(1)出立
ソルバルトさんから聞いた情報によれば、この世界には地上、地下、空で生活している人達がいるみたいなので、空には是非行ってみたいと思っているよ。
だって、見た事のない場所って凄く興味がわきません?
思わず“空”の部分に食いついてしまった僕を見て微笑んでいたソルバルトさんは行き方だけ教えてくれたけれど、それ以外は自分も行った事が無いので教えられる事はないと謝られてしまったよ。
「トリシアさん、その……僕、是非とも空に住んでいる一族の国に行ってみたいです」
「そうですね。静流様の世界にはない場所ですから、行ってみましょう!」
でも簡単には想像できないよね?
どうやって空で生活するのか……住んでいる人達は、きっと空を飛べる人達だよね?
あ~、早く着かないかな?でも空気が薄すぎたらどうしよう?
……ゴトゴト……
僕達はソルバルトさんから教えてもらった空の国サンロイア王国に向かうべく、乗合馬車に乗っているよ。
良い人も沢山いたけれど、面倒くさい召喚者の四人や付き従っている人達、岩井先生のいるミツバ王国とも本格的にこれで漸くさようなら!
もちろんこのままこの馬車が空にあるサンロイア王国に向かうわけではなくて、地上との唯一の繋がりがある場所に向かっているのだけれど、その地上部分もサンロイア王国の領地みたい。
それはそうだよね。
他国と交易するにも、交流するにも、地上で何かしらの動きをする必要がある訳で、その場所が他国領であれば問題も多いだろうしね。
「それにしても……トリシアさん。馬車って思った以上にお尻が痛いですね。動けないからそうなり易いのかもしれませんが、他の方達は良く我慢できていますね」
だって馬車は微妙に揺れ続けているので変に席から立ち上がる訳にもいかないし、その振動のせいで余計にお尻は痛くなるし、正直この世界の長距離移動手段を舐めていました。
先日のソルバルトさんの馬車は創りが良かったのか、日数が短かったのが良かったのか、はたまた荷台を自由に動けたからか、あの時はこんな事を思わなかったのにぃ~!
僕の苦しみをわかってくれたのか、トリシアさんも少し心配そうな表情で僕を見つめてくれているよ。
乗合馬車だけに他のお客様もいるわけで、その人達は慣れているのか目を瞑って我慢……ではなくてきっと眠っているのかな?
他には貧乏ゆすりをして気を紛らわしている……ではなくて、なんて言ったかな、そう!きっとエコノミー症候群にならないように本能的に足を動かしている人もいるし、色々だけれど、僕のように痛そうにしている人はいないね。
「確か次の休憩ってまだまだのはずですよね?」
「はい。次は夕方まで一気に移動するとの事でしたから、残念ですが暫くはこのままかと……」
こうなったら、僕は一旦荷馬車から降りて並走する形で歩こうかな?
身体強化を自由自在に使えるようになっているので、速度に余裕でついていけるしスタミナも問題ないからね。
雨が降っていたらちょっと尻込みしたかもしれないけれど、今は天気もよさそうだし良い気晴らしにもなる上お尻のダメージもなくなる!良い事だらけだよね?
良し、そうしよう。
……と言うわけで、こらえ性のない僕は仮に遅れても馬車は止めないと言う条件付きではあるけれど、馬車の後ろを歩いてついて行く事にしたよ。
御者さんは突然僕が軽く走る程度の速度ではあるけれど、並走してそのような事を言い始めたから少し驚いていたように見えるね。ごめんなさい。
で、僕がそうするとトリシアさんも同じ行動をとる訳でそこは非常に申し訳なかったけれど、トリシアさんも疲れ知らずだし、場合によっては僕がおんぶして走っても良いので、問題ないかな?
シバ?もちろん最初から軽々と僕達の馬車の後ろをついてきていたよ。
乗合馬車に乗っている人達は僕とトリシアさんが追うように軽く走っているのを見ているので心配そうな表情だけれど、全く問題ありませんよ!ご心配をおかけして申し訳ありません。
「トリシアさん、つき合わせて申し訳ありません。でも、僕のお尻は限界だったのです!」
「フフフ、私は静流様と楽しくお話ししながら移動できる事がとてもうれしいですよ」
確かに乗合馬車の中では、近くの人の迷惑にならないかが気になってあまりしゃべる事が出来なかったからね。
他のお客様の心配そうな表情をよそに、僕達は楽し気に会話を続けながら軽く走っているよ。
結局息を切らす事もなく、一定の距離を保ったまま今日の目的地の宿まで到着出来ちゃった。
「楽しくお話ししていると、時間はあっという間ですね、静流様!」
「そうですよね。お尻の痛さを我慢していた時はすっごく長く感じましたけれど、降りてからはあっという間でした!」
御者さんも含めて全員が信じられないと言う表情をしていたけれど、そこについては無視させて頂きます!




