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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
植神エリアス

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(7)トリシアの提案

「ワンワン」


「お帰りなさい、トリシアさん」


「お待たせしました、静流様。早く会いたかったです!」


 宿に戻ったトリシアは、部屋に入ると即座に静流に抱き着いている。


 ほんの数時間なのだが、この世界でこれほど長く離れた事がなかったので互いに不安になっていた。


「大丈夫だとは信じていましたけれど、やっぱり心配でしたよ、トリシアさん」


「ありがとうございます、静流様。ですが、成果がありました!魔神の手にかかっていない植神エリアスにあの方々の保護を確約して頂きました」


「え?凄いじゃないですか。エリアス様ですか。凄いですね、流石はトリシアさん」


「フフフ、褒めて頂けて嬉しいですが、全て偶然です。あの場所でのお食事の食材に、エリアスの力を感じたのです。そこでエリアスの事を思い出して調べると、思いの他近くにいたものですから……」


 恥ずかしそうに真実を話すトリシアだが、それでもシズルの凄いと思う気持ちは変わらない。


「明朝あのお店に向かうのですが、丁度その食材……だけではなく他の用途もありますが、ピュアリーフと呼ばれる葉をエリアスの庇護下にある者がこの町に販売しに来るそうで、戻る時に共に連れて行ってくれるとの事でした」


「これで安心……なのですが、相手は僕と同じ召喚者のヨシエがいるヘルナンド公爵、それに今の話では相当貴重な葉っぱを売りに来ている人が連れて行くとなると、結構危ない状況になりませんか?」


「そこはそうかもしれません。ですが、アレでも神ですからその程度は対応して頂けるはずです」


 アレと言われてもエリアスの姿を見た事がないシズルには良くわからないのだが、今まで見た神々は結構だらしがない水神アクアでさえ相当な力を持っていたので、今回も信頼できるのだろうと判断している。


 一抹の不安がなくもないが、一晩仲良く過ごして再びアドビの店に向かうシズル、トリシア、シバ。


「お!来たな。丁度朝飯が出来た所だ。まぁ座ってくれ」


 店の前から良い匂いがしていたのだが、アドビの言う通りに丁度全員分の朝食が出来上がったようで、机の上にはアドビを含めた八人分、机の下にはシバの分がおいてあり、湯気が立ち上っている。


「冷めない内に食べてくれ」


 実はこの料理にも貴重な材料であるピュアリーフが使われておりアドビの手持ちは全てなくなっているのだが、運良くシズルからかなり高額の報酬を得ていたので、今までの感覚的にここ数日以内に来ると思われる行商人から再び購入できる事を喜んでいる。


「それにしても、アドビさんの食事はとても美味しいですね」


「お?兄ちゃん、嬉しい事を言ってくれるな。実は少々特殊な材料を仕込んでいてな。行商人が来て売ってくれるんだが、それが今迄にない味を引き出しているんだ」


「確かに素材の影響もあるのかもしれませんが、最終的には腕ですよね?」


「ウフフ、静流様の言う通りです。とても美味しいです。ねえ?皆さん?」


「「「「「はい!!」」」」」「ワン」


 シズルにトリシア、止めに子供達とシバに褒められて笑顔のアドビ。


「ところで、私から提案があります。皆さん、ミツバ王国ヘルナンド公爵領の隣接地に移住するお気持ちはありますか?」


 そろそろ頃合いだろうと思い、トリシアは今回の解決策を提示し始める。


 五人の子供は無事に生活できればそれで良いと言う思いが強く、詳細が理解できない部分もある上食事に夢中で否定も肯定もしなかったのだが、アドビは少し悩んでいる。


「……俺は、料理人として作った料理を美味そうに食べてもらう事が夢で、必死の思いでこの店を作ったんだ。事情は知っての通りで御覧のありさまだが、そう簡単に夢を捨てる事は決断できない」


 アドビもこの場所に留まっては納税の絡みもあって後がない事は理解しているのだが、今までの苦労が水の泡になる事がどうしても許せずに、どうして良いのかわからなくなっている。


「それに、最近はピュアリーフと呼ばれている不思議な葉の調理方法を探求するのが楽しくってな。今の所その行商人からしか手に入らないらしいんだ。あの手この手で手に入れようとしている連中が多いが、ことごとく失敗しているらしい」


 トリシアは、この言葉を聞いて移住に前向きになってくれる可能性を見出した。


「アドビさん。もし……ですよ?ピュアリーフをどの程度の量をどの程度の頻度で入手されているかは知りませんが、今よりも多く手に入って自由に調理できる環境であれば、移住されますか?」


「ははは、満腹亭のポフルだけではなく領主のヘルナンド公爵まで出てきて争奪するようなピュアリーフ、これ以上手に入るなんてあり得ないだろう?それに、仮に素材が入って十分研究できても、俺の料理を食べてくれる者がいなければ意味がない」


「そこも何とかなれば良いのですね?」


 ここまで言っても引かないトリシア。

 今回の移住提案についてトリシアには全く益のない話であるのだが、親身になってくれている事だけは理解できたアドビは、嬉しいながらも半ば諦めの境地でこう告げた。


「わかった。だけど実際は難しいだろう?丁度この数日の間に行商人が来るから、ピュアリーフの現物を見ると良い。どれほど貴重で希少か見ただけでわかるからな」


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