(1)旅路での出来事(シズル視点)
「トリシアさん、水神アクア様は楽しく過ごせていますかね?」
「フフフ、アクアの事ですから羽目を外していると思いますよ。ですが、腐っても神。湖や国家を守っている事は間違いありません、静流様。それに今回は地神バラドスも動いてくれましたし、今後は何かあれば互いに協力できると思います」
僕の何気ない一言でも、安心させるような答えをくれるトリシアさんは最高です!
こうして神国アクアを後にしている僕達は、相変わらずトリシアさんが進みたいと思った方向に向かってテクテク歩いているよ。
今の所制約から解放された神様は、天空神トリシアさん、地神バラドス様、水神アクア様で、残りは空神スカイ様と獣神ビート様。
新婚旅行を続けるとともに、早い段階で制約から解放できれば良いな。
「あ!静流様!!彼方に川が見えますね。行ってみましょう!」
僕の手をとって嬉しそうに早足で進むトリシアさんを追うように、シバも周囲を軽く警戒しつつも嬉しそうに尻尾を振っているよ。
川辺に着くと対岸で釣りをしている集団が見えるので、ここで遊んでは魚が逃げると申し訳ないから、僕達も釣りをする事にしようかな?
「静流様、はいどうぞ!」
僕の表情を読み取って、対岸から見えないような場所で収納魔法から釣り道具を取り出してくれたトリシアさん。
「ありがとうございます。トリシアさん、どちらが最初に釣れるか、勝負しませんか?」
「ウフフ、楽しそうですね。受けて立ちますよ、静流様!妻として本気でいかせていただきます!」
……チャポン……
気合十分なトリシアさんだけれど、糸を垂らして待つだけなのでゆったりとした時間が流れているよ。
トリシアさんは僕の隣に座っているけれど、目は真剣そのもので浮きを見つめているのが何となくおかしくなって、微笑ましい気持ちになるよね。
「む~、お魚さんはどうしたのでしょうか?あちらの方達も釣れていないようですが。川の中にお魚さんの気配……はありますね。お腹いっぱいなのでしょうか?」
釣れそうな気配すらないので、川の中の気配を確認したトリシアさん。
時折針を確認して餌が付いているのかを確認しているのだけれど、啄んだ気配すらないように見えるね。
僕の針もだけれど……
「こうなったら、餌を変えてみましょうか?静流様」
トリシアさんはあまりこう言った事の知識がないので僕の知識によって小さい虫を餌にしているのだけれど、そもそも餌の選択が間違っている可能性があるよね。
流石はトリシアさん。
僕も未だ日本の常識に囚われている事に改めて気づかせてもらえたよ。
「フフ、静流様は何にするのでしょうか?ここが勝負の分かれ道ですね」
本当に楽しそうなトリシアさんを見られて、僕も凄く楽しくなっているよ。
「僕も負けませんよ?でも、あの餌でダメだとすると、餌の大きさも合っていない可能性もありますね」
こうして選んだのは、トリシアさんは今迄と同じような小指の先程に小さくした昆虫のような魔獣。
僕が選んだのは、もう少し大きくした魔獣のブロック肉を餌にしてみたよ。
トリシアさんによれば気配を察知した魚は多種多様な大きさがいたようなので、餌の大きさはどちらが正しいかはわからないまま勝負を続けたよ。
「あ!?来ました!来ましたよ!!」
「僕もです。負けませんよ、トリシアさん!」
さっきとは打って変わってすぐに餌に食いついてくれたようで、対岸の人達もびっくりしているように見えるよ。
でも、今はトリシアさんとの勝負に集中!!
僕の方が少し大きな餌にしていたので糸も強度を上げておいたのだけれど、相当大物なのか、糸が気になって一気に引き上げる事が出来ないよ。
「ウフフフ、静流様!私の勝ちですね!!」
僕が慎重に竿に力を入れている所で聞こえてきたのは、してやったり!と言った雰囲気のするトリシアさんの声。
その後僕も釣り上げたのだけれど、大きさだけは圧倒的に僕の方が勝っていたよ……って、勝負は負けましたけれどね!
その様子を見ていた対岸の人達も僕達が餌を変えていた事は見ていたようで、徐々に針には引っかかっているようだけれど、何故か上手く釣れていないみたい。
「静流様、なぜあれほど釣れないのでしょうか?」
火を熾して釣った魚を皆で食べながら、あと一歩で釣れそうなのになかなか手元まで魚を上げる事が出来ない対岸の人達を見て歯がゆそうにしているトリシアさん。
シバは魚が美味しいのか、ハグハグ魚を一心不乱に食べているよ。




