(10)盗賊と戦闘
「はぁ、はぁ、この野郎!テメーは本当にテイマーか!?だがよ、テイマーにも格がある事を教えてやるぜ!」
この組織のボスであると思われる門番風の男は、遠くでシバによってとっくに意識を刈り取られて倒れているけれど、僕の周囲の人達にはその事実を理解できる余裕はないよね。
最も激しく攻撃してきた男が自信満々にこう言うと、一切攻撃をしてこなかった唯一の人が何かをブツブツ呟くと、地面が光ってそこから大きな魔獣が出て来たよ!
「こ、これが召喚!?凄い!これって僕もできるのですか?トリシアさん!」
「はい。もちろんですよ、静流様。私としては、シバはとっても可愛いので、常に傍に置いて頂きたいですが」
「クゥーン」
少し不安そうにいているシバだけれど、独りぼっちにはしないよ!
僕は一人がとっても寂しい事を知っているからね。
「ハハハハ、安心してシバ!ちょっと召喚が格好良かったから聞いてみただけだから」
「テメー、目が腐ってんのか!俺達の最高戦力、レベルBのサイクロプスだぞ!」
僕達の会話を聞いて切れ散らかしているけれど、体力の限界なのか襲い掛かっては来ないのが情けないよ?
でも、サイクロプスかぁ。
一つ目の巨人……僕も日本の小説で読んだ事がある有名な魔獣だけれど、よく見た方が良いと思うんだよね……
あの魔獣は結構な力を持っている事はわかったけれど、その力のおかげでシバやトリシアさんの力の一端を感じているみたいで、怯えていますけれど?
僕達の中では最弱の僕にすら手も足も出ないのに……なんでそれ程自信満々なのかがもの凄く気になるよね?
そうこうしている内に肩で息をしている男が、サイクロプスが動かない事に業を煮やしてテイマーの人に強く命令しているけれど……
「おい、どうした!早くこいつを始末しろ!!」
「そ、それが、攻撃を仕掛けないのです……サイクロプス!命令を聞け!!」
きっとあの人も僕と同じで、眷属と意思が通じているんだろうね。
でも、あまり練度は高くなさそう。
だってサイクロプスが怯えているのがわかっていないようだからね。
練度が高かったり眷属との繋がりが強かったりする場合には、嫌がる眷属を強制的に動かす事ができると言う事も何となく理解できている僕なので、サイクロプスが動かない時点で練度と繋がりが低い事は明らかだから……
魔獣と言っても意思があるはずなので、怯え続けているのは可哀そうだからフォローしてあげよう。
「君は力の差をわかっているみたいだよね。安心して。手を出してこない限りこちらからは手を出さないから」
「流石は静流様です!なんて優しいのでしょうか。流石は私の旦那様です!!」
いつの間にかすり寄ってきたトリシアさんは僕に抱き着き、その代わりにシバが荷台を守ってくれているよ。
シバ、色々とフォローしてくれてありがとう!
「くっ、おい、早くしろ!」
「ですから、言う事を聞かないんですよ!!」
「あれ?ここまでの話で理解できませんでした?僕達とあなた方との圧倒的な実力差。はぁ~、仕方がないからもう少しだけ目で見てわかるようにしてあげましょうか。えっと君、ちょっと座ってくれるかな?」
「はっ、何を言っていやがる。テイマーの支配下にある眷属が他のテイマーの言う事を聞くわけが……」
……ズシン……
言葉が続かなかったのは、サイクロプスが僕の言う事を聞いてくれたからだよ。
「これでわかりました?これ以上騒ぐと、あなた方を攻撃するように言っちゃうかもしれませんね?」
その言葉と同時にサイクロプスの大きな一つ目が盗賊崩れの男達を睨んだので、誰もが武器を捨てて自発的に正座をしてくれたよ。
「やっと落ち着く事ができますね、トリシアさん。皆さん、もう荷台から出てきても良いですよ!でも、サイクロプスがいるので驚かないでくださいね。大人しいから安心ですよ!!」
こうして荷台に隠れてもらっていた三人が出てきたのだけれど、驚くポラムさんとエリナさんをよそに、ハナちゃんはサイクロプスに興味津々で近づいて、その大きな体に感動していたよ。
「そうだ!サイクロプスにお願いだけれど、この人達を見張って、僕の指示通りの動きをしていなかったら懲らしめてくれるかな?」
怯えているのか大きな顔を必要以上に高速で上下に動かすサイクロプスを見て、完全に自分の支配を外れたと理解したテイマーの人はがっくりと肩を落としているけれど……今迄この子を使って相当な悪さをしていたのだろうから、これからその罪を償ってもらわないといけないよね。
「アハハハハ、すっごーい!ねぇ、肩車してくれる?私はハナって言うの。宜しくね?」
……僕の知識ではサイクロプスって危険な魔獣のはずだけれど、子供って凄いよね?




