(21)湖の復活
ここに来てから碌に会話もせずにあっという間に帰って行ってしまった地神。
「これで大丈夫なはずです。さぁ静流様、シバ、今日が本当の勝負ですよ!」
「えっと、はい」
「ワンワン」
お礼すら言えていない事に後ろめたさを感じつつも、昨日と同様に均等に距離を取って水魔法を行使する三体。
……ドドドドドド……
まるで巨大な滝のように水が三か所の空中から湧き出て、干上がっている地面に流れ込む。
昨日はこの水を吸収しつつも、あまりの水の総量に泥沼のように変化した大地。
今日は地表に変化が一切ないままではあるのだが、水が一切吸収される事無く溜まり始めたのだ。
その結果、底がひび割れている状態に変化がないまま水が増え続けている湖。
「流石は地神様ですね、トリシアさん、シバ!」
シズルは地神がこの場所だけ水を全く吸収しない大地に変えてくれたと思っているのだが、その場合には仮に雨が降った場合には一気に漏れ出てしまうので、ある一定以上に水面が上昇した際には、その先の部分の大地は水を吸収するように細工していた。
流石は年の功と言える地神の思慮深さなのだが、その変化を与えた事すら認識できないシズルではわかりようはなかった。
ただひたすらに水魔法を行使しているのだが、昨日と違って明らかに水位が上昇している事に嬉しくなり、魔法に込める力も増えていく。
「静流様、今日はここまでにしておきましょう」
集中して魔法を行使していたので、いつの間にかトリシアとシバが自分の近くに来た事に気が付かなかったシズル。
「水位は……半分まで来ましたね。これであれば、今日蒸発してしまう分を入れても明日には終わりそうです。良かったですね。これも地神様とトリシアさん、シバの力があってこそ!です」
「フフフ、一番の功労者は何と言っても静流様ですよ」
「ワン、ワン!」
喜びながら現状を報告するためにギルドに戻るが、まだ他の場所で復興作業をしているのか、ユベルの姿ばかりか誰一人としてギルドにはいなかった。
耳をすませばあちらこちらで作業をしている声や音が聞こえるので、手伝おうかと一歩進み始めた所でトリシアに止められる。
「静流様!昨日の事もありますし、今日は無理をしないでください」
このように言われては否とは言えないシズル。
黙ってトリシアに引きずられるように部屋に戻り、食事をして、お風呂に入り……と一連の流れを行って休む。
翌朝早めに部屋を出てギルドに向かい、何もなければ今日にでも湖は完全復活する事をユベルに伝える。
「え?本当ですか??ありがとうございます!正直に言うと、いくらシズルさん達でも少し厳しいのではと思っていました。嬉しい誤算です。これで町民を呼び寄せる事が出来ます!」
「それは何よりです。一つお伺いしたいのですが、この町、この周辺はあまり雨が降らないのでしょうか?」
昨日思っていた疑問を投げておくシズル。
「そうですね。私の記憶にある限りでは年に一回降るかどうかと言った所でしょうか」
そうなると湧き水でもない限り何れ湖は枯渇してしまう事になるのだが、一先ず目の前の作業に集中する事にした。
結局全員の練度が上がったのか、作業に慣れたのか、作業は一気に終わり、湖から畑や各家方面に向けて設置されていた水路に水が流れ出て行く。
「これで当面は大丈夫ですね、トリシアさん。でも、根本の解決になっていないのが辛い所ですね」
「そうですね。水魔法を行使できる魔術師を多数雇う事になるのでしょうか?ですが、地神の力で水が吸収される事はないですから、今までとは違って容易に水を溜める事ができるのではないでしょうか?ですので、これで全ての問題は解決です!」
「そうですね、きっと大丈夫ですよね」
「ワンワン!」
シズル、トリシアは肩を寄せ合い、シバは足元でお座りしつつやり切った満足感に浸っていたのだが、背後から初めて聞く声が聞こえてくる。
「……ねぇ、ちょっと!ちょっと、あんた達、何自分の世界に入っているのさ!黙って話を聞いていれば私の事をすっかり忘れているみたいだし!」
振り向けば、透き通るような青い目と同じ色をした腰まで伸びた綺麗な髪を揺らしている女性が、ジトーッとした視線を向けている。
「あら?水神じゃないですか。そう言えば私達、水神の制約を解除しに来たのでしたね。すっかり復興に夢中で忘れていましたね?静流様」
「……えっと、申し訳ありません、アクア様。その、僕も……です」




