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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
水神

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(28)召喚者とユベル

 ユベルとしては神国アクアの所有権に関する主張をされるのかと思っていたのだが、全く想定していない事を言い出したユーヤと、その後ろにいる公爵家の子息、息女達三人もユーヤの言葉を否定しない事から、どのような裏があるのか見極めようと無意識のうちに緊張してゴクリと唾をのむ。


 戦闘とは異なる緊張状態にあるユベルをよそに、ユーヤとそれに続いてミルソ公爵家のショージも喚いている。


「フッ、俺はその犬っころに似た存在をヨツバ王国の王都で見た事がある。その主はシズルと言ったが、ここにいるのか?」


「トリシアもだ!」


 経験した事のない雰囲気の緊張のせいか、思わずピクリと反応してしまうユベルの姿を見た四人は不気味な笑みを携える。


 真っ先に動いたのは、最も近くにいるユーヤ。


 高校生の時の素行そのままになれなれしくユベルの肩に手をかけるのだが、シバはユーヤ達の実力を正確に把握しているので、ユベルとの戦力差もあって現時点では危険はないと判断して何も動いていない。


 その後同じようにショージもユーヤとは逆側から肩に手をかけ、背後の騎士達に聞こえないようにこう呟く。


「フッ。正直俺達は、この場所が国だろうが町だろうが、誰の管轄だろうが興味はない。フッ、野蛮な連中にはわからないかもしれないだろうが、これは事実!」


「ユーヤの言う通りだぜ。この町にトリシアとシズルがいるだろう?二人を差し出せば、逆にこの場所を独立国家として認知できるように後押ししてやるぜ?」


 完全に認めると言えないのはそこまでの権力を持ち合わせていないからなのだが、ユベルには受け入れられる内容ではない。


 本来何かあれば持ち帰るようにアッサムに言われているのだが、こればかりは持ち帰る必要もなくユベルだけで即決できる。


 神国アクアに居を構える住民全ての、正に総意と言い切れる事であり、両肩に無遠慮に手をおいている二人を不快な態度を隠そうともせずに振り払う。


 今迄立場に胡坐をかいてきたユーヤとショージは、まさか四大公爵家嫡男の自分達に対して突然そのような行動にでるとは思っておらずに少し動きが止まってしまい、その間にユベルは若干距離を取って、二人とその後ろに控えている公爵家の息女であるショーコとヨシエ、更にはミドハルナスと相対する。


「突然何を言い出すかと思えば、我ら神国アクアの大恩人を差し出せば独立を認める?頭に虫でも湧いてんのか?これが四大公爵家の跡継ぎ……どう見ても我ら神国アクアが独立した事が正しいと思わざるを得ないな」


「ユーヤ様、ショージ様、何を言ったのですか!!」


 ユベルの言葉から、条件付きではあるがユーヤとショージがミソロ町ではなく神国アクアを認めると言った事を理解した王国所属近衛騎士のミドハルナスは、二人を厳しく咎めるような声を出す。


 その声が聞こえていた防壁内部の神国アクアの住民達は、恩人と言えばシズル、トリシア、シバしか存在しない事から何を要求されたのか理解する。


「おいおい、ミツバ王国の内輪の揉め事はそっちで勝手にやってくれ。俺達神国アクア(・・・・・)には関係のない事だ」


「ユベル殿、居もしない神の名を冠してまで独立しようとするのであれば、こちらにも考えがありますよ?」


 ユベルが立ち去ろうとするので、余裕がなくなったミドハルナスはユーヤやショージの対応は後回しにして直接的な表現を使い始める。


 最早湖の調査等と悠長な事は言っていられないと判断しての行動であり、同時に背後の護衛の立ち位置で近接していた騎士達も武器を手に取る。


「お~、アッサムの言った通り本音を曝け出したな」


 どう見ても危機的状況であるはずなのだが余裕の態度を崩さないユベルに対して、ミドハルナスも最早取り繕う事もないと言葉を紡ぐ。


「貴様はあのサイクロプスの援護があると思っているのだろうが、甘いぞ!基本サイクロプスは遠距離攻撃能力を持たん。あの咆哮であれば我ら精鋭は耐える事ができるからな。つまり、貴様はここで我らの捕虜になるのだ!」


「やっぱりそうか。で?お前(ユーヤ)達も敵対すると言う事で良いのだな?」


……ピカッ……


 ユベルが問いかけた返事を待つ前に、ユベルとミドハルナスの中間の位置に激しく光る青い光が現れて、徐々に人型を形作る。


「ユベル、ここは私に任せてください。そこの貴方、ミドハルナスと言いましたね?神がいない?全く嘆かわしい。私達が在るからこそ、あなた方人族も過ごせているのですよ?」


 多少の威圧はあるのだが、どう見ても人とは隔絶した雰囲気を出している水神アクア。


 本来顕現するつもりはなかったのだが、神がいないと明言された事に腹を立てて予定外の顕現をして説教を始めたのだ。


 同格の神(トリシア)に会った事があるこの場の四人は、その神々しい雰囲気を他の誰よりも正確に感じ取ってしまい、目の前の女性が神である事を否応なしに受け入れる。


「お、おい、ミドハルナス。そいつ……そのお方はまさしく神だ!控えろ!!」


 いつも尊大で遜る事をしないショージの言葉を聞き、更には似たり寄ったりの残りの性格である三人の公爵家の子息、息女の態度を見て、口をつぐんで膝をついてしまうミドハルナス。


「少しは理解したようですね。良いですか?この国は私水神アクアが守護している国です。何人たりとも手出しは許しません。何かあれば、当事者、当時国家に水の報いがある事をお忘れなきよう」


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