(6)目的地
街道を進んでいると道が複数に分かれる場所があるのだけれど、トリシアさんは神の気配が大きくする方を選んでいると思うので、後に続いている僕。
時折荷台に乗ってもらっている三人は、見た目筋肉質ではない僕が軽々と荷台を引いているのを見て驚いているよ。
「そう言えばシズルさん、以前街道を通った時や今回逃げている時には、安全と言われている街道とは言え魔獣や獣の声や時折遠目ではあるのですが姿が見えたのですが……この街道は何か特殊な整備がなされているのでしょうか?」
「私も主人と同じ事を考えていました。恐怖が無くなって良い事ではあるのですが、あまりに普段と違うと良くない事を考えってしまって」
周囲には木々しか見えない街道なので、どこに向かっているのかわかっていない二人……僕もわかっていないけれども、脅威となる存在が一切いない事を逆に恐怖に感じているみたい。
「お兄ちゃん、私も何も見えないよ?」
肩車をしてあげているハナちゃんも嬉しそうに報告してくれている。
ここはご両親の不安を取り除く事が最優先だから、ある程度真実を説明した方が良いのかな?
チラッとトリシアさんを見ると、流石は僕の女神様。
思っている事を理解してくれたようで優しく微笑みながら頷いてくれたので、少し事情を話す事にしたよ。
「えっと、実は僕はテイマーでして……シバはああ見えて犬ではないのですよ。で、シバが周囲を警戒して視界に入る前に始末してくれていますので、皆さんの視界には一切入っていません」
「え!シバちゃんって凄い!あんなに可愛いのに!ね?お父さん、お母さん!」
「「そ、そう(だ)ね」」
見た目可愛いシバの思わぬ強さに驚いているのか、煮え切らないご両親……と、あまり事情を理解できないハナちゃんの純粋な賛辞とのギャップが面白いよね。
「それにしても……シズルさんはテイマーだったのですか。ですが、テイマーでそれ程の力をお持ちであるとは……凄いですね」
「ありがとうございます」
ポラムさんは、軽々と荷台を引いている僕を見て感心してくれているように見えるけれど、本当は女神であるトリシアさんの助力があってこそ!なので、普通のテイマーとは違うと思いますよ!とは言えずに、お礼だけを伝える事にしておいたよ。
シバはトリシアさんから貰っている収納袋を咥えて脅威となる可能性がある獣や魔獣を始末しては収納して、一杯になる頃にトリシアさんの所で収納袋を交換して頑張ってくれているよ。
シバから見れば楽しく遊んでいる感覚なのが伝わってくるので、このまま頑張ってもらおうかな。
「あ、静流様……方向板がありますね。私達が向かっているのはミソロ町と言う名前のようですよ?」
「「ミソロ町!」」
トリシアさんの言葉に反応したのは、僕が引いている荷台に乗っている夫婦二人。
「ど、どうしましたか?ポラムさん?エリナさん?」
「シズルさん、実は私達はそのミソロ町から逃れてきたのですよ」
僕の問いかけに力なく答えてくれたポラムさん。
ハナちゃんだけは今一つ良くわかっていないようで、僕の肩の上で楽しそうに周囲を見ているよ。
「えっと、トリシアさん。方向はそっちで間違いないのですよね?」
「……はい。残念ですが、合っています。あっ!?ひょっとしたら、と言うよりも絶対に今回の件は……」
言葉が小さくなるトリシアさんだけれど、言いたい事はわかったよ。
聞く所によると、町民達の生活の礎とも言える湖の水が時間をかけて枯渇したミソロ町。
そしてトリシアさんが言葉を濁している事を考えると、おそらく今回目的地になっているミソロ町にいる制約を受けてしまった神は水神様で、その水が枯れたのも魔神による制約なのは間違いないよね。
「理解しました、トリシアさん。あの……ポラムさん、エリナさん、絶対に皆さんの安全は確保させていただきますので、ミソロ町に向かっても宜しいですか?」
「……はい。よろしくお願いします。私達としても正直故郷を捨てた事に少なからず後悔がありまして」
「主人の言う通りです。できればあの町で楽しく過ごしたかったのですが……変わり果ててしまった町を見るのは少し辛い所ではありますが、それでも故郷ですから。私からもお願いします、シズルさん」
「え?お父さん、お母さん、町に戻れるの?」
無邪気にはしゃぐハナちゃん。
「……ええそうよ、ハナ」
そのまま生活できるようになるのかはわからないので、それ以上の事を言えないエリナさん。
他にも似たような環境になっているミソロ町の人達がいるはずなので、今回も水神様を解放して全てが元に戻ると良いのだけれど……




