(16)その後
「無様な連中だな。まぁ無駄に実力だけはあるのは身をもって理解しているから、有効活用させてもらうとしよう」
足が痺れているので、四つん這いになって必死でグループを作っている犯罪奴隷達を見て呟いているギルド長のユベルさん。
少し経つと、彼らは5つのグループに分かれていたよ。
「そう言えば、お前!相当アコギな金貸しをしていたな。その資金はどこに隠してある?それと、攫った町民はどこに行った?」
僕も忘れていたけれど、この町は水が無くなって生活が出来なくなってから町民が流出した後、高利貸しやら人攫いやらが出ていたとエリナさんが言っていたっけ。
「そ、それは……資金はとある家に一纏めにしているが、攫った連中はもう丁度昨日の夜に纏めて売っちまった」
犯罪奴隷での制約がある以上は嘘をつくと死ぬ可能性があるので、恐怖に顔をこわばらせながら答える元門番風のこの一団の長のような男。
「静流様、これはある意味朗報です。一纏めにして昨日の夜にこの町を出たのであれば、一気に救えるかもしれません。私が行ってきても宜しいでしょうか?」
「もちろんお願いしたいですけれど、せめて方向位は知っておかないとダメですよね」
僕達の話を聞いてくれていたユベルさんが犯罪奴隷となった人達から何とか情報を聞き出して、トリシアさんが救出に向かう事になったよ。
「その首謀者、購入者はどうすれば良いのでしょうか?掃除してから戻ってきた方が良いですよね?静流様」
素敵な笑顔のトリシアさんだけれど、表情と言葉のギャップが凄いですよ。
それに、僕のエゴだけれどトリシアさんにはあまり汚れ仕事をしてもらいたくないんだよね。
「えっと、この世界ではどのような事になるのですか?ユベルさん」
「人身売買は重罪ですよ。もちろん証明できますから、その人物も犯罪奴隷の仲間入りですね」
「と言う事です、トリシアさん。一緒に連れ帰っていただけますか?」
「お任せください、静流様!では、早速行ってきます!」
ギルド職員の人達は、サイクロプスを従えているテイマーの僕ではなく、本当に綺麗で華奢に見えるトリシアさんが一人で救出に向かおうとしている事に眉をひそめているよ。
でも、この中でぶっちぎりの最強はトリシアさんだから仕方がないよね。
正直に説明してもわかってもらえないかもしれない……と言うよりも、僕がその立場でもきっと信じられないので、その視線は流す事にしたよ。
「じゃあ、その資金も復興に使わせてもらおう。あっ、もちろんシズルさんの報酬はギルドからしっかりとお支払いさせていただくので、安心してください」
冒険者は、余程の事情がない限りは無償で活動するのは禁止されていると教えてもらったので、その事を推奨しているギルドの長からこう言われては断ると言った選択肢はないよ。
「わかりました、ありがとうございます」
その後のギルト長は、早速復興に向けて活動を始めたよ。
先ずは資金の調達として、犯罪奴隷達がため込んでいた資金を全て没収するみたいで、即指示を出しているよ。
「お前はその場所に案内しろ。スーリア、収納袋を持って回収してこい!」
「はい。おい、行くぞ!」
スーリアと呼ばれた職員の方は、元盗賊崩れの長に案内するように命じてこの場から移動を始めたよ。
「で……戦士7名、魔術師5名、テイマー1名、鑑定士1名、錬金術師1名か。クソッ、町民や冒険者がこの町を捨てなければ、こんな連中に好き勝手させる事はなかったのに!」
思わず本音が漏れてしまったユベルさんの気持ちは良くわかるよ。
「そう言えばユベルさん、あなたはギルドの長。そうなるとこの町の長は別にいると思うのですが、その方はどうされたのでしょうか?」
「あのブタ野郎は残り少ない水を強制的に徴収すると、お付きの者と共に我先にとこの町を捨てて出ていきましたよ。散々税で贅沢していた分際で、危機になれば逃げる典型的な小物です」
「そうですか。でもその上の方と言うのですか?この町の上の立場、領主がいるのですよね?」
「シズルさんの言う通りですが、そいつもそんな町長を派遣するような奴ですからね。って、あまり公に言うと俺の立場が非常にまずいのですが、今はどう見ても間者はいませんから曝け出していますが」
軽く周囲を気にするそぶりを見せたユベルさんは、どう見ても間者になり得る人がいない事を確認すると、もう少し情報を教えてくれたよ。
「一応この町はミツバ王国の四大公爵の一つ、リーシル領にはなっています。ギルド本部への救援がこうも断られているのも、先のない町に対してギルドが動いた後に費用を請求されるのを嫌った領主が裏から手を回している可能性が高いのです。あいつはそういうやつですよ」
憎々し気に教えてくれるユベルさん。
冒険者を管轄するギルドであれば仲間意識が強いと思うので、他の町にあるギルドからの救援要請であればすぐに駆け付けてくれるように思っていたけれど、鵜呑みにするわけにはいかないけれど、ユベルさんの言っている通りであれば悲しいね。




