第36章 ラナとの出会い
第36章 ラナとの出会い
夕暮れとともにアンドレイは森を出て街へ戻った。夕方の森は特に穏やかで、沈みゆく太陽の暖かな光が густい木々の間から差し込み、どんな小さな物音も優しく感じられた。彼は森での成果にわずかな満足感を覚えていた。
酒場で休むという選択はほぼ必然だった。しかし夕方の通りを進む中で、アンドレイはすぐに空気の緊張を感じ取った——誰かが自分を見ている。
影から一人の人物が現れた。女のアサシンだった。彼女は一歩前に出て静かに言った。
「平和よ」
「ギルドはもうあなたを追っていない。私はあなたに殺されずに済んだことへの感謝を伝えに来たの」ラナはそう告げた。
アンドレイは冷静さを保ち、わずかに笑みを浮かべて答えた。
「いいだろう。じゃあビールを奢れ」
その反応はラナの予想を完全に外した。緊張ではなく軽い冗談のような返答だったからだ。
二人はアンドレイがよく利用する酒場へ向かった。歩きながらアンドレイは考えていた。敵を近くに置くほど安全だ、という言葉が頭から離れなかった。
席に着くと、最初に沈黙を破ったのはラナだった。
「私はラナ。あなたはどう呼べばいい?」
アンドレイは即座に決めた。
「カイラだ」
ラナはその名前を気に入ったように頷いた。
「カイラ……変わった名前ね。地元の名前じゃないわね?」
「遠い地方の出身だ」彼は落ち着いて答えた。
内心では彼は警戒していた。この質問は罠になり得る——真実を言えば疑われ、嘘をつけば不信を招く。旅人として振る舞うのが最も安全だ、と彼は判断した。
カイラは続けた。
「この街で好きな食べ物の店はどこ?」
ラナは少し戸惑った。ギルドでは食事は管理され、自由に店を巡る習慣がなかった。
「えっと……私はあまり外で食事しないの。ギルドの食事があるから」
次の質問はより直接的だった。
「東の帝国のスパイ?それとも別の国の出身?」
カイラは正直に、しかし曖昧に答えた。
「スパイではない。ただ世界を旅する冒険者だ」
ラナは疑わしげに眉を上げた。これほどの実力者がただの冒険者であるはずがない、と感じたのだ。
カイラは気軽な様子で彼女に質問を返した。
「仕事で自由な時間は多いのか?」
「休みの時は何をしている?」
「趣味は?」
ラナは答えに詰まった。ギルドの規律に従う生活では、そうした個人的な時間がほとんど存在しなかった。
今度はラナが彼に踏み込んだ質問を投げた。
「あなたの強さの秘密は?」
「レベル、スキル……それだけじゃない」カイラは答えた。
「私はよくレベル100のダンジョンで修行していた。普通なら誰も近づかない場所だ」
「レベル100のダンジョン?」ラナは驚いた。「あそこは生きて帰れないはずよ」
「だからこそ意味がある。強い敵ほど成長できる」
ラナは混乱していた。この男は何者なのか、と。
「アサシンは戦闘向きじゃない職業じゃない?」ラナが言った。
「それは初心者の考えだ」カイラは笑った。「職業に弱い強いはない。使い方次第だ」
ラナは興味を示した。
「どういうこと?」
「アサシンは隠密、速度、毒、急所攻撃に特化している。でも他の技術も必要だ。私はアサシンだけじゃない」
「他にもあるの?」ラナは警戒した。
「闇魔法も使える」彼は続けた。「シールドや戦闘補助の魔法もだ」
ラナは真剣に聞き入っていた。
「そして重要なのは回復魔法だ」カイラは言った。「自己回復、仲間の支援、戦闘後の回復。これは必須だ」
ラナの表情に理解が浮かんだ。
「あの時、ギルド長を治したのも……」
「基本的な回復魔法だ。必要な時に使えるようにしているだけだ」
そして彼は続けた。
「もし疑うなら、実際に見せることもできる」
ラナは少し考えたあと頷いた。
「何をするの?」
「軽い訓練だ。戦闘と生活に役立つ技を見せる」
「仕事まであと二時間あるわ」ラナは時計を見た。
「十分だ。行こう」カイラは立ち上がった。「誰にも邪魔されない場所がある」
「ギルドの訓練場じゃないの?」ラナが聞いた。
「違う。もっといい場所だ」彼は微笑んだ。




