(23)ミソロ町の情報
ミツバ王国の王都にあるリーシル公爵別邸。
「フッ、父さん。噂を聞きましたか?あの町……なんて言ったか、そうそう、ミソロ町。フッ、何やら湖が復活したそうですよ?」
「何?フン。もしその噂が事実だとすれば、早急にわが領地だと再び宣言する必要があるな。湖からの水が供給されれば、年中温暖の為に作物の育ちも良いから、非常に良い税収が見込めるぞ。フン」
「フッ、そうでしょう?ですから、この俺ユーヤがその事実を確認しに行きますよ」
以前断られていた元ミソロ町への外出だが、聞こえてくる噂を確認する体で再び許可を取ろうとしているユーヤ。
町に確認しに行く事は事実なのだが、その後はトリシアを手中に収めるために奔走する予定だ。
トリシアとシズルは王都の西門から出たとの情報を得ており、その行先は広範囲にはなるのだが一応元ミソロ町もその方向にあるので、道中聞き込みをしつつ向かうつもりでいた。
だがユーヤに届く噂が、他の四大公爵家に聞こえてこないわけはない。
それぞれの召喚者達も各公爵家の当主に同じような邪な考え、トリシアやシズルを手中に収める事を実行するべく、調査の体で直訴して外出の許可を得ていた。
各公爵としても、元ミソロ町から見込まれる収益を手中に収めんと動き始めたのだ。
唯一王家のみに対してあまりにも非現実的な噂であると判断されて情報が上がってこなかった中で、公爵の許可を得た召喚者四人は、全員が個別にギルドに赴いて噂の信憑性を高める事にしていた。
ギルド設置の魔道具で、あの町のギルドに連絡をして直接情報を仕入れるのだ。
「俺はユーヤ・リーシル。フッ、ミソロ町を管轄するリーシル公爵家の者だ」
領有権を放棄した事を完全に無視して、高圧的に話しているユーヤ。
「フッ、聞くところによると湖が復活したらしいが、それは事実か?」
その問いに対して魔道具の先で不機嫌そうに答えるのはユベル。
ギルド本部に圧力をかけて救助要請を突っぱねていたリーシル家を相手にする事には非常に抵抗があるので、必要最小限の返事になっている。
「まぁ、事実ですね」
「そうか。フッ、もう少し聞かせてほしい。盗賊の件はどうなった?」
散々無視してきたくせにと言う思いがあるユベルだが、実際には本部で調べれば犯罪奴隷として登録されている事がすぐにわかる為、こちらも渋々ではあるがせめてもの抵抗とばかりに曖昧に答える。
「労働してもらっていますよ」
「なるほど。最後に一つ。フッ、これは個人的に聞きたいが、我がミソロ町にトリシアと言う美しい女性と、ついでにシズルと言うどう見ても不釣り合いな出来損ないの男が来ていないか?」
大恩人に対しての物言い、そしてミソロ町を勝手に自分の領地と再び宣言している事に怒り心頭のユベル。
窮地には手を貸さず、宝が見え始めたら奪い去る悪党の典型のような行動に吐き気がしているのに、更に恩人に対しての悪意ある表現に、ここで初めて嘘をつく。
「……知りませんね」
「そうか。フッ、良く聞いてくれ。そのトリシアと言う女性は俺の妻になる立場の者だ。もし発見したら丁重に扱い、即座に俺に報告するように」
その後、短い間に同じようなやり取りを三回続けて行う事になったユベル。
結局四大公爵家全員と不快な通信をする羽目になっていたのだが、その相手は……
渡辺 正二 こと、ショージ・ミルソ
鈴木 翔子 こと、ショーコ・コソム
安藤 裕也 こと、ユーヤ・リーシル
佐島 芳江 こと、ヨシエ・ヘルナンド
ユーヤだけではなく四大公爵から声がかかってしまっては、流石に当人に伝えないわけにはいかないと判断したユベル。
シズル達は新婚旅行の途中と言っていたので、湖が復活した今、そう長くはこの町にいてくれることはないだろうと思いユーヤからの連絡時には黙っていたのだが、四人から連絡があれば話は異なってくる。
おそらく四人が互いにライバル関係となり、この町にはいないし見た事もないと伝えてはいるのだが、あの感じでは我先にとこの町に来る可能性が高いので時間的猶予が無くなると判断した。
その日の夜、かなり復興が進んだ町のギルドに犯罪奴隷や拉致から助け出した人達を含む全員が集められる。
この頃になると、犯罪奴隷達はその立場を変える事は出来ないのだが、すっかり町人とも打ち解けて蟠りがなくなり立派な戦力となり得ている。
門番にはサイクロプスを配置しているので非常に安全な状態が保たれているのだが、来訪者には恐怖でしかないので、対策としてハナが肩に乗って害意のない者には無害であると示す事が出来ればと思っている。
まぁ、実際はそこまで落ち着いてハナを認識できる者がどれだけいるかと言う話なのだが、あまり長時間門番をさせる予定はない。
何せ人手不足は解消されていないのだから。




