(13)(閑話)妻のトリシア
私は天空神のトリシアです。
そして……静流様の、つ……妻のトリシアです。
ウフフフ、妻。妻ですよ?なんて素敵な響きなのでしょうか!
もう天にも昇る気持ちです……って、私は天空神なのでいつでも天に昇れますけれど、そう言った意気込みとでも申しましょうか、ご理解いただけると嬉しいです。
ですが、この伝えきれない嬉しい気持ちとは裏腹に、静流様には伝えられていない事実が一つあります。
その事が長く新婚旅行と言う形で共に楽しく過ごさせて頂いている私の心に、唯一重くのしかかっているのです。
少しだけ説明させて頂いても宜しいでしょうか?
悩みは吐き出せば楽になると聞いた事がありますので……申し訳ありませんが、聞いて頂けると幸いです。
実は私達神は、あの魔神に制約を受けて自由を奪われる前から、人の前に顕現する事は控えておりました。
それには理由がありまして、神である隔絶した力を持つ存在が安易に人前に出てしまうと、大きな影響があると考えられているのです。
以前神として長く存在している地神バラドスに教えて頂いたことがありますが、何でも無意識下で漏れている神力とでも言うのでしょうか?その力を吸収して過剰とも言える力を得てしまう可能性があるそうなのです。
それは人だけではなく獣、植物、ありとあらゆるものに影響を与える可能性があるらしいのですが、通常であればそのような事はあまり起きないとも教えてくれました。
神として何かを意識して、その対象も神を大きく意識している時に起こりやすい……神力の授受に対する親和性が高くなった時に起こる可能性が高いとの事でした。
ですので、今までの鬱憤を晴らすかのように顕現している水神アクアも、そのうち顕現回数は減ってくるのではないでしょうか?いいえ、あの様子を見る限り、そのような気配は感じる事はできませんが……
与える影響は対象の力が増す良い方向ではあるので、それ程気にする必要はないのかもしれないと地神バラドスが付け加えてくれていましたが。
それで……問題なのは水神アクアではなく私です。
嬉しい事に私は静流様の妻です。
そう、妻。
つまり……って、洒落を言っているわけではありませんが、私は静流様を深く想っておりますし、静流様からの愛も感じて幸せに過ごす事ができております。
これは私が静流様を意識し、静流様も私を強く意識してくださっている事に他なりませんので、アクアと共に酒盛りをされている方々とは繋がりの次元が全く異なるのです。
毎日共に行動させて頂いているので、静流様は召喚者と言う立場を差し引いても明らかに力が増大しています。
もちろん静流様ですからその力を悪用する事は絶対にないと断言できますが、明らかに私の神としての影響を強く受けているのです。
ですが、私の心配はそこではありません。
地神バラドスはこうも言っていたのです。
神との親和性が高く、その影響を受け続けたものはその存在が変化する事がある……と。
当時はその事について深く考える事もありませんでしたので、それ以上の知識を欲する事もせずに半分聞き流しておりました。
まさか私がこれほど幸せに過ごせるとは想像もしていなかったのです。
これからこっそりとバラドスに知識を与えてくれるようにお願いするのもありかもしれませんが……私が懸念しているのは静流様の存在に変化が訪れてしまうかもしれないと言う事と、その結果私との関係がどうなってしまうかと言う事です。
私のせいで人ではなくなってしまう可能性があるのです。
それを避けるには……静流様への想いを断ち切る事などできませんので、私が静流様の元を去る他なく、とても自分から伝える事が出来ないのです。
人ではなくなってしまう可能性がある事を伝える事すらできていない私……静流様の元を離れたくないので言えない私。
もう、どうすれば良いのかわかりません。
毎晩静流様の寝顔を見るたびに不安と悲しみが襲い掛かってくるのです。
唯一の救いは、共に行動させて頂いている時にはあまりの楽しさ、幸福感からその感情が出てこない事でしょうか?
こう考えてみると、私って神のはずなのに自分勝手ですよね。
わかってはいるのですが、どうしても嫌われてしまう可能性や静流様から離れなくてはいけない可能性の事を思うと、一歩が踏み出せないのです。
皆さん、私はどうすれば良いのでしょうか?




