(12)アドビの気合
貴重で希少な存在であるピュアリーフが目の前に沢山成っているのを見たアドビは、考えていただけで絶対に試す事は出来ないと思っていた調理方法も試せる事に喜びを隠せない。
「で、ですがセンライさん。アレだけで料理はちょっと厳しいので、他の食材も欲しいのですが」
「もちろんです。その食材を町で購入するのもありですが、あの畑や果樹園、そして彼方が保冷庫になっていますが、そこには魔獣や獣の肉があります。好きにお使いください。新たにこの集落で作りたい野菜等がありましたら、仰ってください。植物であればエリアス様のお力で如何様にでもなりますので」
その後、木の中にある一つの家に案内されるアドビ。
「ここが最も調理場が充実している家です。畑にも果樹園にも、保冷庫にも近い絶好の場所になっていますので、よろしくお願いします」
「こ、こんな立派な……それに二階は居住できるのですか?」
「もちろんです。気に入って頂けると嬉しいです。実は私達の食事は自分達で作っているのですが、あまり美味しくなく……私が町に行って時折購入していたのですが、特にあのポフルとか言う男の経営している満腹亭は最悪でしたよ。そこでアドビさんにお願いです。もし可能であれば、エリアス様のお食事を作られるついでに、我々の分も作って振舞っていただけるとありがたいのですが……」
少し不安そうにお願いしているセンライ。
環境が変わった直後に、一気に二十人近くのご飯を毎日作れと言っているような物なので申し訳ない気持ちがあるのだが……その気持ちは全く不要だった。
「望む所です。寧ろこちらからお願いします。俺は、俺の料理を喜んで食べて頂ける事が夢なのです。素晴らしい!頑張るぞ!」
スイッチが入ってしまったアドビは、早速調理器具やそれぞれの素材のチェックをするためにセンライを残してさっさとこの場を去ってしまった。
「流石は天空神トリシア様推薦、そして我らがエリアス様の加護を受け取りしお方。ありがとうございます。これで食事が楽しみになりました!」
スキップするかのようにアドビの家となった場所から出て行き、他の住民達に希望がかなったと伝えるセンライ。
少ない人数ながらもあちらこちらで喜びの声が聞こえたのは言うまでもない。
アドビは、貴重な食材であるピュアリーフは後回しにして、主食となり得る素材の確認に勤しんでいた。
「フムフム、肉は……状態が良いな。これが保冷庫か。種類も豊富だ。あれ?これは他と違ってまだ生々しいな」
「それは狩りたてだからですよ」
「うぉ!」
突然話しかけられたので、思わず飛びのいて変な声を出してしまったアドビ。
「フフフ、ごめんなさい。そしてこれからよろしくお願いします。私は基本的にこの保冷庫の管理を行っているレーニャと申します。もしよろしければ、私にも調理を手伝わせていただけませんか?」
「え?いや、それはありがたいと言えばありがたいが……」
「決まりですね。では今後どうされますか?」
あまりの勢いに押されて圧されまくっているアドビ。
「えっと、野菜や果物の状態を確認したい……」
「では行きましょう!」
有無をも言わさず連れ出され、夫々の素材について詳しく説明してくれるレーニャ。
アドビとしても見た事のない素材も沢山あったのでレーニャの助言は非常にありがたく、調理器具の状態を確認するついでに素材がどのようなものなのかを確認するのにも一役買ってくれた事に感謝する。
「もう少ししたら夕食か。エリアス様、住民が俺達も含めて16人。トリシア様、兄ちゃん、シバ、良し!一発目からガツンと行くぜ!」
調子が上がってきたので話し方も元に戻りつつあるのだが、トリシアに関しては奥さん呼びではなくトリシア様となっていた。
「エリアス様が熱望するお料理、楽しみです。私は何をしましょうか?」
「そうだな。今回味を見させてもらったこの野菜と肉で、先ずは感触をつかみたい。肉が多めの肉野菜炒めが妥当だろうな。この野菜、軽く洗って大きめに切ってくれるか?」
すっかり互いの息があっているアドビとレーニャは、楽しそうに調理を進めて良い匂いを集落中にまき散らしている。
「良し、できた!隠し味は当然ピュアリーフだ!」
「凄いです。見てください、アドビさん。匂いにつられて凄い事になっていますよ」
レーニャに言われて窓の外を見ると、口を半開きにした住民達とトリシアやシズル達までが集まっていたのだ。
「皆、俺の、アドビとレーニャさんが手伝ってくれた料理を堪能してくれ!」
一気に店舗のような一階になだれ込むように入ってくる住民達。
「これがエリアス様の分」
アドビがこの家の中にある小さな祭壇の上に食事を置くと、ススススっと窓の外から蔦が伸びて食事を器用に掴むと、そのまま空高く持ち上げて消えて行った。




