(7)ミソロ町へ
夜にはハナちゃんとシバ、ポラムさんとエリナさん、僕とトリシアさんでお風呂に入るのも慣れてきた頃……
「お兄ちゃん、町が見えて来たよ!!」
誰よりも高い視線になっているハナちゃんが、僕の頭上で嬉しそうにはしゃいでいるよ。
ハナちゃんにしてみれば、よくわからない内にいつの間にか逃げるように後にした故郷が見えているのだから、はしゃいでいるのは仕方がないよね。
「それにしても……静流様。あまり良くなさそうですね」
トリシアさんの言葉の通り、僕達には良く見えている門の入り口にいる門番の人達はどう見ても騎士には見えないし、町長さんが手配するような人には見えないよね。
どう見てもチンピラ……この世界なりに言い換えれば、盗賊崩れと言った方が正しいような気がするよ。
「そうですね、トリシアさん。町に入らずに済みそうですか?」
「……いいえ、今回はバラドス程明確な場所はわかりませんが、町の中にいる事だけは間違いなさそうです」
ここから見えている防壁からも、相当な広さの町である事がわかるミソロ町。
どうせなら、栄えている時に来たかったと言う気持ちもあるけれど……今回の解放が上手く行けば、きっと逃げた町民達も戻ってくるだろうし、治安も良くなって前の姿を取り戻す事ができるはずだよね。
「じゃあ、ハナちゃんごめんね。一旦荷台に入ってくれるかな?」
「はぁ~い!」
「ポラムさん、エリナさんも荷台の奥にいてください。後は僕達が対処しますので、よろしくお願いします。シバ、一緒に荷台に入って警戒をお願い!」
「ワンワン!」
「「わかりました」」
すっかり僕達を信頼してくれているので、期待に応えなくちゃいけないと自分を奮い立たせるよ!
こうして荷台を引いて進んでいる僕。
あまりにもアンバランス……強くなさそうに見える僕が大きな荷台を軽々と引いている姿に驚いた門番は、次に隣に歩いているトリシアさんを見て下種な笑みを浮かべたよ。
フードをしていないからいつも通りだけれど、いつも以上に悪い笑みで思わず苦笑いをしちゃったよ。
「あん?お前、何笑っていやがる。ここがお前の知っているミソロ町だと思っているんじゃねーだろーな?」
予定通りに絡んでくる門番の男達と、その態度を見て怒りの雰囲気を出し始めるトリシアさんと荷台にいるシバ。
「僕はこの町に来るのは初めてなので、以前のミソロ町と言われても良くわかりません。ですが、この町にはとても綺麗な湖があると聞いて、一度見たいと思って妻と来たのですよ」
僕の妻と言う表現に怒りが一気に引っ込むトリシアさんと、その姿をみて何故か嬉しそうな感情を送ってくるシバ。
「はっ、随分と余裕じゃねーかよ、兄ちゃん。良い度胸だ。気に入ったぜ。入りな」
絶対にトリシアさんを奪おうとしてくると思っていただけに、拍子抜けな僕。
表情に出ていたのか、門番の男は笑いながら真意を告げてくれたよ。
優しいのか、優しくないのかわからない人だよね。
「兄ちゃん、不思議そうな顔をしているな。別に俺はお前を庇ったりしたわけじゃねーよ。この町に入ったら、簡単には出る事は出来ねー。お前が心配している……奥さんか?これだけ美人だと、兄ちゃんの心配している通りの事が起こって地獄を見る事になるぜ?」
う~ん、どうなんだろう。やっぱり見た目通りに悪人なのかな?って、また思考があっちこっちに。
「……そうですか。ご忠告感謝します」
「あ?別に忠告したわけじゃねーよ。だが、本当に良いんだな?」
どうでも良いけれど、この人はなんで荷台をチェックしようとしないのだろう?でも、入れてくれそうだからどうでも良いかな。
ここで荷台を見せろと言われたら気絶してもらうつもりだったから、余計な手間暇かけなくって良いからね。
「はい。大丈夫です」
「……はっ、そのカラの荷台にお宝でもありゃー助かったかもしれねーがな。まぁ良い。行け!」
そっか、非力そうに見える僕が一人で楽々引いている荷台だから、中身が空だと思ったのだろうね。
こうして町に入ると、明らかに荒らされている街並みが見えて悲しくなりつつも、先ずは湖を見に行く事にしたよ。
迷いなく進んでいるトリシアさんの後に続いている僕。
相当広い町なのが改めてわかったけれど、元から住んでいた町民は僅かしかいないようで、あの門番の仲間らしき者達があちらこちらの店や家を荒らしている気配がわかるよ。
取りあえずは余計な揉め事を避けるために接触を避けつつ移動してくれているトリシアさんに黙ってついていき、目的地の湖に着いたけれども……




