(2)中継の町
最終目的地であるサンロイア王国までは何回もこのように中継の町や村で宿泊する必要があるみたいだけれど、その場所での名産を楽しめるのも長距離旅行の楽しみの一つだよね!
「明日の朝の鐘が鳴ってから1時間後に出発です。乗り遅れの場合は申し訳ありませんが次の乗合をご利用いただくことになりますので、よろしくお願いします。その場合は、お手元の費用納付証明を提示頂ければ乗る事が出来ますが、優先権はありませんので、満席の場合は更に次の便のご利用となります。その際の連泊費用はお客様個人の負担となりますので、お気を付けください」
御者さんは注意事項を教えてくれると、馬車をこの町の入り口の人に預けた後に指定されている宿に向かって僕達を先導してくれたよ。
本当に一部の人はこの町が目的地だったようで、宿には向かわずに各自がそれぞれの方向に向かって行ったよ。
「静流様、少しお腹がすきましたね。宿で食べますか?それとも散策して食べますか?」
「そうですね。宿に入って食堂を見てから決めましょうか?」
宿に向かう一団の最後尾をテクテクついていく僕達は、また話に花が咲いてしまったので、いつの間にか宿の入り口に到着したよ。
「それでは皆様、ごゆっくりとお休みください。ではまた明朝」
こう言って再びこの町の入り口方面に消えて行く御者さん。
僕達は一旦宿に入って部屋を確認して、食堂にも顔を出して他の人達が食べている食事を見たけれど……特産品と言えるような物はなさそうで、正直食べている人もあまり美味しそうには食べていないように見えるし、折角だから外に食べに行く事にしたよ。
宿を出ると……何故か少し汚い服装の子供達が総勢五人待ち構えており、どうやら生活の厳しい子供達が新たな宿の顧客に対して仕事をさせてくれるようにお願いするために待っていたようだよ。
なんでわかったかと言うと、一気にこんな感じに話しかけられたからね。
「お兄さん、お姉さん、この町の案内は私に任せて!」
「僕も色々と知っているよ。荷物は……なさそうだけれど、明日の朝門の所に行くなら、僕が荷物を持つよ!」
「時間的にこれから食事でしょう?私、良いお店を知っているよ?」
正直、未だ日本人としての意識が抜けきっていない僕はとっても悲しくなったよ。
確かに日本でも厳しい環境の子供はいるけれど、直接ここまでの状態を経験してしまうと、偽善かもしれないけれど何とか助けてあげたいよ。
一時的にお金や食べ物を上げても絶対にダメな事はわかってはいるけれど、一泊しかできない状態でどうやってこの子供達を助ける事ができるのか……
「その、トリシアさん。僕が行きたいと言ったのですが、到着……遅れても良いですか?」
どう考えても一晩で彼等を助ける事は出来ないので、明日の朝の出発は見送る事をトリシアさんに伝えたのだけれど、いつもの通り既に僕の考えは理解してくれていたようで、本当に慈愛の神様と言っても間違いない程の微笑と共に肯定してくれて、いつも以上に腕に絡みついてきてくれたよ。
「じゃあ皆と少しお話したいのだけれど、時間は大丈夫かな?もちろんご飯をごちそうするので、食べながらになるよ。どうかな?」
「「「「「行く!」」」」」
迷いなく答えてくれる五人の子供達。
見た感じ日本で言う所の小学校低学年だけれど、悲しい事に全員が少し痩せているように見えるね。
「じゃあ僕達は良くわからないから、良いお店に連れて行ってね」
こうして、さっきは御者さんの後ろについて行き、今は小さな子供の後ろについて行っているよ。
「ここが私のお勧めだよ!」
最初から僕達に夕食の場所を提案しようとしてくれていた子が少し裏通りにあるお店を紹介してくれたので、全員でお店に入ったのだけれど、裏通りだからか食事時なのに誰も他のお客がいなかったので少しだけ味に対して不安になっちゃったのは秘密。
「いらっしゃい、って、またお前が連れてきてくれたのか?イチ」
「えっと、うん」
ここまで連れてきてくれた子はイチと言うのかな?
「あの、この子達と一緒に食事をさせて頂きたいのですが、良いですか?」
なんでか僕の言葉に驚いている店主さんだけれど、その後は何やら笑顔になってくれたよ。
「そうかい。気の良い兄ちゃんなんだな。そっちのスゲー美人は奥さんかい?お互い見る目があるようだ。ところで、その少しでっかいワンコ、大丈夫だろうな?」
「あ、はい。僕はテイマーですので、安心してください」
こうして誰もいなかったお店に僕達がなだれ込んで、全員で楽しく食事をする事が出来たけれど、彼等の事情を聞くとやっぱり悲しくなったよ。
この場の五人は全員孤児で、このお店の店主さんの好意で餓死は免れているみたい。
その恩返しでお店を紹介したり、少しでもお金を得ようと自分達で仕事を得るために宿の前に毎日顔を出していたりしたみたい。
これは思った以上に解決が難しいかもしれないよ。




