第19章 帝国の繁栄
第19章 帝国の繁栄
悪魔の都市はゆっくりと姿を変えていた。規則正しく整えられた石畳の街路は魔法の灯りに照らされて輝き、黒い石とガラスで造られた塔が次々と天へと伸びていく。かつての混沌は消え、そこには秩序と整然さが存在していた。
セレスティナは苦渋を感じながらも、信頼できる5人の悪魔司令官を任命していた。彼らの能力、忠誠心、決断力によって各地の統治は維持されていた。しかし彼女は心の奥で理解していた――まだ足りないと。
「完全に任せられる“人間”が必要だ。いつでもここを離れても、すべてが回るように……」
その頃、彼女の領域にドワーフの資源採掘者たちが現れ始めていた。最初の遭遇は領域の境界だった。警戒しながら足を踏み入れた彼らの前に、再びセレスティナが姿を現す。
長い交渉の末――
— この山だ。— 彼女は鉱物に覆われた高地を指差した。— 必要な資源はそこにある。
— 私の国に入ることは許可する。ただし規則は絶対だ。盗み、殺人、暴力、争いは禁止。悪魔だろうと他種族だろうと例外はない。
ドワーフたちは彼女の圧倒的な統治力に感銘を受け、頷いた。やがて「セレスティナの領地には莫大な資源がある」という噂が世界中に広がっていく。
それに伴い、冒険者や商人、様々な種族が次々と彼女の帝国へと集まり始めた。金、希少鉱石、魔法資源――そのすべてを求めて。
悪魔の都市そのものは依然として閉鎖されたままだった。許可なき侵入は一切認められない。
しかし鉱山周辺には新たな集落が形成され始めていた。ドワーフ、冒険者、商人、他種族たちによるもう一つの都市が生まれ、そこには独自の秩序と活気があった。
セレスティナは上空からそれを見下ろし、静かに評価する。
— 私の帝国は成長している……。すべての者に居場所がある世界にしよう。規則を守れるならば。
その頃、南方のアイスダ国王の宮廷では噂が広がっていた。
— 悪魔が富を得ている……
— あの土地は資源で満ちている……
— 兵力は少ない……
そして侵攻の準備が始まった。
その情報はすぐにセレスティナへ届いた。
— 侵攻準備が進んでいます。— 悪魔の司令官が報告する。
セレスティナは一瞬目を閉じた。
— ご苦労。
彼女は自ら兵を失いたくなかった。戦争は強者であっても損失を伴う。そして帝国はまだ成長の途中だった。
— ならば……私が直接片付ける。
黒い影が空を裂いた。セレスティナは南へと高速で向かう。
真昼、彼女は何の隠密もせずにアイスダ国の首都へ突入した。街は瞬時に混乱に陥ったが、誰も対応できない。
城。
衛兵が駆け寄る――しかし次の瞬間、弾き飛ばされて消し飛んだ。
セレスティナは玉座の間へと歩み入る。
— 私の領土に手を出したのか……愚かな王よ?— 彼女の声は静かだが、骨の髄まで凍らせるようだった。— 真実を話せ。
彼女の視線に魔力が宿り、王は抵抗できず固まる。
— い……いや……我々は……攻撃を……準備していた……
次の瞬間、セレスティナは彼を掴み上げ、空へと飛び立った。
風が王の顔を叩き、地上は急速に遠ざかる。
やがて広大な平原の上空で停止した。
— この平原が見えるか?
王は震えながら頷く。
セレスティナは手を掲げた。空が暗転する。
そして次の瞬間――
巨大な隕石が空から落下した。
轟音が大地を揺らし、衝撃波がすべてを消し飛ばす。岩は溶け、地面は裂け、空気すら焼ける。
やがて静寂が訪れたとき、そこには巨大なクレーターが広がっていた。それは急速に水で満たされ、湖へと変わっていく。
— 同じことが、お前にも……そしてお前の愚かな首都にも起きる。— セレスティナは冷たく言った。— もし一人でも兵が私の領土に足を踏み入れればな。
王は震えていた。
彼女は彼を宮殿へ戻し、玉座の前に投げ捨てる。
— どうする?— セレスティナは静かに歩み寄る。— まだ戦争を続けるか?それとも……今ここでお前の城を消すか?
王は耐えられなかった。
その場で崩れ落ち、貴族、兵士、臣下の前で膝をつく。
— 許してくれ!戦争はやめる!誓う!二度と手を出さない!
広間は完全な沈黙に包まれた。
セレスティナは王を見下ろす。
その瞬間、誰の目にも明らかになった。
彼女を恐れていたのは、悪魔だけではない。
世界そのものが、彼女を恐れ始めていた。




