(4)食事
いよいよ夕食の時になり食堂に向かうと、ランドフィッシュだと勧められたものを口に含む……
「!?確かに、これは凄く美味しいです!」
「本当ですね、静流様。あの場所での美味しさもありましたが、技術のある方が調理するとこれほど変わるとは思ってもいませんでした」
お世辞ではなく、本当に美味しいので思ったままを口にする僕とトリシアさん。
シバは、これ以上ない程に高速で尻尾を動かしてランドフィッシュにかぶりついているよ。
「へへへ、そう言ってもらえると俺も嬉しいぜ」
何故か同じ席にいるのは、この宿の主人であり僕達が針を提供したステールさん。
調理場担当の奥さんは今が一番忙しい時らしく、この場にはいないよ。
「えっと、ステールさんはお手伝いの方は大丈夫なのですか?」
「ん?アハハハ、俺が料理や配膳ができるように見えるのか?」
こう言われてしまっては、これ以上何も言えないよね?
「だが、本当に良いのか?コレを竿ごともらって」
「はい。僕達はまだいくつか持っていますし好きに作れますから、村の発展に繋げて頂けると嬉しいです」
「くぅ~、泣かせる兄ちゃんだな。俺の奥さんに勝るとも劣らない美形を連れているしな。この村の領主に爪の垢でも煎じて飲ませたいところだ」
あれ?不穏な言葉が聞こえたよね?
この村の領主って極悪な人なのかな?
「えっと、ステールさん。この村の領主様って、あまり良くない人なのでしょうか?」
「おっと、美味い飯の時につまらない事を口にしたな。まぁ、想像通りだ」
あまりこの話をしたくなさそうなので、話題を変えるべきかな?
「そう言えば数日前から川の水が綺麗になったと言っていましたが、あの川って汚かったのですか?」
「ん?あぁ、そうだな。とは言え顔をしかめる程に汚い状態ではないが、今と比べると雲泥の差だな。噂によれば、ミツバ王国のどこかに水神様が顕現なさって水質改善をして下さったそうだ。その影響が出たと専らの噂だ。そうだ!二人は旅をしていたから、俺達よりもそのあたりの情報を持っているんじゃないか?」
水神様の情報は誰よりも知っていますけれど……そうですか。
水神様はあの湖を復活させるだけではなく、近隣の水質も徐々に改善してくださっているのかな?
僕達は普通にテクテク歩いているのでどう見てもミツバ王国の領地からは出ていない可能性が高いから、水神様の影響は大きく受ける位置にいると思うんだよね。
「水神様がとある湖を復活・維持されていると言う話は聞いていますが、それ以外には何も聞いていないですね」
「そうか。まっ、俺達としては川が綺麗になってくれたのはありがたいから、その原因が何かを追及するつもりはないけどな」
こうして食事は終わり、いつの間にかいなくなっていたステールさんの代わりに他の人が座って食事をしていたよ。
結構繁盛しているらしく周囲を見回すと席は埋まっているので、ステールさんはこれを見越して席を外したんだね。
で、僕達の目の前に座っている女性二人の話を聞くと……
「もう本当に嫌になっちゃうわ。なんでこんなに税を取らなくちゃいけないのよ!」
「そうよね。ここの所ミツバ王国の評判が一気に悪くなって衰退していると聞こえて来たけれど、本当みたいね。これだけ報酬をカットされると、他の国に行きたくなるわ」
どうやら冒険者の二人は報酬を随分とカットされているようで、怒っているように見えるよ。
「でも、私達も辛いのよ?冒険者には睨まれて……別にその分私達の懐に入っているわけじゃないのに!」
あれ?僕、勘違いしていたみたい。
一人はギルドの職員さんかな?仲が良さそうな二人が愚痴を言っているのを聞いている限りではここはミツバ王国らしく、領主の指示で税金が上がったみたいだね。
徴収するギルド職員の人や、徴収される冒険者の立場で文句を言いあっているよ。
どうやらミツバ王国が神の怒りを買ってしまったと噂になっているようで、二人共に神国アクアに移住しようかと真剣に話をしていたよ。
二人は友人らしく、休暇で神国アクアに向かう最中にこの村に立ち寄っただけみたい。
でもアクア様って、あのだらしがな……少し人間味溢れる姿を見る限りではそれ程影響力があるとは決して思えなかったけれども、やっぱり神様って凄い!
「本当、頭に来ちゃうわよね。それに偉そうなショージとか言うミルソ公爵家の男!この間なんて、私の所に来て食事に誘ってきたわよ!」
「うわ、最悪!」
あれ?どこかで聞いた事のある名前が聞こえてきましたよ?




