第21章 エルフと魔族
第21章 エルフと魔族
レベル100のダンジョン79階層は制圧された。
最後のモンスターは石の床に崩れ落ち、灰となって消えていった。
空気にはまだ戦闘の気配が漂っていたが、すでに静けさが戻り始めていた。
アンドレイは深く息を吐いた。
「ドレイク……来い」
ドレイクは近づき、注意深く彼を見た。
「どうした?」
アンドレイはステータスを開き、それを彼に向けた。
「見ろ」
ドレイクは固まった。
「レベル……101?」
一瞬、彼でさえ言葉を失った。
「実験は……成功か失敗か……」
アンドレイは数字を見つめながら、静かに言った。
「この世界のすべての存在は……最大でレベル1000だ。だが成長できるのは、レベル100の制限が壊れているからだと思っていた」
「だが俺のキャラクターは……レベル1から始まった。そして今は——101だ」
ドレイクは眉をひそめた。
「つまり……」
アンドレイは頷いた。
「制限は……俺には適用されない」
沈黙が二人の間に流れた。
「おそらく、」とアンドレイは続けた。
「この世界は……俺をその一部として認識していない」
彼の視線はより真剣になった。
「当然だ。俺は……ここから来たわけじゃない」
言葉は落ち着いていたが、重みがあった。
彼は別の世界から来た。
そして、それがすべてのルールを壊しているようだった。
「行くぞ。ここに用はない」
二人は出口へ向かった。
ポータルが光を放ち、次の瞬間——
二人はダンジョンを後にした。
ダンジョンの出口では、すでに彼らを待っている者がいた。
アンドレイはすぐに見覚えのある姿に気づいた。
エルフ。
アリス。
だが今回は、手に剣はなく、戦闘態勢でもない。
ただ立ち、見ていた。
アンドレイは軽く笑った。
「よう。名前は……そうだ、アリスだったな」
アリスは明らかに緊張し、その視線は鋭くなった。
「どうして私の名前を知っているの?」
アンドレイは肩をすくめた。
「ギルドで書類を見ただけだ」(アンドレイは嘘をついた)
彼女はすぐには信じなかったが、反論もしなかった。今はそれより重要なことがあった。
「あなたと話がある」
アンドレイは一瞬考え、頷いた。
「いいだろう。行くぞ」
二人はダンジョン近くのキャンプへ向かった。
そこは活気に満ちていた。
テントや天幕が道沿いに並び、焚き火が燃え、会話や笑い声、言い争いが聞こえていた。世界中の冒険者たちがここに集まっていた。
それぞれが自分の望みを抱いていた。
金、名声、力。
巨大なダンジョンはすべてを引き寄せていた。
騒がしさから離れた場所を見つけ、アンドレイは立ち止まった。
「ここでいい」
次の瞬間、彼はインベントリを開いた。
アリスの目の前に、何もない空間から豪華な椅子が二つと、重厚な木製のテーブルが現れた。
ドレイクは黙って動き始めた。食器、道具、食材を取り出し、準備を始めた。
数瞬後には、温かい料理を作っていた。まるでここが野外ではなく、普通の厨房であるかのように。
アリスは固まった。
その視線はテーブルから椅子へ、そしてアンドレイへと移った。
「どれくらい……」
彼女は言葉に詰まった。
「あなたのインベントリ……どれくらいの容量なの?」
アンドレイは椅子に座り、すべてが普通であるかのように答えた。
「さあな」
肩をすくめた。
「いくら入れても……終わらない」
その間にドレイクは料理を並べた。
アンドレイは続けた。
「だから時々捨てる……必要なものを見つけやすくするために」
沈黙。
アリスはゆっくりと向かいに座った。
その目には、ただの驚きではなく——
警戒があった。
彼女はすでに彼の戦いを見ていた。
彼が強いことは知っている。
だがこれは——
別の何かだった。
無限のインベントリ……
しばらくして、アリスは口を開いた。
「あなた……本当に魔族?」
アンドレイは静かに首を振った。
「違う。俺は魔族じゃない」
少し横を見た。
