(3)旅人との出会い
「お二方、どうか落ち着いてください。私達は旅人……実は、新婚旅行中なのですよ。ですから、そんな恐ろしい事をする事は絶対にありません」
少し照れながらも、僕の近くに座りなおしてコテッと頭を僕の肩に乗せてくれるトリシアさん。
思わず僕もにやけてしまったけれどそれが功を奏したのか、二人から緊張している雰囲気が消えたよ。
さすがはトリシアさん!
「あ、ありがとうございます。疑ってしまい申し訳ありません」
緊張がほぐれたのか、夫婦二人共に子供と同じく睡魔が襲ってきたように見えるね。
「あの、もしよければ休憩されては如何ですか?」
「それはありがたいのですが……」
煮え切らない様子の二人……って、そうか!このまま僕達がいなくなったら、食事もないし水もない、移動もできずにまた同じ事になっちゃうよね。
僕達がいたあの町に行くとしても普通に荷台を引いていくとなると、数週間はかかっちゃうかもしれないかな?
どうしようか思案していると、向こうの二人も再び辛い現実が待っているかもしれないと考えているのか、少し気落ちし始めてしまったようで……
「事情はわかりました。僕達は新婚旅行中でして、色々な町に向かう予定です。一緒に行動して、住みやすい町まで同行すると言う事で如何でしょうか?」
「ほ、本当ですか?」
やっぱり僕の想像していた通り、今後の事を心配していたみたいだよね……って、誰でもわかるか。
「ですが、新婚の方の邪魔になってしまうのは気が引けて……」
そんな事より、命が大切ですよ!お母さん。
「大丈夫ですよ。それに、お子さんの幸せのためにもご両親はしっかり健康でいて頂かないと」
僕の両親も、僕の事を本当に心配してくれて……子供にとって親がどれだけ強い支えになってくれているのかは良くわかっているつもりだよ。
「「ありがとうございます」」
「決まりましたね。では皆さんは荷台にどうぞ。僕達が移動させますので、ゆっくり休んでください」
恐縮し始める二人を半ば押し込むように眠っている女の子と共に荷台に入れて、多めに購入してあった布団を渡すと、余程疲れていたのかすぐに両親も寝ちゃった。
「静流様、ありがとうございます」
「え?なんでトリシアさんが?」
「私がお願いした事ですので……」
「いやいや、これは普通の事だと思いますよ?それに、旅は道連れと言うじゃないですか。新婚旅行はずっと続けられるわけですし」
ワタワタしてしまっている僕を優しく抱きしめてくれるトリシアさん。
本当に僕の事を大切にしてくれているし、甘やかしてくれているトリシアさんが大好きですよ!
口に出すと照れそうなので、今日はこのまま!
よし!次の行動に移ろうかな。
「コレ、今回の移動って僕が一番遅かったじゃないですか?だから、修行の意味でも初めは僕にひかせてください!」
とても線の細い美女のトリシアさんが巨大な荷台を引いている姿や、柴犬の成犬程度の大きさのシバが引くととてつもない違和感があると思うんだよね。
実際の所、見た目は僕が一番違和感ないけれど、一番非力だったりするのが紛れもない現実で……クスン。
「フフ、無理をなさらないでくださいね、大切な旦那様!」
うわぁ~、なんだか無駄に力が湧いてきちゃったよ!
って、だめだ、だめだ……中では疲れ切った三人が寝ているのだから、起こさないように慎重に引いてあげないと。
「任せてください、お……奥さん!」
少しくらいやり返さないとフェアじゃないからね。
なけなしの勇気を振り絞って反撃してみたけれど、案の定ものすごく真っ赤になって、僕の胸に顔を埋めてしまって頭をグリグリ僕にこすりつけているよ。
う~ん、これでは荷台が引けないよ?
いつも通りのやり取りを経て荷台を引っ張って進む僕達だけれど、想像以上に軽く動かせるので、どれだけ力が付いたのかをきちんと認識する事が出来たよ。
「静流様、疲れたら代わりますので、遠慮なく言ってくださいね?」
「ワンワン!」
皆の気遣いが嬉しいけれど、この中では最弱だからもっと頑張らないといけないよね!
「ありがとうございます!まだまだ頑張れますから、大丈夫です!!」




