(13)落ち着くギルド
お腹が満たされて心に余裕ができたのか、少し僕達の話を聞いてくれる体制になってくれたユベルさん達。
「その、先程は大変申し訳ありませんでした。お恥ずかしい限りです」
僕よりも相当年上に見えるユベルさんが立ち上がって僕達に深く頭を下げてくるので、慌てて問題ない事を告げて話を進めさせてもらう事にしたよ。
「……それで、盗賊達は僕達が完全に制圧しています。サイクロプスも皆さんは思うところがあるでしょうが、テイマーの命令に従ってしまった状態なので、僕がそのまま使役させていただくつもりです。もちろん不安があるのであれば送還する事にしますが」
「……とりあえず、完全に、安全に使役できているのかを確認させて頂いてから判断させて頂きたいのですが」
「それはそうですよね。では、エリナさんとハナちゃんと一緒にここに来てもらっても良いですか?」
「!?本当に女性二人だけでサイクロプスと共にいるのですか?」
う~ん、一応何回か説明したのだけれど、未だにユベルさん達には本当の事だと理解してもらえなかったみたいなので、改めてしっかりと肯定しておこう。
「はい。そうですよ」
「そう言っただろう?ユベル。お前がギルド長として得た知識から、そう簡単にサイクロプスを奪う事は出来ないと知っている事は理解できるが、俺達の常識じゃ測れない人達なんだよ」
僕の自信満々の返事に続いてポラムさんが追加で説明してくれたので、流石にここまで同じ事を言われれば信用してくれるよね。
そう言えば、ユベルさんってギルド長だったんだ!
随分と偉い人と普通に話せるポラムさんって、何者だろう?
「シズルさん、では二人とサイクロプスを呼んでいただけますか?」
「あ、はい。わかりました。皆さん驚かないでくださいね」
ポラムさんの立ち位置、そもそも何をしていた人なのかを知らないな……と思っていた所に急に話しかけられたので、少し反応が遅れちゃったよ。恥ずかしい。
……スン、ドスン、ドスン……
恐ろしそうな足音が聞こえて表情が硬くなるユベルさん以下ギルド職員の人達だけれど、足音が近づくとともにエリナさんとハナちゃんの声もしっかりと聞こえてきたので、その表情は驚きから少し不安げな安堵に変わって行ったよ。
「アハハハハ、サイクロプスちゃん、こんなに早く動けるなんて凄―い!ねぇ、お母さん!」
「本当にすごいわね。もうあの場所からギルドまでついちゃって……って、あれ?どうしたのかしら?」
サイクロプスがギルドの前でゆっくりとしゃがんだ事を不思議に思っているエリナさんの声が聞こえたよ。
エリナさんも最初はサイクロプスを凄く怖がっていたけれど、この短い時間にすっかり慣れてくれたみたいで、サイクロプスからも安心したような感情が流れてくるよ。
「皆さん、着いたみたいです。大人しいですから、安心してください!」
僕は努めて大声を出して、僕の右手に笑顔でしがみついているトリシアさんと足元で尻尾を振っているシバ、そしてポラムさんと一緒にギルドを出て皆が出てくるのを待つよ。
流石はギルド長のユベルさん。
少し腰が引けているけれど一番に出てきて、少し離れた位置にいる両肩に笑顔のエリナさんとハナちゃんを乗せて大人しく座っているサイクロプスを見ているよ。
「こ、これは……本当に使役しているようだ」
「はい。もちろんです。僕はテイマーですからね」
迷う事なくユベルさんの言葉を肯定すると、後から出てきた職員の方達もその事実を認めてくれたみたい。
「その、一度触れてみても大丈夫でしょうか?」
中には、こんな事を言って来る強者もいたよ。
恐怖心よりも好奇心が勝るなんて凄い人だよね。
「もちろん問題ありません」
一人が恐る恐る触れると、防波堤が決壊するのと同じでこぞって全員がサイクロプスを触れてあーだ、こーだと言っているよ。
普通の人では生きているサイクロプスに好きに触れる機会なんてないと思うし、こうなるのは仕方がないけれど、逆に警戒心が取れてくれたから良かったかな?
おそらくギルド職員の仲間一人をその手にかけてしまっているサイクロプスだけれど、使役されている以上は主の命令に逆らえない事位は職員であれば知っているはずなので、その部分のわだかまりはなさそうだね。
そうそう、今まで披露させてもらったこの知識、もちろんトリシアさんに教えてもらった知識だよ。
僕もこの世界で生活するためには、この世界ならではの常識や知識を持っていないと大変だからね。
トリシアさんもあまり深い知識がある訳ではないので、その接しやすい雰囲気から他のギルドやお店でも色々な情報を手に入れていたから、その知識を僕に共有してくれているんだよ。




