第24章 ― 任務と旅路
第24章 ― 任務と旅路
アンドレイは自らの城の大きな机に座り、地図とメモをじっと見つめていた。
意識はどこか遠くへと向けられ、視線はルートの線や錬金術の図式、希少な素材の記述の上をさまよっている。
やがて彼は顔を上げた。
「ドレイク、この世界に存在するあらゆる錬金器具が必要だ。近隣の国では、おそらく必要なものは揃わないだろう。だから南東の帝国――アルタイまで行ってもらう」
ドレイクは眉をひそめた。予想外の指示だった。
「大陸を横断するのか……アンドレイ、それは遠すぎる」
「そうだな」
アンドレイは落ち着いた声で言った。
「だが、お前ならできる」
リザが身を乗り出した。
「旅なら、私が代わりに行く!」
アンドレイは首を振る。
「いや、リザ。お前には別の任務がある」
「えー……」
リザは少し不満そうに言った。
ドレイクは内心不満を抱きつつも、静かに頷いた。
普段は一人で近場の任務に出ることが多い。だが今回は大陸のほぼ反対側だ。
次の瞬間、彼の姿は魔力の渦に包まれ、消えた。
残されたのはアンドレイとリザ。
リザが彼を見る。
「それで、私の任務は?」
「お前の任務はな、リザ……」
アンドレイはわずかに笑った。
「休むことだ」
「は?」
リザは眉をしかめた。
「私はちゃんとした任務が欲しいのに!」
「わかった、わかった」
アンドレイは小さく笑った。
「じゃあ特別な任務をやろう。お前にしかできないものだ」
リザの目が輝く。
「なにそれ?」
「すべての国を巡って、それぞれ一番美味い料理を見つけてこい。そして――それを俺のために再現しろ」
一瞬、リザは固まった。
そして次の瞬間、ぱっと表情が弾ける。
「それ最高じゃん!任せて!」
喜びを抑えきれない様子で、彼女はすぐに旅支度を始めた。
これから出会う味、香り、小さな料理の冒険に胸を躍らせながら。
アンドレイは椅子に腰を下ろし、再び地図へと視線を落とす。
(俺が転移して、ドレイクの代わりに全部やることもできるが……)
(あいつには旅をさせるべきだ。困難に直面し、自分で解決する経験が必要だ)
(いつも近くにいて、観察し、必要なら介入する……だが、自分から動くことは少ない)
彼はリザの方を見た。
楽しそうに「料理の旅」の準備をしている。
(リザには目標が必要だな)
(じっとしていられない性格だ。行動し、発見し、課題に挑むことを求めている)
(フロストとは対照的だな)
フロスト――氷のドラゴンは、物事を計画し、細部まで分析することを好む。
アンドレイはわずかに微笑んだ。
同じ召喚された存在でも、性格はまったく異なる。
再び机に向かい、地図と記録に目を落とす。
小さく息をついた。
綿密な準備と情報の整理――それだけが、これから先の出来事に正しく備える手段だった。




