(13)アドビの幸せな生活
「美味い!前に外の連中が作った飯、なんだったか?センライが買ってきたやつ!比べるのも恥ずかしい位、美味いぞ!」
「あぁ、満腹亭とか言う立派な名前の店だね。あれだけ不味けりゃ満腹にはならないだろうけれど。ハハハハ、でも本当に美味い」
「うっ、あの時は申し訳ありませんでした。何故か客が沢山いたので当たりの店かと思ったのですよ」
料理を褒められているのを聞いてとても嬉しいアドビと、以前満腹亭の不味い食事を購入して村に提供した事をいじられているセンライ。
「フフ、静流様。この方達は面白いですね。あのちゃらんぽらんなエリアスがこれだけ素晴らしい集落に加護を与えているなんて思いもしませんでした」
「……ちゃらんぽらんなのかはわかりませんが、皆さん幸せそうにしていますし、アドビさん達も楽しそうですから本当に良かったです。一応ヘルナンド領のあの町で同じような事が起きないように、近々アドビさんが食事を販売しに行くときに同行して、神が見ていると言う噂を広めておこうと思います」
「それが良いですね。そうしましょう!」
二人が気になっていた五人の子供達は各自の家ではなく顔見知りであるアドビの家に同居する事になっており、それでも十分以上の広さがあるので、隣の家に住んでいるレーニャが時折面倒を見つつ生活を始める事になっていた。
レーニャはかいがいしく五人の子供達の世話を焼きつつ、お代わりをせがんでいる住民達の為に追加の料理を作っているアドビの手伝いもしている。
まるで子沢山の幸せ夫婦のように見えるのだが、初日でこのような事を口にしては恥ずかしがってしまうし、へそを曲げて美味しい料理を食べられなくなるのだけは絶対に避けなくてはならないと言う共通した住民の思いから、誰もそこを突っ込む事は無かった。
「ふぃ~、イチ達はもう風呂に入って寝ろよ!」
住民達があまりの美味しさに騒ぎ続けていたので、結構夜も更けている。
イチを始めとした五人の子供達は片づけを手伝おうとしているのだが、時間も時間だと言う事で休むように伝えるアドビ。
「ホラホラ、皆?アドビさんもああ言っているし、片づけは私もできるから。行きましょう?」
そこに優しい微笑と共に五人を風呂場に連れて行くレーニャ。
「助かるな……あいつ等にも笑顔が戻って嬉しい限りだ」
一人残されたアドビはこう呟きながら黙々と片付けをしつつ、明日の料理は何を作ろうかワクワクしている。
今までは食材の購入をどうするか、納税をどうするか、苦痛を伴う考えしかできなかったのだが、正に一日で天国に早変わりしたので、どれほど疲れていようが気にならなかった。
「はい、アドビさんも疲れているのですから、早く寝てください!今日の片づけは私に任せてください。子供達がお風呂で待っていますよ?」
そこに再び現れたレーニャの言葉に少し悩んだアドビだが、異性がいるとは言えまだまだ小さい子供だけに、成人とお風呂に入りたいのだろうと思って風呂に向かう。
子供達はそれこそ連続で続く幸せな出来事に喜び倒し、風呂から出ると一瞬で電池が切れた様に深い眠りについてしまった。
「ハハハ、これが本来のちびっこ共の生活なんだよ。こいつらは恩返しのつもりなのか、愚痴も吐かずに俺なんかの店に客を必死で連れてきてくれてな」
「アドビさん……」
一人ずつ二階のベッドに運んでいるアドビとレーニャ。
アドビも割と早く両親を亡くして頑張ってきた経緯があるため、それ以上の環境にある五人の子供達を見捨てる事が出来ずに追い詰められていたのだが、漸く五人の子供と共に明るい生活が見えたのだ。
「まっ、暗い話はここまでだ。こいつらも、俺も、幸せな生活が始まったばかりだからな!」
「そうですよ!これからたくさん楽しめますよ!」
「そうと決まれば……明日の朝食と、早速販売用の食事の下ごしらえだ。楽しみだ!腕がなるぜ」
「え?今日はお休みになった方が良いと思いますよ?」
「いやいや、楽しい事ばかりだったから疲れちゃいないさ……って、はい。わかりました」
レーニャの無言の圧力に一瞬で完敗したアドビは、言われた通りに自分も寝室に向かう。
「それでは、また明朝。おやすみなさい」
「あぁ、レーニャさん。本当に有難う。助かったよ」
ベッドに入ると、アドビの意識も子供達と同じように一瞬で飛んでしまった。
当の本人は疲れていないと言っていたのだが、大きな環境の変化と、喜び勇んで料理を作り続けていた事から相当な疲労が溜まっていた。
予定ではベッドに入りつつも初めて扱う食材をどのように使うか、メニューはどうすれば良いかを少しでも検討しておこうとしていたのだが、体は正直だ。
「ふぁ~、良く寝たな。今迄は色々不安だったんだな」
最近では記憶にない程よく眠れたので、軽くなった体を動かし始めるアドビ。
良質な睡眠や不安が無くなった事もあるが、ピュアリーフ入りの食事を摂取した事が今回劇的にアドビの状態が良くなった原因だ。
「子供達は……まだ寝ているよな。良し、早速仕事を始めるか!!」




