(19)湖の対策
誰しもが考えられる湖の水の枯渇対策として、水魔法による水の注入がある。
もちろんギルド長であるユベルや同郷の者達、時には冒険者に依頼を出して水魔法を必死で行使していたのだが、結果は完全に干上がってしまった湖。
ユベルの感覚では、大陸中に数人と言われている虹色のカードを持つ者が全力で水魔法を行使しても湖を元に戻す事は出来ないだろうと思っているのだが、善意から言ってくれている恩人であるシズルの好意を受け取る事にした。
そもそもユベルが二人をギルドに呼び出したのは、この町に後どれほど滞在してくれるつもりなのかを確認する為だったので、その事を聞く必要が無くなった事に安堵している。
「わかりました。宜しくお願いします。俺達は犯罪奴隷共が破壊した家屋の修復を始めますので、何かあれば連絡してください」
こうしてギルドから出て逆方向に向かって行くユベルとシズル一行。
家屋や街道の修復には相当な力が必要であり、そちらにサイクロプスを向かわせているので、湖に向かっているのはシズル、トリシア、シバだけだ。
「改めて見ると、凄く大きな湖だったのですね。ここまで巨大な湖が枯れるなんて……」
サンサンと降り注ぐ日光を感じながらも、そう言えばここ数日全く雨が降る気配がなかったなと思うシズル。
「トリシアさん、この町の周辺って雨が降らない町なのでしょうかね?」
「う~ん、そうかもしれませんね。畑の方も干からびていましたし、いくら湖の水がなくなったとは言っても、雨が降ればある程度は生活できるはずですから」
シズルは雨が降れば作業が楽になるのかもしれないと思っていたのだが、トリシアの想像通りにあまり雨が降らない場所なのだろうと自分で納得する。
シバを含めて全力で水魔法を行使すれば一気に湖が回復すると言う甘い考えは持っていないが、数回に分ける事で元に戻せると踏んでいる為に今の内に湖の底を綺麗にしておこうと掃除から始める事にした。
召喚前の世界では、分解されないプラスチックゴミが世界的な問題になっていたなと思い出しつつも、広い湖跡地の底を歩きながらゴミを探すシズル。
「あの、静流様?何をされているのですか?」
黙って歩いているシズルについて行ってはいるが、何かを探している様子しかわからないので事情を聴くトリシア。
「あぁ、ごめんなさい。えっと、水を張ってしまうと底は掃除できないので、その前に掃除しておこうかと思いまして」
説明もなしに勝手に歩き回っていた事に気が付いて少し恥ずかしくなるシズルだが、トリシアにとってみれば素晴らしい思想を持っている大切な夫と言う事になる。
「本当に、本当に素晴らしいです、静流様!シバ、私達も頑張りましょう!」
「ワンワン!」
一人と一匹は我先にと凄い勢いで湖であった場所の底を走り回り、何とかゴミを探そうとしている。
普通に見ればとてつもない移動速度なので、それで本当にゴミが探せているのか!と言いたくなる程ではあるが、そこは女神と上限なく成長できる眷属であるためにその心配は全く該当せず、時折冒険者が使わなくなって投げ捨てたのか落ちていた武器の残骸を一か所に集め始めている。
「やっぱり、異世界のゴミは向こうとは違いますね」
「フフ、そうみたいですね、静流様」
樹脂と呼ばれるプラスチックゴミは一切なく、おそらく湖の底に長期間あれば分解してなくなってしまうゴミばかりが地上部分に集められている。
ゴミのほぼ全てが騎士や冒険者が使用する防具や武器であり、時折何に使うかよくわからない魔道具の残骸らしき物がある位だったが、その総量はかなりの量になっている。
「集めたのは良いですが、このゴミ、どうしよう……」
想定以上の量に驚いているシズルは、まさかこの世界で分別回収があるとは思っていないので、どのように処理すれば良いのかわからずに困惑している。
「静流様、きっと錬金術の素材にできるはずですので、一旦持ち帰るために収納しておきますね」
そんなシズルの思いを感じ取ったトリシアがすぐにフォローして、全てのゴミを収納魔法で回収した。
「ありがとうございます、トリシアさん。じゃあシバも一緒に頑張りましょう!」
「そうですね。三方向に分かれて魔法を行使した方が、効率が良いかもしれませんね」
「ワンワン!」
超高出力の魔法を近接して行使する場合には互いの術の干渉が起きて不測の事態が起こる可能性があるので、夫々が均等に離れた位置で魔法を行使する事にした。
「じゃあ、いきますよ~~~~~~!!!!」
全員が身体強化を行っているので大声も出せるし遠くの声も聞こえている為に、シズルの掛け声で一気に水魔法を使い始める。
均等に分かれた三体の頭上近くから突然大量の水が流れ落ち、枯れて割れている湖の底に侵入して広がって行く。
相当な量の水が三か所から一気に流入してくるのだが、広大な面積と干上がってカラカラになっているので、泥沼のような状態になり始めているままで中々水は溜まらない。
実はこれだけでも異常な魔法の行使であり、普通であれば干上がった底に何も変化がなく水が吸収されて終わっている。




