(1)元盗賊
近衛騎士をお役御免にはできない国王と、自らの騎士の首を切れない公爵家。
いくら信用できない報告をしてきたと言っても、貴重な戦力であり裏切る可能性が限りなく少ない存在である事は間違いない。
「あの報告を聞く限り、我らは下に見られたままスゴスゴ撤退していた事になりますぞ!王よ」
四大公爵家当主と国王が、円卓を囲ってミソロ町についての対策を考えている。
「聞けば、門に近づく事もなく撤退した腑抜けぶり!この失態が周辺国に流れれば、ミソロ町は他国の領土となってしまいます!」
「そもそも、サイクロプスがミソロ町を守っているなど……バカバカしい。それほどのテイマーがいるのであれば、盗賊共は排除できるでしょうに」
「まさしくリーシル公爵の言う通りですな」
四大公爵が口々に現状を嘆き、その全てを黙って聞いている国王。
この構図が暫く続いて話が進まないのは、実はそれぞれの配下である騎士達が出陣を渋っており、どれほど報酬を吊り上げようが誰一人として首を縦に振らないので、誰もが派兵できないからだ。
騎士の中にはアクア顕現時に神国アクアに属したかったのだが、纏めて敵と認識されたような言い方で切って捨てられたので止む無く撤退しており、結果、命令が出れば騎士をやめると明言する者までいる始末。
今回ミソロ町に同行していなかった戦力が極めて低い騎士であれば派兵可能だが、本当に万が一にもサイクロプスがいた場合には手も足も出ず全滅し、その結果、事前情報があったにも係わらず強引に派兵したと糾弾される恐れすらある。
「こうしていても結論は出ん。やむを得ない。今回は冒険者ギルドに高めの報酬を提示して、人類の敵である魔獣のサイクロプスの排除、その後ミソロ町の調査を命じろ。ついでにユベルとか言う不届きな奴の始末の依頼も忘れるな」
国家元首や貴族は脈々と受け継がれる血族であるべきと言う思いがある以上、一介の冒険者であるギルド長が国家元首を名乗っている事を許容できないミツバ国王。
そもそもミツバ王国の国名が一族の名を冠しているのだから、絶対君主制の国主として一平民が同格の存在である事など絶対に認められない。例えそれが取るに足らない国土の国王であろうが、神の加護がある領土であろうが……だ。
こうして王都のギルドに大々的に依頼が行われたのだが、今までの信頼からか、ギルド間の情報共有義務からか、神国アクアのギルドにもその情報が共有される。
「はぁ~、偉そうにしていたわりに、影響力が全くなかったのか?あいつ等」
これで独立国家として安泰だと思っていたところ、再びミツバ王国からの依頼で冒険者が粉をかけに来ると知ったユベルは頭を抱えている。
既にこの国にシズル、トリシア、シバはいない。
前回の対応時に実際彼等が直接力をふるう事は無かったのだが、いてくれるだけで絶対の安心感があったのは事実。
その三人がいなくなっていると言う事に少々の不安を感じつつも、ギルド長の部屋からでてロビーに出る。
「アッサム、残念だが再びお前の頭脳が必要だ。来てくれ」
ギルドの受付を取りまとめている元盗賊崩れではあるが、今は共に神国アクアを守り盛り立てる力強い仲間であり、国家の頭脳であるアッサムを呼ぶユベル。
渋い顔をして自分を呼んでいるユベルを見て、良い事ではないだろうと思い急ぎギルド長の部屋に向かうアッサム。
「ま、座ってくれ。今ミツバ王国のギルド本部から来た情報だが……あいつ等、全然この国を諦めていないようだ。今度は冒険者に依頼を出したようだぞ」
「冒険者……ですかい?前回の騎士やボンボン共は来ないのですかい?ユベルの旦那」
「正確にはわからないが、今の所は騎士が来られないから冒険者に依頼を出したと言っているらしいぞ。それと、あの子息、息女共は領地に戻ったそうだ」
ユベルの返事を聞いて、何かを考えこむアッサム。
「……確かにあれだけアクア様に怯えていた姿を見れば、騎士がこちらに来ないと言うその情報は正しいと判断しても良いと思いやすぜ。冒険者に関しては、流れの者であれば対策をする必要があると思いやすが、王都ギルド所属であれば、サイクロプスの事は聞き及んでいるはずでやす。それを聞いても突っ込んでくるような連中はいないはずですぜ?」
そう……神国アクアの不動の門番としてサイクロプスが立っているので、相当な戦力で襲いかかるか、神国アクアが手を出せない条件がない限りは突破される可能性は低い。
サイクロプスはシズルがテイマーの力で配下としているのだが、召喚していない間はこの町の為に働くようにお願いをした所快諾の意思が伝わってきたので、そのまま門番として活動している。
神国アクアにも所属の冒険者がおり、時折ミツバ王国のギルド本部にも出向く事があるので、サイクロプスを門番としているが危害を加えるつもりがなければ襲われる事は絶対にないと周知している。
その実績もあるために、その情報を知らないどこからか来た流れの冒険者でなければ異常とも言える依頼を受ける者はいないだろうと言うのがアッサムの判断だ。
「とは言ってもユベルの旦那。冒険者は気の向くまま、風の向くまま。流れの連中なんざ、実力はさておき星の数程いやすぜ?」
「最悪は、再びアクア様にお姿を出していただく他ないのか?」
「正直あっしとしては顕現して頂くのは嬉しいのですが……都度頼るようでは情けないですぜ?ここは、神国アクアの実力を見せてやりましょうや?」
「その通りだな。頼りにしているぞ!」




