第13章
第13章
氷に覆われた山頂で古代のドラゴンと一夜を過ごした後、アンドレイは早朝に再び空へと舞い上がった。
彼の目的地は南、エレノアとヴァロルの間に広がる地だった。
エルフの記録によれば、約二千年前、この地には巨大な裂け目が生まれたという。
それはかつて存在した一つの大国を二つに引き裂き、後にエレノアとヴァロルという国家となった。
その深淵からは影が現れ始めた。濃く、暗く、不自然な影。まるで大地そのものがこの場所を拒絶しているかのようだった。
その影響で周囲の大地は危険地帯へと変わり、踏み入るだけで命を落としかねない場所となっていた。
勇者は風の支配者に乗り、裂け目の北側へと到達する。地上へ降り立ったとき、ついに敵の姿を捉えた。
最初はただの騎士に見えた。だが、アンドレイの直感はそれがただの戦士ではないと告げていた。顔は兜に隠され、その佇まいには揺るぎない自信が宿っている。
鑑定の結果はレベル94。数多くの攻撃と防御技術を持つ達人だった。
危険を察したアンドレイは、エルフの姿シルヴァナとなり、戦闘に入る。
最初の一撃から理解した。この戦いは簡単ではない。敵の攻撃はすべてが計算され、致命的だった。
激しい戦いの末、最初の騎士を倒すことには成功した。だが、その直後、どこからともなく二人目が現れる。
さらに戦い続け、二人目も倒したその瞬間、今度は五人の戦士が現れた。
状況を判断し、アンドレイは風の支配者に攻撃の指示を出す。
使い魔は空へと飛び上がり、強烈な風と魔法で敵を吹き飛ばしていく。
勝利が見え始めたそのとき、新たな脅威が上空から襲いかかった。
黒いペガサスに乗った同じような騎士だった。
突然の攻撃にアンドレイは一瞬驚くが、すぐに転がるようにして回避する。体の中でアドレナリンが一気に高まるのを感じた。
その直後、森の中から魔力の気配が飛び出してきた。誰の攻撃かを理解するのに時間はかからない。
エルフたちだ。
ペガサスに気づいたエルフの部隊が、一斉に攻撃を仕掛けていた。
わずか数秒で放たれた魔法は空を駆ける存在を撃ち落とし、そのまま消滅させた。
アンドレイは戦闘態勢を取り、次の敵に備える。
この裂け目は単に大地を分断しただけではない。ここは危険そのものの源だ。ここでの戦いはすべて命がけになる。
彼の視界にエルフの部隊が映る。六人の小隊だった。
アンドレイは地上に降り立ち、一人ひとりを注意深く観察する。
エルフたちは周囲の安全を確認すると、わずかに警戒を緩めた。
「お前は何をしている」
先頭のエルフが声を荒げた。
「ここは一人で来る場所じゃない。危険すぎる」
シルヴァナは一瞬答えに迷い、短く言った。
「問題ない」
「その慢心は命取りになる」
リーダーは冷たく言い放つ。
そのとき、彼らは風の支配者の存在に気づいた。
隊長は驚きのあまり言葉を失う。
「それは……何だ」
「風の支配者だ」
アンドレイは落ち着いて答える。
「あり得ない……どうしてそんな存在を……」
彼は目を離せずにいた。
やがて冷静さを取り戻し、厳しい声で言う。
「すぐにここから離れろ。この場所は危険すぎる」
アンドレイは視線を外さずに問い返す。
「あなたたちはなぜここにいる」
リーダーは少し口調を和らげて答えた。
「いいだろう。理由は二つある」
「一つは、この近くに我々の村がある。暗黒の戦士を放置すれば、いずれ村に到達する」
「もう一つは、若い者に経験を積ませ、レベル100に到達させるためだ」
アンドレイは彼らを観察する。全員がレベル100で、一人だけ89だった。
あれが新人か、と彼は判断した。
「俺も同行する」
アンドレイは言った。
「ここに来たばかりだ。狩りに加わりたい」
「頑固なエルフだな……いいだろう。ただし後ろについてこい」
隊は再び動き出した。
やがて前方に新たな暗黒の騎士たちが現れる。
戦いはすぐに始まった。
若いエルフが真っ先に飛び出す。剣が陽光を反射して輝いた。
その動きは正確で無駄がない。
他のエルフたちは彼の後方で連携し、側面を守りながら、隙があれば即座に援護に入る。
魔法の矢が空を裂き、呪文が閃光となって弾ける。
その連携はまるで一つの舞のようだった。すべての動きが噛み合い、無駄がない。
若いエルフは年齢に似合わぬ実力を見せていた。
攻撃を受け流し、魔法を避け、反撃を決める。その剣技と魔力は一体となり、まるで一つの流れのように繋がっている。
周囲の空気は戦闘のエネルギーで震えていた。
それを見ながら、アンドレイは確信する。
この若い戦士は本物の実力者だ。




