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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
水神

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(26)召喚者の行動

 緊張感のない四人ではあるが、あのサイクロプスはどう見ても自分達を見て圧を強めている為に、排除しなくては内部に入れない事は理解した。


「どうすんのよ?あんなでっかくて気持ち悪い獣を相手にするなんて、ちょー嫌なんだけど?」


「私だってそうよ!ここは男達の出番でしょ?」


 ヨシエとショーコは、同じ召喚者で今の所形式上は恋人でもあるショージとユーヤに丸投げしようとするが、四人全員が与えられた能力を鍛錬する事もなく立場に胡坐をかいていたので、戦闘経験もなく立ち向かえる気がしていない。


「おいおい、ショーコ。俺だってあんなバケモンを相手にできる訳ないだろ?」


「フッ、俺も遠慮する。そもそも俺達が直接戦闘する必要はないだろう?フッ、何のための軍隊だ?」


 そう言えば自分達は立場のある人間で、引き連れてきている部隊に命令ができる立場である事をユーヤの言葉で思い出した残りの三人。


 今の四人にとって最適な回答を導き出したユーヤも、必死で余裕のある姿勢を崩さないようにしながら何か良い逃げ道がないかを瞬時に考えていたので、自分の提言が受け入れられて内心安堵している。


「流石はユーヤだ。決まりだな。おい、お前等!あの無駄にでかい張りぼて(サイクロプス)を潰してこい!」


 立場を生かして上から命令するショージだが、自らが戦闘しない事を良い事にレベルBの魔獣サイクロプスを張りぼて呼ばわりしており、この態度も実際に突撃させられる隊員からすれば非常に癪に触っている。


 しかし四大公爵家の子息からの命令、国軍に所属する者としても公爵家の命令に従うように言われている以上、各自が武器を抱えてサイクロプスに向かって雄叫びを上げながら突進し始める。


「グオォォォォォ~~~~~~~」


 その姿を見たサイクロプスは腹の底から全力で咆哮すると……隊員の雄叫びなどは一気にかき消され、勢いよく突進してきた軍隊がサイクロプスの咆哮による空気の振動だけで行動不能に陥って倒れ始めたのだ。


 シズルや神国のメンバーもサイクロプスだけに全てを任せているわけではなく、乱戦になったりサイクロプスに危険が迫ったりした場合には乱入する準備を整えており、防壁上部や、門の内側から隠れて様子を見ている。


 このサイクロプスを以前支配下に置いていた元盗賊崩れ、現犯罪奴隷……ではあるが、すっかり普通の国民と変わらない生活をする事を許可されているポッシャラと呼ばれている男は、テイマーとしての能力を遊ばせるのは無駄と考えて、シズルやユベルの許可の元にフライアと呼ばれる少し大きな蝶の魔獣を新たに従えて、門の内側でシズルと共に敵の様子を伺っている。


 このフライアがまき散らす鱗粉には毒になる物や回復に繋がる物が存在しているので、敵にも味方にも効果を発揮できる魔獣だ。


「ポッシャラさん、あのサイクロプスは本当にすごい力を持っていますね。これならば水神(アクア)様の力を借りずにこのまま向こうが撤退してくれるかもしれません。って、なんだか強引に制御を奪ってしまった僕が言うのもちょっとアレですけれど」


「シズルさん、そんな事は気にしないでください。そもそも俺はあのサイクロプスを完全に制御できていたわけではありませんから。俺程度の力では制御しきれないのですよ。契約も中途半端で、弱っているところを偶然見つけて契約しただけにすぎませんから。今の俺の力では、このフライアが限界です」


 すっかり邪な心が無くなっているポッシャラを始めとした元盗賊崩れの者達は、この短い時間で守るべき場所であると認識した神国アクアを命がけで守る覚悟が出来ている。


 契約者であるポッシャラの強い意志に引きずられてか、傍に控えているフライアも薄く発光し始める。


 攻め込む側は、今の戦力では強引に侵入する事はできないと判断した隊長が、四人の公爵子息、息女達に交渉するように申し出る。


「い、今の力をご覧いただいた通り、あのサイクロプスは相当曲者です。このまま突進を続けても門に辿り着ける者は皆無。今は咆哮だけの対応、つまり防御だけの対応になっていますが、反撃されてしまうと全滅の恐れすらあります。犠牲者がいない内に、向こうの代表と交渉する事を進言いたします」


「フッ、交渉?何を交渉する?」


 四人も咆哮の余波で怯えてはいるが、唯一普段から余裕の態度を見せつける事に腐心しているユーヤだけがかろうじて反応する。


「それは……リーシル公爵領と認めさせる事を目的として来ていますが、今その旨を伝えるのは悪手です。先ずは湖の調査と共に復興に対する助力を申し出る体で内部に入り、ユベルとか言う代表面している男を拘束すれば宜しいかと」


「フッ……それで良いぞ」


 権利どうこうよりも、サイクロプスの咆哮による恐怖が再び来ないようにしてほしいと切に願っているユーヤは、それ以外にはトリシアの事しか頭にないのですぐさま許可を出す。


「仰せのままに」


 ユーヤと話をしていたのは、今回国軍を率いていた隊長であり近衛騎士でもあるミドハルナス。


 武器を置いて鎧を脱ぎ捨て、攻撃の意思がないと明らかにわかる状態になってからサイクロプスが聳え立っている門に向かって、倒れている隊員を避けつつ進む。


 攻撃の意思がないのを見越したのかサイクロプスは一切動かない状態ではあるが、視線は厳しくミドハルナスの一挙手一投足を余す事無く監視している。


 ミドハルナスはサイクロプスの様子から完全にテイマーの配下となっている事に驚きつつも恐怖に対抗して一歩一歩進む。


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