第7章 巨人の戦い
第7章 巨人の戦い
アイサド王国は、わずか数時間で壊滅した。
巨大ゴーレムたちは岩塊を持ち上げ、進む先すべてを破壊しながら都市を瓦礫へと変えていく。
そして今、彼らは東へ向かっていた。
低い山脈を越えていく――彼らにとっては低いが、それでも巨大な地形だ。
一歩ごとに大地が震え、木々が折れ、川の流れさえ揺れによって変わっていく。
「もうすぐフロストグラードに到達する」
アンドレイは静かに言いながら、その進行を見つめていた。
奇妙なのは一つだった。
彼らは魔族の国を避けて通っている。
偶然ではない。
ルートが明確に制御されていた。
まるで誰かが進行方向を指示しているかのように。
アンドレイは眉をひそめる。
(皇帝は“誰を先に消すか”を選んでいる)
(魔族国家は後回し……つまり、もっと大きな何かを準備している)
(どの動きにも備えなければならない)
――回想。
その頃、皇帝は愛するミラナの隣に横たわっていた。
彼女は穏やかな視線で彼を見つめながらも、声は冷静だった。
「あなたの任務はエルフの都市の防衛よ」
静かだが、逆らえない命令。
「アイサドとフロストグラードをゴーレムが破壊した後、彼らは南へ迂回する。そこで次の戦線が始まる」
ミラナは続ける。
「その時に備えて」
皇帝は彼女に口づけし、静かに頷いた。
「分かった。やる」
その瞳には揺るぎない確信があった。
「でも……なぜ魔族帝国を滅ぼさないの?」
ミラナの問いは落ち着いていたが、鋭かった。
皇帝は少しだけ目を細める。
「いい質問だ」
彼は淡々と答える。
「魔族国家を作った者がいる。それも、他種族を含めてな。正直、驚いている」
一拍置いて続ける。
「それに……噂では、そこの女王は美しいらしい」
冷たい笑みが浮かぶ。
「時間ができたら、直接見に行くさ」
――現在。
アンドレイは集中していた。
彼は強化薬を飲む。
身体の中に圧倒的な力が流れ込む。
魔力が暴れ、空気すら震える。
彼はフロストグラード王国へ到着した。
すでに遠くに見えるのは、皇帝の巨大ゴーレム群。
一体あたり約2キロの巨体。
だがアンドレイは冷静だった。
彼は姿を変える。
赤髪の魔女、フレイアの姿へ。
「ここからは、俺のやり方だ」
静かに呟き、手を振る。
召喚されたのはゴーレムたち。
だが皇帝のものより小さい。約5分の1のサイズ。
しかし違いがあった。
アンドレイは合金魔法を用いていた。
石の強度、金属の骨格、そして鋼の拳。
それは“破壊のために設計された兵器”だった。
「完成度は高い」
アンドレイは呟く。
「小さいが、あれより危険だ」
戦場で両軍のゴーレムが激突した。
巨大ゴーレムは圧倒的な質量で押し潰す。
小型ゴーレムはそれを回避し、内部から破壊する。
最初の衝突で、アンドレイ側は一体だけ撃破できた。
だが巨人たちは止まらない。
王国の軍も戦った。
弓兵は矢を放ち、魔法使いは術を撃ち、騎士は突撃する。
しかしすべては無意味だった。
攻撃は岩肌をかすめるだけ。
一歩ごとに兵士は数百単位で消えていく。
状況は絶望的だった。
だがアンドレイは冷静だった。
(基本に戻る)
彼は命じる。
「ゴーレム、脚を狙え」
小型ゴーレムたちは一斉に動く。
巨体の足元へ潜り込み、バランスを崩しにかかる。
同時にアンドレイは魔法弾を放つ。
爆発が連鎖し、岩と土が空へ舞い上がる。
ゴーレムは崩れ、山が崩壊する。
その崩落はさらなる災害を呼び、地形そのものを変えていった。
王国は煙と砂塵に飲み込まれ、世界は崩壊の風景へと変わる。
それは容赦のない終末だった。
しかし他に選択肢はない。
勝つか、滅びるかだ。
やがて戦場が静まった。
皇帝のゴーレム軍は完全に破壊されていた。
フロストグラードは瓦礫と化し、地図から一つの国が消えた。
アンドレイの勝利は冷徹で、計算されたものだった。
だが確かに――生き残るための勝利だった。




