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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
再びの旅

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(9)ソルバルトと共に

 ステールさんに促された行商人の人は、僕達に笑顔を向けてくれているよ。


 お約束でトリシアさんを見て一瞬固まったけれど、結構な年の方のようで達観しているのか、それだけだったよ。


「始めまして。私は長く行商人をしているソルバルトです。実は、かなり前には一回だけランドフィッシュを食べさせていただいた経験があり、その残りを私の拠点の町に卸した所、その味を知っている方からは矢のような催促を受けていたのです。ですが、手に入ったのは何の偶然かその一度きりでしたので。以降川の水は濁るばかりで一切釣果は出ないので期待できていなかったのですが……」


 ソルバルトさんの説明に食いついたのは、何故かこの人に話をするように勧めたステールさん本人だよ。


「そうそう、親父の言う通りあの一匹はまぐれ。天の気まぐれだったんだな。で、少し前から川が相当綺麗になって、何か良い前触れなのかと思って釣りを始めたわけだ。色々餌を試したが、肉の食いつきが良いのはわかったんだが、いかんせん食われるだけだったからな。そこに救世主のランドフィッシュマスターが……」


 環境が激変した嬉しさからか、思い出話が始まっちゃったみたい。


 何回も聞いた話だけれど、その魔獣の肉も周囲に危険な魔獣がいない代わりに入手も結構難しく、地中に潜って夜に地上の作物を少々齧る魔獣を捉えるべく罠を仕掛けて入手できた魔獣、後はただの獣を狩ってその一部を餌として使ってみたって事だったよね?


 あまりにも長々と感慨深げに話すステールさんを制するように、わざとらしい咳払いをして主導権を握りに行くソルバルトさん。


「こほん。で、その幻の魚が獲れる事を既に領主も耳にしているとの事ですので、この村と親交があると知られているはずの私の道中に危険がある可能性があります。ですから、私の拠点の町までの護衛をお願いできませんでしょうか?」


 確かにショージの騎士がここに来たのは、領主にランドフィッシュの事が知られていたからだよね。


 この村に関しては脅しをかけたから安全だとは思うのだけれど、間違いなくランドフィッシュを取引していると判断されているソルバルトさんを襲うと言う所までは頭が回りませんでした。


 流石はステールさんだね。


 僕はチラッとトリシアさんを見るのだけれど、いつもの通りに優しく微笑んで頷くだけなので、僕に全てを委ねてくれているね。


「一応確認させていただきたいのですが、目的地は神国アクア方面でしょうか?」


「あぁ、一度行ってみたいとは思っております。何でも湖が復活した上に神が顕現なされるとか。その余波でこの川も綺麗になったのかもしれませんね。ですが、残念ながら私の拠点は逆方面です」


 流石は行商人だけあって、噂話はきっちりと耳に入っているみたい。


 別に目的地が神国アクアでも同行はしたけれど、どうせなら元の場所に戻るよりも新たな場所に行けた方が楽しいかな?と思って聞いただけだからね。


「わかりました。僕達が護衛させていただきます。ソルバルトさんの拠点の町はどこなのでしょうか?」


 聞いてから思ったのだけれど、僕って町の名前を聞いても何もわからないよね?

 でも、良いや。


 領主が誰か位まで聞けば、どれくらい面倒ごとが起きそうかも想像できそうだからね。


「私の拠点は、コステル伯爵領の城下町になります。実は、かなり前のランドフィッシュを試食された方と言うのは、コステル伯爵なのですよ」


 聞いた事のない名前なので、召喚者であるあの四人とは全く関係のない人のようで安心できたよ。


「今回これだけ大量のランドフィッシュが入りましたから、お喜びになるでしょう。唯一残念なのは加工肉しか食べられない所ですが、それでも極上の味ですから」


 ここからソルバルトさんの拠点までは馬車で二日かかるらしく、冷却技術のない状態で生のまま持ち運ぶと腐ってしまうので、加工した状態で持ち運ぶしか方法がないみたい。


 僕達が使っている収納魔法は生のまま保存して全く問題ないのだけれど、そこは秘匿と決めているから仕方がないよね。


 きっと伯爵様の立場であれば、何とかこの世界の魔道具を駆使して冷却運搬できるようにしてくれそうな気がするし……ひょっとしたら収納魔法を使える人が所属している可能性もあるからね。


「それではお二方、明日早朝に出発で宜しいでしょうか?」


 こうして僕達は明日の朝にこの村を出て、ミツバ王国のコステル伯爵が治める城下町に向かう事になったよ。


 翌朝の出立時には村人総出と思われる程の見送りを受けて嬉しかったのだけれど、ランドフィッシュマスターと連呼されたのは恥ずかしかったです。はい。


「シズルさん、トリシアさん、きっとあの村はすぐに町と言えるほど栄えますよ。私も油断していると他の行商人に太いパイプを築かれてしまいますから、今まで以上に必死に仕事をしないといけませんね」


 優しい笑顔でこう言っているソルバルトさんだけれど、少し見ただけでもあの村との深い絆があるのがわかるので、口で言っている程の事態にはならないのではないかと思っているよ。


 こうしてあの村を後にして、のんびりと二日間の馬車の旅を始める僕達。


 シバは運動不足気味だったのか、馬車には乗らずに馬車に並走したり時折街道から外れる方向に消えて行ったりと、激しく動き回っていたよ。


 実は少し心配していた野営時の桶のお風呂……流石にソルバルトさんの前では大胆な行動に出る事のなかったトリシアさんに安堵しました。


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