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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
その後の神国アクア

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(9)国王襲来

 水神アクアが頻繁に顕現すると言う噂……その話を幾度となく複数のルートから聞かされたミツバ国王は、最早噂ではなく事実と認めるしかなかった。


 その上でミツバ国王がこの場に来たのは、厳重な警備を物ともせずに王都の円卓の席に突然現れていた青目、青髪の女性が超常の存在である事は一切疑っていないのだが、その女性が水神アクアであるかどうかの確認をしたかったのだ。


 あの時はほぼ一方的に指示されるだけで会話も何もあったものではなかった為、その存在が何者であるかの確認もできなかったからだ。


 ミツバ国王は円卓の場での出来事の後に考え抜いた結果、仮にあの青目青髪の女性が神であるならば、一度国王として正式に面会してミツバ王国の王都にも定期的に顕現して頂いた上で、水の加護を貰えるように交渉するつもりだった。


 アクアが王都に乗り込んだ事は知らないユベルはミツバ国王の狙いなどわかる訳もなく、単純にアクアの情けない姿を見せたくないと言いう思いと、面倒ごとに巻き込みたくないと言う思いから面会の申し出を柔らかな口調ながらしっかりと拒絶する。


 一瞬殺気立つ近衛騎士やミツバ国王も、この場にいるサイクロプスの視線が完全に自分達に向いている事は嫌でもわかるので、強く反撃する事が出来ない。


「そ、それは……いや、多少ボロの宿でも構わん。聞けばかなりの頻度で顕現していると言うではないか。いくら多忙とは言え、お目通りする時間位は作れよう?」


 なかなか引き下がらない態度の国王を見て、貴族でも何でもなかったユベルは腹芸などできる訳もなく、思った事をそのまま口にしてしまう。


「無理だと思いますよ。アクア様はミツバ王国の王侯貴族とお会いする事は無いでしょう。この先永遠に。例えどれほど時間があったとしても……ですね。覚えていないのですか?四大公爵とその子息、息女、更には王国所属の近衛騎士までがこの国に来た事を。その時の事がありますから……はい、この話はここまでですね」


 自らも指示した出来事である為にこれ以上無理強いする事は出来ないミツバ国王。


 如何せん神どうこうよりも、目の前のサイクロプスの威圧が徐々に増しており、恐怖によって何かを考えたり口にしたりすることが出来なくなり始めている。


 当然ここまで豪華な馬車を牽いてきた訓練されている馬も嘶き始め、不穏な空気が流れ始める。


「では、私達も忙しいのでこれで失礼しますよ」


 忙しい理由とは宴に参加する事なのだが、ミツバ国王のその様子を見たユベルは、これ以上は何も話す事は無いとばかりにこう告げた後にさっさと門に入って消えていく。


 この場に残される形になった国王とお付きの者、そしてユベルの護衛として同行していた犯罪奴隷の立場ではあるが国民でもあるアッサムとテイマーのポッシャラ。


 残りの魔術師や戦士は引き続きギルド近くまでユベルを護衛するために、ユベルと共に門の中に消えていった。


「サイクロプスの旦那、もう大丈夫ですぜ」


 アッサムの一言で、視線は動かさないが圧は霧散した為に一気に楽になったミツバ国王一行。


「あっしらの国主の言う通りでやす。それ以上でもそれ以下でもないでやす。では、お帰り頂けやすか?」


 犯罪奴隷の首輪をしている男に<帰れ>と言われている国王や近衛騎士達の怒りは相当なものなのだが、どう見てもサイクロプスはこの男の命令を聞いていた為に、アッサムを睨みつけると国王は馬車に乗って騎士と共に帰って行った。


「サイクロプスの旦那、お疲れでやす!」


「グォ」


 このやり取りは、神国アクアは未だに移住が増えている関係上門にも結構な列が出来ているので、相当な数の人々に見られている。


 行商人もいれば冒険者、普通の民、数多くの人に見られていたので、この噂もアクア顕現の噂と同じようにありとあらゆるルートで拡散された。


 つまり……ミツバ国王が神国アクアの入国を一刀両断に断られてスゴスゴと尻尾を巻いて帰国したとの噂が出回ったのだ。


 ミツバ国王が以前に神国アクアの国家元首であるユベル殺害の依頼を出していた事は噂になっており、そこに水神アクア顕現の噂が頻繁に流れた後に独立を認める書状を公開したとの噂が流れた。


 そこから容易に推測できる事実は、ミツバ国王が神の怒りを買う事を恐れて国家独立を認めたと言う事だが、更に今回の入国拒否の噂が流れた事により、神国アクアはミツバ王国を友好国家と見ていないと認識されるに至った。


 結果的に大陸中に神の顕現についての噂が広がると同時に神に嫌われているミツバ王国との噂も流れてしまい、神の怒りを恐れた他国は今までとは異なってミツバ王国と大なり小なりあれ距離を取るようになっていた。


 四大公爵は国王からの怒りの矛先が向かう事を恐れ、王都の別邸を後にして各領地に慌てて戻って行き、残された事情を知らない貴族達は、なぜ王都の活気が徐々に無くなっているのかわからずにヤキモキするだけだったのだ。


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