちは礼を言ったが、リザはそれを聞いていないようだった。
彼女はただ一点を見つめていた。
— 主よ、了解しました。
テレパシーでそう伝えると、リザは北へと一気に駆け出した。風を残しながら森の奥へ消えていく。
安全な距離まで離れた後、彼女は静かに姿を変え始めた。




