(9)盗賊と戦闘
「こいつ、この状況で随分と余裕じゃねーか。おい、ドロソ!」
呼ばれたドロソとか言う人が僕をじっと見ているけれど、何をしているのだろう?
「ぷっ、ハハハハハハハ、こいつテイマーですよ。きっと足元のあの犬が眷属でしょう」
ドロソと呼ばれた男がこう言うと、全員が再び笑い出したよ。
「えっと、トリシアさん。どういう事ですか?」
「……この世界では修練して身に着いた力や先天的に持っている力があるのですが、その中で最も力が強いか、思い入れがある力に関連したジョブが各人には付いているので、そのジョブを見られる……鑑定士のジョブを持ったあのドロソと呼ばれている男が静流様を鑑定して、その情報を聞いて全員が見下している……と思います」
「そうですか。と言う事は、この世界でテイマーってあまり良くないジョブなのですか?」
「申し訳ありません。そのあたりの知識は私にはないので……一応知る限りでは魔術師、テイマー、戦士、鑑定士、錬金術師があるようですが」
「おいおい、この期に及んで余裕だな。笑わしてくれた礼に教えてやるよ。確かにテイマーは不遇っちゃ不遇だ。何と言っても強い眷属を持っていない奴は誰よりも弱いからな。で、お前の眷属はどう見てもそのチンケな犬。これが龍とか連れていりゃー恐れおののいただろうが、犬だぜ?これが笑わずにいられるか?ガハハハハ」
「これほど知識がねーから、余裕の態度だったんだな」
ご親切にありがとうございます。
でも、バカにされたシバからは結構な怒りの感情が流れてくるよ。
「シバ、大丈夫。僕はシバの強さと優しさを知っているから。シバならば絶対に龍よりも強くなれるしね」
僕の言葉で落ち着きを取り戻してくれたようで良かったよ。
だって成長限界がない眷属だから、龍より強くなれる事は絶対だからね。
「ひ~っ、苦しい、そんな犬っころが龍より強くなるのかよ!」
相変わらず目の前に煩い人がいるから、少し黙らせようかな~。
何となく一番強そうな気配を発している人……って、あの人?
一番離れた場所にいる、あの門番の人がそうなの?
「これって、他の仲間にも実力を隠してコソコソしているのか、万が一の時の為に自分だけでも逃げられるようにする為なのか、どちらだと思いますか?」
「きっと後者だと思いますよ?静流様。程度は知れますが、こんな連中の中でも立場が下でいられるほど器があるようには見えませんから。きっと私達を無傷で町に入れたのも、逃げ場をなくすために入れたつもりなのでしょう。そもそも下端は何かを決断できる立場ではありませんし」
言われてみれば、僕達を無傷で入れる決断を組織の下端ができるわけがないよね。
二人で門番の人に視線を固定して話しているので、近くにいる大笑いしている人達の腑に気は一変したよ。
本当にわかりやすすぎだよね?
「テメー、何を言っていやがる?」
ついに武器を構えて突進してきそうになっているので、少しでも理解してもらえる様にわかりやすく説明してあげようかな。
「えっと、言葉のままですよ。頭も悪い上に耳まで悪いのですか?う~ん、バカにつける薬はないって言いますから完治は見込めませんけれど、気に病む必要はありませんよ。同格の人達がいっぱいいますから!」
「テイマー風情が、死にやがれ!」
これでトリシアさんに向ける不快な視線は一気に無くなって、僕に対する怒りの視線だけが来る事になって安心できたよ。
トリシアさんの実力であれば絶対に安全だとはわかっているけれど、夫として妻を守らなくっちゃ恰好が付かないからね。
フフフ、本当にこの短い間で僕も大きく変わったよね!
って、こんな事を考えている最中だけれど、周囲の人達は一生懸命僕を殺す気で攻撃しているよ。
正直少しだけ、本当に少しだけ不安だったけれど、全部軽く避けられる事がわかったので余裕が生まれて、少し遠くで炎魔法や水魔法を行使しようとしているのがわかったよ。
特に対策せずに襲い掛かってくる人達の武器を殴ったり蹴ったりして壊すか、遠くに飛ばしている僕。
トリシアさんには視線で荷台を守るように伝えているので、その意図を汲み取って既に荷台の近くに移動してくれているよ。
「くらえ!」
魔法を準備していた人達は一斉に魔法を行使しようとしているように見えるけれど、いちいち叫ぶと僕に攻撃するタイミングを教えているって理解できないのかな?
そんな攻撃を許すシバじゃないので、一気に突撃して全員が同時に倒れているよ。
僕の方にいる人達は、いつまでたっても僕に向けた魔法攻撃が行われない事と、僕に自分達の攻撃が一切当たらない事、ついでに武器が無くなってきている事に焦っているようで、攻撃は単調で大振りになっているよ。
そうなると避けるのも武器を壊すのもすごく楽になるので、助かるよね。
体力的にも……今迄荷台を引いたのが功を奏したのか、まだまだ余裕で対処できそう!




