(11)住民達と
「あぁ、遅かった!」
トリシア達の所に到着した住民一同は、口々に残念がっている。
「そ、その……顕現して頂くのって大変なのですか?」
その姿を見て、他の神とは色々違うなと感じたシズルは疑問を口にした。
「そうなのよ。エリアス様は急に顕現されて急に消えられるから、なかなかお目にかかれないのよ。だけど、私達の為に必死で加護を与えてくださっているのだから、お忙しいのね。今日は残念だったけれど、次があるわ」
あっけらかんとした表情の女性の話をシズルと共に聞いているトリシアは、自分の太ももを必死で抓って表情に変化が出ないようにしている。
『エリアスが加護で忙しい?フフフフ、寝るのに忙しいのですよ。今だって少し真面目に話をしただけで眠くなったから、急いで布団に戻っただけですよ。加護は一度与えれば追加で何かをする必要はないので、大きな勘違いです!』
心中色々説明しているのだが、さっき口をおさえられてしまったので本当の姿は隠しているのだなと理解したトリシアは、住民達がエリアスに対して抱いている思い、神格化……実際神だが、神々しい隔絶した存在と言う雰囲気を壊さないように口には出さないで我慢している。
「あなた達が新たな仲間ね?これから宜しく!羨ましいわ~、こっちに来て直ぐエリアス様にお会いできるなんて。なんて言われたのか聞いても良いかしら?おチビちゃん達は、あのおじちゃんと木の家を見に行って、好きなお部屋を選んでいると良いわよ」
おじちゃんと指名された男性は少々不服そうではあったが、五人の子供を見ると笑顔を見せて一緒に歌を歌いながら家に向かって行った。
その姿を見ながら心にゆとりが出来ていたアドビは、落ち着いて女性の言葉に回答する事が出来ていた。
「はい。実際直接何かを言われたのは俺ですが……あ、俺アドビって言います。その、俺の料理を楽しみにしているから、毎日作るように……と。それは実際嬉しいのですが、どうやってお渡しするのですか?」
「凄いじゃない!エリアス様からもうお願いされているのね!本当に羨ましい。あっ!そうそう、心配する事は何一つないわよ。非常にお忙しいエリアス様でも、きちんと私達の事は見てくださっているから。必要に応じて上から蔦を使って指示をくださるし、祭壇に物を置いておけば同じように蔦で受け取ってくださるのよ」
『フフフ、布団から一歩も出たくないから無駄に能力を使って物を取っているだけですよ。ちっともお忙しくはありませんよ?でも、そんな状態でもこれだけ信頼されているところは凄いですよね』
一人心中で再び突っ込みを入れているトリシアだが、賞賛すべきところは素直に認められるのが彼女の良い所だ。
「で……あなた様がトリシア様で宜しいですか?」
アドビと同じように、突然話し方が変わった女性。
「はい、そうです。私が天空神トリシアです」
「え?」
この驚きの声はアドビのものだ。
子供達は既に木の家に住民が連れて行っているのでこの場にはいないのだが、アドビだけは残っており、初めてトリシアの正しい存在を知らされて腰を抜かさんばかりの驚きようだ。
「じゃ、じゃあ、兄ちゃんは?神様??」
「いいえ、僕はただの人ですよ」
シズルの一言で一瞬だけ表情を曇らせてしまったトリシアだが、直に優しい笑顔に戻る。
きっと長時間、互いを思って共に行動し深く交わっている影響により、シズルが人ではなくなる可能性について思い出してしまったのだろう。
「ですが、その存在が何でれあれ、トリシアさんはトリシアさん。僕の大切な妻です!」
シズル自身もここまで言い切れるなんて人が変わったみたいだと思いつつも、しっかりと伝えたい事を伝える事が出来て満足そうだ。
「静流様!」
目が完全にハートマークのままシズルの腕にしがみついているトリシアを見て、天空神と聞いて驚きはしたが、そう言えばこう言う人だったなと納得したアドビ。
逆にその姿を目の当たりにした住民達が驚いていたのだ。
その後……木の中を案内されると正に小さな村のような空間になっており、畑、家、井戸、色々取り揃えられているようだ。
今回ここに住む事になる六人、特に子供の五人は注意事項を伝えられている。
この平原の外に出る場合、加護があれば自動で帰り道はわかるし獣や魔獣による危険はほぼなくなるのだが、子供だけで出るのは危険であり禁止とする事。
差し当たり必ず守ってほしい事はこれだけだったようで、子供ながらに少ない制約に安心したようだ。
その間、成人であるアドビには行商人を装っていたセンライから同じような注意事項と共にこのような依頼を受けていた。
「ピュアリーフですが、見てください。あそこにいくらでもあります。あれを使ってエリアス様に食事の作成をお願いします。最低一日一食でかまいませんが、可能であればもう少し作って頂きたいとの事でした。それと、この集落だけでは手に入らないものもありますので、コレと、アドビさんが作られた食事を販売して得たお金で、必要なものを購入してください」
今までピュアリーフを販売したお金と思われるものと、収納袋を渡されるアドビだ。




