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第9章 皇妃の崩壊

第9章 皇妃の崩壊


北方山脈では、二キロ級の巨大な石ゴーレムがゆっくりと進軍していた。


その一歩ごとに大地が震え、破壊の波が広がっていく。彼らの目的地はアイサドだった。


そのとき、フロストの念話が沈黙を破る。


「主様! ゴーレムが召喚された地点から……何かが出現しています! 石のガーゴイルです!」


アンドレイは表情を強ばらせ、霧に包まれた山頂を見上げた。


そこには異様な光景があった。


――都市?


いや違う。


建造物だ。


巨大なカプセル状の構造物が連結され、まるで“工場”のように機能している。


「これは……都市じゃない」


アンドレイは呟く。


「工場だ」


フロストが続ける。


「悪魔たちが動き出しています。北へ……いや西へ向かっています! 皇帝の要塞を攻めるつもりです!」


アンドレイは歯を食いしばった。


「できる限り支援しろ!」


念話で命じる。


「この工場を破壊しろ。何としてでもだ!」


(もしあれが稼働したら……)


(ゴーレムもガーゴイルも無限に生産される)


それは“終わり”だった。


一方、セレスティナとアストリッド率いる魔族軍は完全に機動戦力へと変貌していた。


全軍が飛行可能で、高速機動に特化している。


彼女たちは工場の背後へ回り込み、奇襲を仕掛けた。


高地に設置された砲台が一斉に火を噴き、谷全体を炎に包む。


セレスティナは冷静に魔法を放ち続け、戦況を制御していた。


アストリッドはヴァンパイア軍を召喚し、空を制圧する。


ハーピー軍と激突し、空中戦は地獄のような混戦となる。


魔法、矢、爪、翼――すべてが交錯する戦場。


だが帝国の防衛施設も応戦する。


砲台が次々と魔法砲撃を放ち、魔族の兵器を破壊していく。


セレスティナは詠唱し、一つの塔を完全に消し飛ばした。


爆発と崩壊。


だが工場はまだ動いていた。


煙が立ち上り、機械兵器が次々と起動する。


その瞬間――


北の山脈からフロストが現れた。


巨大な翼が空を裂く。


そして氷のブレスが放たれる。


ガーゴイル軍が瞬時に凍結した。


石の体は氷に覆われ、次々と砕け落ちていく。


戦場の空気が一変する。


だがその直後――


帝国の塔から光が放たれた。


狙いはフロスト。


直撃。


ドラゴンは咆哮を上げ、空中で体勢を崩し、そのまま山へと墜落した。


戦場に一瞬の静寂。


その瞬間、アストリッドが動いた。


彼女は空へ舞い上がる。


怒りと魔力をすべて一点に集中し、塔へと放つ。


爆発。


塔は崩壊し、帝国の防衛線に大きな穴が開いた。


ゴーレム軍が砲台へ到達し始める。


だがアストリッドは前線に飛び込み、自ら壁となって仲間を守る。


彼女の魔法は奔流のように敵を吹き飛ばした。


そのとき――


空が裂けるように、皇帝が現れた。


南から降臨するその姿に、戦場の空気が凍りつく。


彼の視線はただ一人、アストリッドに向けられていた。


そして、圧倒的な魔力が収束する。


セレスティナは咄嗟に防御結界を展開した。


だが間に合わない。


皇帝の一撃は、結界ごとすべてを消し飛ばした。


セレスティナは――完全に消滅した。


痕跡も、魔力の残滓も残らない。


戦場が止まる。


アストリッドの表情に恐怖が走る。


彼女の最大の支柱が、瞬間で消えた。


それでも彼女は戦うことをやめなかった。


残存軍を指揮し、工場への総攻撃を続ける。


自ら前線へ飛び込み、回避と魔法で皇帝を誘導する。


砲撃が次々と爆発し、工場構造そのものが崩壊し始める。


そして――


巨大構造体は耐えきれなかった。


地面ごと崩れ落ち、工場は巨大な穴へと沈んでいく。


アストリッドは一瞬だけ安堵する。


任務は達成された。


だが次の瞬間――


皇帝の魔力が彼女を貫いた。


回避は不可能だった。


アストリッドはその場で崩れ落ちる。


こうして戦場は静寂に包まれた。


工場は崩壊し、帝国の兵器生産能力は失われた。


しかし代償はあまりにも大きい。


魔族の女王セレスティナと、指揮官アストリッドは消滅した。


皇帝の力だけが、戦場に重く残っていた。


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