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神の揉め事に巻き込まれた男と被害者女神の世直し旅  作者: 焼納豆
水神

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(17)現実(以下第三者視点が続く)

「ミソロ町はどうなった?水源の復活などはあり得ない以上、余計な費用をかけるのはバカのする事だ。フン、あの町のギルドも王都の本部に余計な救援を要請しているようだが、それこそが無駄な行為だと気付けない時点で領民としての意識がないと言わざるを得ないな。フン。そうは思わんか?」


 豪華な服に身を包み少々肥えている体を椅子に沈ませながら話しているのは、ミツバ王国の貴族の中で最上位となる四大公爵家のうちの一つ、リーシル公爵の当主だ。


「リーシル様の仰せの通りでございます。衰退が確実な町など、素早く切り捨てる事も領主としての務め。その辺りを冷静に、迅速に実行できるリーシル様は類い稀なる領主としての才能をお持ちなのは、間違いございません」


 王都にある公爵家別邸の一室で、今回盗賊崩れが占拠してしまっていた町を統治している立場の領主であるキャド・リーシルが少々不満げに話しており、その話しに対して全てを全力で肯定して見せているのは、町長に任命されていた男、ロロチカだ。


 湖の水が減少している事はわかりきっている為、例えば定期的に水魔法を行使できる魔術師に依頼を出す等を行うべきだったのだが、税をピンハネして贅沢をする事にしか頭が向かずに最終的には我先にと逃げだした手前、ここでリーシル公爵が“ミソロ町が重要だった”と言われては立場がなくなるので、必死に肯定している。


「フッ、父さんの考えは正しいよ。不要なものは切り捨てないと、被害が大きくなるだけだからね。それこそが帝王学に必須の要素だよ。フッ」


「おぉ、ユーヤ様!お久しぶりでございます」


 そこに現れたのは静流と共にこの世界に召喚されて、願いによって立場のある存在として生まれたと認識されている召喚者、安藤 裕也。


 この世界ではユーヤ・リーシルとして認識されており、四大公爵家の嫡男と言う立場になっている。


 もちろんあの時に召喚された他の三人も、四大公爵家の子供として生活している。


「お前は……フッ。すまないな。ちょっと思い出せない」


 ロロチカを見ながら告げるユーヤの言葉に、怒りか恥ずかしさかはわからないが少し顔が赤くなるロロチカは、冷静に自己紹介を始める。


「……で、では改めまして、以前ミソロ町の町長を拝命いたしましたロロチカと申します。日々町の延命に奔走しておりましたが、やはり水が無くなってしまう事を防ぐことが出来ず、止む無く撤退した次第です」


 奔走していたのは私腹を肥やす事だけだが、そもそもミソロ町に興味がない公爵やユーヤにとってはどうでも良い話で、ロロチカの言葉に対して何かを追及したりする事はなかった。


「で、父さん。俺としては後学の為にその潰れた町を見ておきたいのだけれど。フッ、これも帝王学の一つとしてね」


 ユーヤとしては本心から言っているのではなく、町を見に行くと言う体でトリシアを探す事が出来れば……あわよくば単独で手に入れる事が出来ればと言う思いから言っているだけに過ぎない。


 その真意などわかる訳もないリーシル公爵はユーヤの願いを切って捨てるのだが、親子共に話し方がいちいち癪に障るのは、立場上血縁となっているからだろうか?


「フン。あのような町を見ても仕方がないだろう。あのまま廃れ、廃墟になるほかない場所で、何も生み出す事はない。あの程度の領地であれば放棄しても良いと思っているほどだ。いや、むしろ放棄の申請をした方が良いかもしれんな。フン、手間をかけさせる」


 貴族は領地に応じて国家に納税する必要があるので、領主は領地で益が出るように統治するのが普通なのだが、四大公爵ともなれば領地も広大な為に一つ程度の町を失っても痛くもかゆくもない。


 むしろ放棄する事で税金が下がる事の方がメリットアあるので、間違いなく廃墟になる町であれば領有権を放棄した方が良い。


 この処理は無駄に税金を支払いたくないリーシル公爵の意向によって即座に実施され、その情報はギルド本部を通してミソロ町のギルドにも流れる。


「はぁ?じゃあ、俺達の立ち位置ってどうなるんだ?国家直轄の町になるのか?」


 魔道具を通じて交信しているギルド長ユベルの口調は、内容が内容だけに荒くなっている。


 本来庇護し、発展させる責務を負う領主が領有権をあっけなく放棄したのだから、通常であれば国家直轄の領地となるのが普通だ。


 しかし、あまりにも現状が厳しいと広く知れ渡ってしまっているので、何と国家も領有権を放棄したのだ。


 国家としては税金どうこうではなく、万が一その廃墟から危険な魔獣が発生するようになっては賠償問題になるため、監視下に置く必要がある。


 その人件費は生活基盤、特に水を得る事が難しい町では非常に高騰する事は明らかで、その結果ミツバ王国としても領地を放棄すると即座に、且つ大々的に宣言してしまった。


 この宣言により他国がこの領地を管理する事は自由になるのだが、当然領地の権利を主張した時点で義務、魔獣のトラブル等の対応やそれに伴う賠償の義務が発生するので、誰一人として領主としての名乗りを上げる者、国家はいなかった。


 その情報を本部の職員から伝えられたユベルは愕然とする。


「ユベルさん、大丈夫ですよ。ギルドは国家とは関係ありませんから……とは言え、寄付や高額な依頼を受けている以上、ある程度制約は受けているのは事実ですが」


「はぁ!?そんな慰めは不要だ。どうせ今回の救援申請が通らなかったのも、それが原因だろうが!」


 領主や国家のあまりにもあっさりとした領地放棄の流れを見ると、どう考えてもミツバ王国のギルド本部に対して圧力がかかっていたと判断できてしまうのだ。


 予想が当たっているらしく、魔道具から聞こえてくる声はゴニョゴニョとした聞き取れない声しか返ってこなかった。


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