「だがドレイクは……本物の魔族だ」
アリスは視線を向けた。
ドレイクは準備を終え、まっすぐ立ち、一歩前に出て控えめに頭を下げた。
「ドレイク。お仕えいたします」
その声は落ち着いていたが、力と自信が感じられた。
アリスはさらに緊張した。
彼女はすでに魔族を見たことがある。
だがこれは違った。
野性的でもなく、混沌でもない。
制御されていた。
アンドレイは一口飲み、静かに言った。
「魔族の話になったついでだ」
彼はアリスを見た。
「なぜエルフは北の魔族の国を滅ぼさなかった?」
アリスは固まった。
予想外の質問だった。
彼女は視線をそらし、記憶を探るようだった。
「最初は……計画していた」
やがて静かに言った。
「三つの村で連携するつもりだった」
声に緊張が混じった。
「彼らが弱いうちに、滅ぼすつもりだった」
アンドレイは注意深く聞いていた。
「でも……」
アリスは拳を握った。
「東の都の女王が拒否した」
彼女は視線を上げた。そこには苛立ちがあった。
「自分たちには関係ないと。魔族なんてどうでもいいと」
火が静かに弾けた。
「そして……手遅れになった」
彼女の声は低くなった。
「魔族は増えすぎた」
彼女はまっすぐアンドレイを見た。
「そして……危険すぎる存在になった」
アンドレイは少し笑い、落ち着いて言った。
「そのエルフの女王……ひどい女だな」
アリスは鋭く彼を見た。
「あなた……彼女を知っているの?」
その声には明らかな不信があった。
アンドレイは肩をすくめた。
「何度か会った」
「ありえない」とアリスはすぐに言った。
「簡単に会える相手じゃない」
アンドレイは手を軽く振った。
「どうでもいいことだ」
沈黙が流れた。
火が静かに音を立て、顔に影を落とした。
アリスは彼を見つめ、彼が嘘をついているのか本当のことを言っているのかを見極めようとしていた。
アリスはなおもアンドレイを見つめ、頭の中で全てをつなぎ合わせようとしていた。
「あなた……すべてを簡単に言うのね」と彼女は静かに言った。
アンドレイは肩をすくめた。
「ある意味ではな」
彼女は眉をひそめた。
「北の魔族は大陸全体の脅威よ。あなたも分かっているはず」
アンドレイは何も答えなかった。
それが彼女の緊張をさらに強めた。
「じゃあ……なぜ」
彼女は一瞬言葉を止めた。
「なぜあなたは魔族の国を滅ぼさないの?」
質問はまっすぐだった。
アンドレイは静かに彼女を見た。
「半日あれば全部滅ぼせる。だが……なぜだ?」
アリスは眉をひそめた。
「危険だからよ。いずれ——」
彼は彼女の言葉を遮った。
「なぜ魔族を殺す?」
沈黙。
「彼らは平和に暮らしている」とアンドレイは続けた。
「国も繁栄している」
アリスは固まった。
「そこには様々な種族がいる。魔族だけじゃない。そして……共に暮らしている」
彼女の視線は疑いに満ちていた。
「厳しい法律の下で、でしょ?」
「そうだ」と彼は落ち着いて答えた。
「だが縛られてはいない」
少し前に身を乗り出した。
「自由に来て、自由に去ることができる」
アリスは何も言えなかった。
アンドレイは少し間を置き、続けた。
「そして一番重要なのは——」
彼は彼女の目をまっすぐ見た。
「魔族の女王は戦争を始めなかった」
火が静かに弾けた。
「やろうと思えばできた。だがやらなかった」
アリスは唇を強く結んだ。
「一度だけ世界を脅した……それで十分だった」
今度は彼女が黙った。
そして初めて——
彼女の中で、魔族に対する見方が変わり始めた。
彼女はゆっくりと顔を上げた。
「じゃあ教えて」
一瞬の間。
「本当の敵は誰?」
二人の間の火が弾け、火花が暗闇に散った。
アンドレイは迷わなかった。
「エルフの女王だ」
アリスは勢いよく立ち上がった。
「正気なの!?」
その声には衝撃があった。
「誰のことを言っているか分かっているの!?」
アンドレイは座ったまま、落ち着いて彼女を見た。
「十分に分かっている」




