(10)コステル伯爵領
「いや~、道中何もなくて良かったですよ。余計な心配だったようです。ここまでありがとうございました。私は早速あの村の事を報告するとともにランドフィッシュを納品してまいりますので、ここで失礼させていただきます」
二日後、荷馬車に危険が迫る事は一切なくコステル伯爵の城下町に到着した僕達は、ソルバルトさんからお礼と共に事前に聞いていた報酬を頂いたよ。
「ありがとうございます。確かに受け取りました。では僕達もここで失礼します」
「二日間、ありがとうございました」
「ワンワン!」
こうして別れた僕達は、初めての町を散策する事にしたよ。
「静流様、是非とも美味しいご飯を食べましょう!」
「そうですよね。それと、何か楽しい事があるのか……あっ!失敗しましたね。ソルバルトさんに特産とか名所とか聞いておくべきでした!」
こんな事を話しながら、とりあえず情報を得るにはギルド!と言う事でギルドに向かう事にしたよ。
城下町に入ってすぐの所に立派な看板があったので場所はわかるからね。
「それにしても、ミルソ公爵家。思った以上に質が悪いですね、静流様」
「確かにそうですね。今回のソルバルトさんの襲撃もショージの命でなく公爵の命だと言うのだから、どうしようもないですね」
ソルバルトさんは予想していた襲撃が一切ないと安心していたのだけれど、真実はシバが少々街道から離れて行動した際に全てを無効化してくれたからで、変に恐怖心を与える必要もないと思って報告していないんだ。
襲い掛かろうとしていたのはミルソ公爵家お抱えの、僕と同じテイマーのジョブを持っている人達。
きっと制御下におかれた魔獣による攻撃であれば、襲われた痕、万が一の目撃者の対策もし易いだろうと思ったのだろうね。
その人達は今どうしているかと言うと……トリシアさんの補助のおかげで楽に眷属を手に入れた僕には理解できない程の苦労をして手に入れたはずの魔獣の制御を外させてもらって、放逐したよ。
もちろん僕達の見た目では大した脅しにはならない事は理解できているので、シバが制圧した後にソルバルトさんにバレないように夜にこっそりと移動して、少しだけサイクロプスを召喚して威圧してもらった上であの村やソルバルドさんに余計な事をしたらどうなるかわかるよね?と言う優しいアドバイスをしてあげました。
僕とは違って普通のテイマーは自分との絆を作るか強制的に屈服させるかして使役する必要があるらしいのだけれど、テイマー自身にあまり力がないので、屈強な魔獣を使役するには運良く瀕死の魔獣を見つけて絆が生まれる事を期待するか、幼い頃から育てるかしかないみたい。
その場合でも、魔獣の本能によって使役できる前にテイマーが攻撃されて致命傷を負う可能性も高いらしいので、結構強そうに見えた魔獣を僕が強制的に奪ってから制御を外して自由にさせたのを見て茫然としていたね。
僕の力に茫然としたのか、サイクロプスの姿を見て愕然としたのか、苦労して手に入れた自分の戦力を失った事に茫然としたのかはわからないけれど、自業自得と言う事で諦めてください。
サイクロプスを神国アクアに送還する時には、特段異常があって召喚したわけではないと言う説明の手紙と共に送還しておいたよ。
実はこの手紙によって、少し距離はあるけれど神国アクアの隣接地であるあの村の大きな助けになるとは、この時は思ってもいませんでした。
「静流様、着きましたよ?」
せっかくの交流の機会もあるし、探す事も楽しみの一つなので敢えて力を使わずにいるトリシアさん。
本気になれば美味しそうなお店がどこにあるかなんて直ぐにわかってしまうけれど、それだと旅の楽しさも半減しちゃうからね。
僕と同じ価値観で行動してくれている事が凄く嬉しいし、何倍も楽しく過ごせるから言う事ないよね。
「ここのギルドも、あまり変わりはないですね?静流様」
「そうですね。やっぱり視線が気になるところも同じですね」
ここはそう言うものだと諦めて受付に向かって、宿、食事、そして観光の出来る場所を聞いてみたよ。
受付の人は僕達のカードを見て何か良い依頼でも探しているのかと思ったようで、僕達が依頼とは全く関係のない事を聞いた事に驚いていたみたい。
でも親切に色々教えてくれて、ありがとうございました。
「ここがお勧めの食事処ですか。確かに良い匂いがしますね、静流様」
「ワンワン」
シバも抑えられないのか、早く早く!と言わんばかりにくるくるその場を回っているよ。
「何と言うか、不思議な食べ物です」
僕は日本で食べた事のない味に感動しちゃったよ!流石はギルドお勧めの食事!!
外観はあえて似ていると言えば天ぷらのようで……噛めば少しずつ解れるのだけれど、その味の変化が色々な物を順番に食べているみたいで、全く違った味が連続して口の中で暴れている感じだったよ!
その全ての味がとても美味しくて、何回もお代わりしちゃったよ!




