(6)騎士達
「は?あの川に領主一行が来ているっていうのか?」
「領主一行と言うよりも騎士達のようですが、そうみたいですね」
トリシアさんと僕の会話を聞いていたステールさんは、なんで距離がある川の事を把握できているのかについては何も聞かれなかったけれど、騎士達がランドフィッシュを乱獲しようとしていると言う部分だけが耳に残って相当怒っているみたい。
「あんのクソ領主!あの川の汚れた状態が改善されないと知った時に、所有権をこの村に移したはずだぞ!将来を見越して高い金で買い取ったのに、それがお宝が獲れるとわかったとたんにこれか!急ぐぞ」
ズンズンと先を進んでいるステールさんだけれど、スキンヘッドが真っ赤になって良い道導になるな……と思ってしまいました。
ごめんなさい。
「静流様……フフフ」
トリシアさんにはお見通しのようで、微笑みながら僕の腕を抱えるようにしがみついて歩いているよ。
「おい、お前等何をしていやがる!ここは、この川周辺は俺達村に所有権があるはずだ!」
トリシアさんの言った通りに川周辺ではどう見ても騎士が数人いたので、怒りのまま怒鳴り散らすステールさん。
そう言えば僕達も勝手に釣りをしていたけれど良いのかな?今の所怒られていないし、良いよね?でも、とりあえず落ち着いてもらおう!
「ステールさん、落ち着いてください。どう見てもあの人達、相当な目にあったようで疲れ果てていますよ」
僕達は何があったのか知っているけれど、ステールさんはトリシアさんの説明を良く聞いていなかったようで現実がわからないようだけれど、とりあえず落ち着いてもらおう。
僕の言葉を耳にして、騎士達が座ると言うよりもへたり込んで肩で息をしているのに気が付いたステールさん。
「お前等、何をしていやがる!もう一度言うぞ。ここは俺達村民が所有している場所だ。いくらランドフィッシュが獲れるからって勝手に得ようとするなど、恥を知れ!」
騎士達の情けない状態を見て少しだけトーンダウンはしているけれど、それでも言うべき事はきっちり伝える事ができるステールさんは流石だね。
騎士達は疲労困憊なのか誰も何も言えずに、唯々肩で息をしているよ。
「ふんっ、騎士のくせにコソ泥紛いの事をしやがって」
そう言って対岸に向かうと、気を落ち着かせて針に肉を刺して川の中に沈めると……
「お!もう来たぜ。だが、これからが本番だ!」
少し大きめの肉を餌にすると食いつきが良いのは以前から知られていた事だけれど、食いつかれて逃げられる事が多すぎるためにそうそう肉を餌に使う事が出来なかったみたい。
でも、この針さえ上手く行けば相当な確率で吊り上げる事ができるので、普通に肉を餌にできるよね。
そうこうする事十分程度?
糸が切れないように調整しながらも、難なくランドフィッシュを釣る事に成功したステールさん。
落ち着いて針を外して、異常がないかを確認した後に僕達に針を見せてくれたよ。
「これで大丈夫なのか、念のために確認してくれるか?」
相当緊張している事がわかる表情だけに、僕も緊張しちゃったよ。
結果は問題なし!
トリシアさんに鑑定してもらっても損傷もないので、完璧です!
「大丈夫ですよ、ステールさん。おめでとうございます。これでランドフィッシュを毎日提供できるのではないですか?」
僕の一言で一気に緊張がほぐれたのか、長い息を吐くステールさん。
「そうだな。何もなければ……だが」
そう言って騎士達を睨みつけているので、僕もその存在を改めて認識したよ。
いつの間にか僕も緊張していたようで、すっかりと騎士の事は忘れていたから……
再び川を渡って騎士の元に向かうと、騎士達は少し動けるようになっているみたいなので話をする事にしたよ。
「で?お前等公爵家の者だな?何をしていやがる。変な言い訳はいらねーぞ」
ステールさんって、結構怖い人なのだろうか?
騎士にこれだけ凄みを出せる人、それも領主で間違いなさそうな公爵家の騎士にこれだけ言える村民って……
騎士も命の危険から回避した疲労のせいなのか、ステールさんに飲まれているね。
「お、俺達は本当にランドフィッシュが生息しているのかを調査しに来ただけだ」
「ほ~、投網まで準備して調査?どれだけ根こそぎ獲って行くつもりだったんだ?」
「い、いや。広範囲で捕獲を試みないと、個体数が少なかった場合には本当に生息しているかわからないだろう?」
確かに納得してしまいそうな言い分ではあるけれど、そんな言い訳がステールさんに通じるかは別だよね。




